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アラン・ホールズワース関連

2017年4月18日 (火)

【追悼】Allan Holdsworth亡くなる

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ギターマエストロ、Allan Holdsworthが4月16日に亡くなりました。享年70歳。
娘さんのFBによれば本当に予期できなかった突然の死去だったようで、事実4月にはロサンゼルスでライブを行っています。先日亡くなったLarry Coryellもライブの翌日に急死したとのことで、せめてもの救いは闘病の末に苦しんでというわけではなかったことに尽きます。

自分とマエストロとのリアルタイムでの最初の出会いは「U.K.」の1stですから、約40年前。その後、マエストロは経済的に苦境に陥りますが自主製作盤「I.O.U.」を機に驚異のV字回復を果たします。ちょうどギターマガジン誌がマエストロを大特集し、メジャーデビュー作「Road Games」がリリースされるタイミングで初来日が実現しました。忘れもしない1984年5月。郵便貯金ホールに駆けつけると、マエストロの一挙手一投足のすべてに注視する観客の熱気に圧倒されました。その異様な雰囲気に場内の緊張感がピークに達しようかのタイミングで、確か「Road Games」の演奏後、1人の観客が絶妙なタイミングで「あんたは上手い!」と小松政夫風関西弁で掛け声を。それで一挙に場の雰囲気が和んだことを思い出します。当日、多くのプロミュージシャンが来場したことも、Musician's Musicianと呼ばれるゆえんでしょう。翌85年の来日ライブには盟友Gordon Beckが帯同。もちろん当然のごとく中野サンプラザに駆けつけました。ただあの独特の緊張感がどうしても辛く、その後マエストロのライブに行くことはなくなりました。

晩年のマエストロは離婚問題とか経済的な問題もあって、必ずしも穏やかな老後というわけではなかったようです。例のクラウドファンディングでは、思うように新譜制作も進まず、お蔵入り音源を世の中に出すことで、お茶を濁した感がありありでしたが、それを含めてマエストロだなと勝手に納得していました。

とは言え、人生の半分以上をかけて追い続けてきたミュージシャンの死はあまりにも辛いです。まるで自分の身体の一部が失われてしまったような感覚です。正直言ってまだ受け入れる感じではないのも事実です。まさか自分のブログでこんな記事を書くことになるとは…。

あらためて合掌。


2016年8月27日 (土)

Allan Holdsworth / A.H.Studio Track 1980(1980年)

Musician●Allan Holdsworth(guitar)
Title●A.H.Studio Track 1980(1980年)
■サイトよりダウンロード

先日、新アルバム「Tales From The Vault PartⅡ」をすったもんだの末リリースした巨匠Allan Holdsworthですが、同アルバムにも収録された発掘音源です。そもそもは1年ほど前にGary HusbandがTwitterで紹介していた音源が発端になります。Husbandの言葉をそのまま信用すると、アルバム「I.O.U.」(1982年)の制作過程でロンドンで行ったスタジオセッションでのアウトテイク音源(録音は1980年)だとか。

というわけで早速ダウンロードしてみました。曲は「Road Games」収録の「Water On The Brain Pt2」にPaul Willimsのボーカルが乗っているという代物。アウトテイクというふれこみですが、すでにブートレグで出回っている音源と同一です。オリジナルももちろん素晴らしいのですが、この別テイクもなかなかの出来映えです。ただ完成度やベースの貧弱さはデモ音源ということで大人の対応が必要です。

1980年録音というデータを信用すると、ベースはJeff BerlinではなくPaul Carmichael、ドラムはChad WackermanではなくGary Husband、そしてボーカルはPaul Williamsということで「I.O.U.」メンバーと一致します。「Water On The Brain Pt2」は当初ボーカル入りとして制作されたけれど、「I.O.U.」には収録されず、Jeff BerlinやChad Wackermanを迎えて再レコーディングしボーカルを抜いた状態で「Road Games」に収録という流れなのですね。しかし、Husbandはどんな了見でこの音源を発信したのでしょうね

●Musicians
Allan Holdsworth / guitar
Paul Carmichael / bass
Gary Husband / drums
Paul Williams / vocal

2016年8月 7日 (日)

Allan Holdsworth / Tales From The Vault Part Ⅱ(2016年)

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Musician●Allan Holdsworth / guitar
Title●Tales From The Vault PartⅡ(2016年)
■Pledge Musicよりダウンロード


希代のテクニカル系ギタリストAllan Holdsworthがクラウドファンディングサイト「Pledge Music」で新作「Tales From The Vault」制作に向けてキャンペーンを開始してはや1年数ヶ月が経とうとしています。当初は2015年秋には新作がリリースされると聞きましたが、やはりというか案の定というか作業は遅々として進んでいないようです。昨年新曲「Earth」がお試し的に配信されたものの、作品の全貌はまだ見えてきません。「いい加減に出す出す詐欺をやめないと、世間からそっぽ向かれまっせ!」と痺れを切らしていたところ、御大からの言い訳じみた長文解説と2曲の新曲とともに“発掘音源”が届きました。

御大の説明にはこうしたクラウドファンディングサイトを通じた音源制作は生まれて初めてのことで、大変なプレッシャーになっていて云々という趣旨の言い訳が延々と綴られています。いい歳してそんなことは事前に想定できただろうと思うのですが、ここまで来たら乗りかかった船。最期までつき合いますって。今回リリースされた“New Dawn”と“Poochini”の2曲。ほか9曲はBruford時代と「I.O.U.」「Road Games」からのアウトテイクです。つまりは新作のみではとても間に合わないということでデッドストックでお茶を濁そうというわけです。

#1「The Abingdon Chasp」はBrufordのアルバム「One Of A Kind」収録曲。オリジナルではJeff Berlinのベースがテーマを奏でましたが、ここではRay Warlieghのサックスが先導。御大のギターもオリジナルと異なります。ほかGongのFrancis Mose(bass)、Jeff Young(keyboards)が参加。御大の説明によれば、Ray Warlieghはすでに鬼籍に入られたとか。ところがドラムのクレジットはありません。はたしてBill Brufordに対する許諾はどうなっているんでしょうか。

#2と#3はアルバム「Road Games」でバッキングボーカルを務めたJoe TuranoによるアウトテイクとオリジナルのJack BruceバージョンのMark Pinskによるリミックス音源。

#6「Road Games」はJoe Turanoによるアウトテイク。#7と#8はMark Pinskiによるリミックスなのですが一聴してオリジナルとの相違はわかりません。#9「Was There」は再びJoe Turanoによるアウトテイクなのですが、肝心の御大のギターソロがオミットされてしまうという中途半端な出来になってしまっています。

#10と#11「Water On The Brain」はオリジナルはボーカル抜きでしたが、それぞれJoe TuranoとPaul Williamsのボーカル入りです。#10ではJeff Berlinのベースソロが入っていますがかなりラフな印象を受けます。#11は昨年Gary Husbandがネットで公開したバージョンと同一です。個人的にはこのバージョンでの御大のソロは実に素晴らしいと思います。Gary Husband(drums)、Paul Carmichael(bass)という「I.O.U.」メンバー。Gary Husbandによれば1980年にロンドンのスタジオで収録されたものだとか。

さて肝心の新曲2曲は#4「New Dawn」と#5「Poochini」。ともにシンタックスによる内省的な曲です。「New Dawn」は御大の古い友人、Pat Smythe作。御大の心境なのか単なる老境なのか、特に盛り上がることもなく淡々と進行します。ちょうど「Flat Tire」を連想しました。何だかな~。

というわけで変なオチがついてしまった新譜ですが、新曲2曲の出来映えを聴くかぎりでは、おそらくこれ以上これ以下の新曲を作り出すことは無理なのではないかと思ったりもします。御大もその点は自覚しているからこそ、手持ちの古い音源をリリースすることでお茶を濁したのでしょう。正直言って晩節を汚した感は否めなく、仮にまた新作を出すと言い出しても賛同者はおそらく現れないと思います。実際、今回のプロジェクトで間に入ったプロデューサーは相当苦労したようですし。このあたりはいろいろな意見が分かれるところだと思います。

御大の言い訳じみた解説には「Road Games」制作時におけるワーナー・ブラザーズと当時のプロデューサーTed Templemanに対する恨み辛みが延々と書かれているのですが、自分の非は棚上げしていったい何年前の話をしているのだかと思うとともに、相変わらずの“変人ぶり”をいかんなく発揮しているわけで、妙に安心したりもしました。

●Numbers
1.  The Abingdon Chasp
2.  Material Real Outtake
3.  Material Real Pinski Mix   
4.  New Dawn
5.  Poochini
6.  Road Games Outtake
7.  Tree Sheets Pinski Mix
8.  Tokyo Dream Pinski Mix
9.  Was There Outtake
10. Water On The Brain Outtake
11. Water On The Brain with Paul Williams

2016年2月21日 (日)

Soma / Soma(1986年)

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Musician●Soma
Title●Soma(1986年)
■Amazonより購入


去年あたりからスタートしたと思うのですが、Amazonが始めたオンデマンドでのCD復刻シリーズは、結構思いがけない音源を発掘してくれます。Allan Holdsworthの客演で有名な「Soma」(1986年)もその1枚です。フランス製オリジナル盤はプレス数自体が少なかったようで、数万円ものプレミアがついているので、もちろんとても手が出ません。その代わりというわけではありませんが、韓国製のレプリカCD-Rが出回っているので、多くの人はお世話になっているのではないしょうか。

オンデマンド版CDを発注を受けてから“生産”するので、Amazonにとっては不良在庫を抱えるリスクがなく、一方でリスナーにとってはいままでどうしても入手できなかった音源を適正価格で入手できるわけですから、双方にとって願ったりかなったりです。メジャーな音源は黙っていてもリニューアルされて市場に出回り続けますが、こうしたマイナー音源は残念ながら地下に埋もれて運命にあります。もっとラインアップを増やしてくれるとありがたいですね。

ただし届いたのはもちろんCD-Rで、ライナーやクレジットの類は一切無しです。商品の性質上、当たり前と言えば当たり前なんですが、これからは音源にいかに付加価値を付けるかが課題ではないかと思います。

過去記事ですが作品レビューはこちら

●Musicians
David Shawn / guitar
Scott Gerber / bass
Grgg Lee / bass
Mark Lauren / vo,kb,per
Guy Eckstine / drums,per,cho
Allan Holdsworth / guitar
Kozo Yasuda / guitar
Nathan East / bass
David Koz / sax
Patrick O'Hearn / string bass
Bob Sobo / guitar
Pops Popwell / bass
Scott Ritchards / bass
Victor Bailey / bass,cho
Walt Fowler / trumpets,flugelhornsChristpher Hoard / scissors) &others(se)
Francie Popick / toastmaster
Scott Gerber / bass

●Numbers
1.  Death Comes Dancing
2.  No Better Time Than Now
3.  Foray
4.  Harmattan
5.  Tripped Over Your Shadow
6.  Because Always Comes The Moment
7.  Sense Of History
8.  Purfled And Eyethurled
9.  A Little Hair Action
10. Lone Narcissus
11. Mangia
12. The Grand Panjandrum
13. Windburn

2015年10月 3日 (土)

GONG / GAZEUSE!(1977年)

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Musician●Gong
Title●Gazeuse!(1977年)
■Amazonより購入


かなり昔にレビューした物件です。再掲載というより最近、再発売されたリマスター盤のレポートです。巨匠Allan Holdsworth参加作品の中でも特異な位置づけにある、フランスのプログレバンド「Gong」の「Gazeuse!」です。オリジナルは1977年リリース。日本でのCD化は1989年以来ということで、旧規格盤は音質面で結構不満があったので、リマスター盤をこのたび再購入しました。

詳細は前回レヴューをご覧になっていただくとして、驚くべきが抜群のリマスター効果です。「Gong」の魅力は何といっても2台のヴィブラフォンによる幻想世界と4人の打楽器奏者による乱打が生み出す強烈なポリリズム。やっぱり良好な環境で聴きたいですよね。というわけで、この再発盤、音質の良さは当然として音の分離もしっかりしているので、「Gong」の魅力がしっかりと再現されています。

もちろん巨匠Holdsworthのウネウネもばっちりと堪能できます。時系列的にはAlphonso Johnsonの仲立ちで渡米。イギリス人ギタリストを求めていたTony Williamsの「Tony Williams New Lifetime」に参加。「Believe It!」(1975年)と「Million Dollar Legs」(1976年)でプレイしつつ、CTIでいわく付きの「Velvet Darkness」(1976年)を録音しています。また、アルバイト感覚で(?)、黒人女性歌手Esther Phillipsの「Capricorn Prince」(1976年)のレコーディングに参加していますが、ここでJeff Berlinと出会っています。しかしながら、「Velvet Darkness」の失敗で失意のもと、1976年夏にロンドンに戻っています。そこでVirgin Recordの友人からバンド参加を要請されたという流れのようです。

ちなみにHoldsworthは#2「Night Illusion」と#5「Shadow Of」の2曲を提供。「Shadow Of」はかの「Velvet Darkness」の焼き直しですが、「Velvet Darkness」自体が本人にとって不本意だったための意趣返し的な位置づけなのかもしれません。

今回初めて知ったのですが、タイトルが「炭酸水」を意味するこのアルバム、アメリカでは「Expresso」とタイトルとジャケットデザインを変えて発売されたとか。そんな経緯から次作「Expresso Ⅱ」になったそうです。

●Musicians
Mireille Bauer / vibraphone,marimba,glock,toms
Mino Cinelou / congas,african bell-gong,cuica,triangle,maracas,talking drums,temple blocks
Allan Holdsworth / guitars,violin,steel guitar
Didier Malherbe / sax
Benoit Moerlen / vibra
Pierre Moerlen / drums,vibra,marimba,glock
Francis Moze / fretless bass,gong,piano

●Numbers
1.  Expresso
2.  Night Illusion
3.  Percolations Pt 1
4.  Percolations Pt 2
5.  Shadow Of
6.  Esnuria
7.  Mirelle

2015年9月12日 (土)

Allan Holdsworth / Earth(2015年)

Download
Musician●Allan Holdsworth(guitar,synthaxe)
Title●Earth(2015年)
■メーカーサイト「Pledge Music」よりDL


昨年引退説が流れた巨匠Allan Holdsworthの“新曲”がリリースされました。自身名義の作品としては「The Sixteen Men of Tain」(1999年)以来ですから何と16年ぶりという計算ですね。やれやれ。そもそもは新作「Tales From The Vault」を鋭意制作中とアナウンスされてから久しいのですが、例によって極端な完璧主義ゆえに、作業も遅々として進まず。さすがにこれ以上待たせたら拙いという判断が働いたのか、先に出来上がった曲をネット限定で先行リリースしたようです。

というわけで「Tales From The Vault」の予約注文をかけていた「Pledge Music」より、ほれ1曲出来たからダウンロードしなはれ的なメールが届き拝聴している次第です。「Earth」という曲なのですが、ギターソロ入りとソロ抜きの2ヴァージョンでファイル形式はMP3とFlacから選択できます。ソロ抜きって、回転寿司のサビ抜きじゃないんだから!と突っ込みを入れながらも、やっぱり巨匠の新曲を聴ける喜びは何よりも勝ります。ちなみに「Pledge Music」にはアカウント登録が必要みたいですね。

この「Earth」自体にはクレジットの詳細がないのですが、アルバム「Tales From The Vault」には、

Jimmy Johnson / baas
Chad Wackerman / drums
Gary Husband / keyboards
Virgil Donati / drums
Jimmy Haslip / bass

が参加しており、同サイトのプロモ映像にはJimmy JohnsonとVirgil Donatiの姿が映り込んでいます。今回の曲もドラムの感じからするとVirgil Donatiで、ベースソロはJimmy Johnsonではないかとネット上では囁かれています。ちなみにプロデュースは知る人ぞ知る「Outloud」のリーダー兼ギタリストJohn McCrackenが担当しています。John McCracken唯一の作品「Blood For A Tone」(1992年)はこちらで紹介しています。

さて、肝心の曲なんですが「The Sixteen Men of Tain」の頃からほとんど変わっていないというか、相変わらずの金太郎飴状態。相変わらずsynthaxeは使っているようで妙に長いイントロから満を持して巨匠のソロが高らかに鳴り響きます。うーん、変わっていないな~。一方で、数年にわたって書き上げた新曲という割には、何も変わっていないのはどういうことよ?と思わないでもありません。ところで、タイトル下画像はサイトから届いたものですが、どういうわけかレスポールです。これも巨匠一流の洒落なんでしょうか。

●Musicians
Allan Holdsworth / guitar,synthaxe
Jimmy Johnson / baas
Chad Wackerman / drums
Gary Husband / keyboards
Virgil Donati / drums
Jimmy Haslip / bass

●Numbers
1.  Earth no solos
2.  Earth w:solos

2015年4月 4日 (土)

【再聴】ALLAN HOLDSWORTH / ALLAN HOLDSWORTH GROUP THEN!(1990年)

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Musician●Allan Holdsworth(guitar,barritone guitar)
Title●Allan Holdsworth Group Then!(1990年)
■Amazonより購入


ギターマエストロAllan Holdsworthのリマスター盤再聴シリーズです。これが最後になりますね。

2002年にリリースされた初のオフィシャルライブ盤「All Night Wrong」に続いて出たのがこの「Then!」です。個人的には「All Night Wrong」のほうが圧倒的に好きだったこともあり、このアルバムはあまり好みではなかったのですよね。1990年5月4日~6日、六本木ピットインでの音源です。このライブ盤、当初は御大からのOKが出ずにお蔵入りになっていたのですが、御大の信奉者である、Christopher Hoardという人がねばり強く交渉した結果、やっと陽の目を見たという代物。Christopher Hoard主宰のインディーズレーベル「The Alternity Records」からは先行して「The Best Of Allan Holdsworth / Against The Clock」という自身初のベストが発売されているのですが、この発掘盤はベスト盤とのセット企画だったようです。

参加メンバーを整理しましょう。
Allan Holdsworth / guitar,barritone guitar
Steve Hunt / keyboards
Gary Husband / drums
Jimmy Johnson / bass

1988年のツアーから帯同している鍵盤楽器奏者で、アルバム「Secrets」制作にも参加したSteve Huntの存在が目を引きます。また「Wardenclyffe Tower」で初めて使用したバリトンギターを試用しているあたりがポイントでしょうか。1990年は時期的に「Secrets」リリース直後ということになります。整音作業は施されているそうですが、オーヴァーダビングなどは一切行われていないそうで、ジャケットの「生」の漢字がそのことを表現しているのでしょうか。

#1  Zone 1
アルバム未収録のインプロ。いきなりバリトンギターの登場です。フリーめの曲なのですがこの時期好んでプレイされていましたね。Steve Huntの鍵盤がいかにもしょぼくて…

#2   Proto Cosmos
New Tony Williams Lifetime「Believe It」(1975年)収録曲。御大はこの曲がよほどのお気に入りのようでことある機会にプレイしていますね。Holdsworthyプレイヤーもよくカヴァーしています。わかりやすい曲なので、ツカミとしてはOK。でも、やっぱりHuntの鍵盤がしょぼくて…

#3   White Line

「I.O.U.」(1982年)収録曲。オリジナルはPaul Williamsのボーカル入りでしたが、ギターがカヴァーする形に。これはこれで良いと思います。そういえば「Road Games」(1983年)収録曲「Three Sheets To The Wind」のWillimsボーカル入りバージョンもブートで聴いたことがあります。後半のギターソロが熱いですね!

#4   Atavacron

アルバム「Atavacron」(1986年)収録曲。ここでもHuntの鍵盤が非力で苦痛に感じるのですが、御大の素晴らしいソロが帳消しにしてくれています。

#5   Zone 2

再びフリー的なのインプロ。何度も言いますが御大のいうフリーは、ごく一般にいわれるフリージャズとは異なると思います。要は弾き倒しのギターにおまえらしっかりついて来いよ、という感じでしょうか。唯我独尊的フリーというやつです。

#6   Pud Wud
アルバム「Sand」(1987年)収録曲。この曲もライブで好んでプレイされていたようです。リラックスした感じで張りつめた緊張感をほぐす役割があったのでしょうか。アルバムとしての「Sand」が苦手ですが、この曲はすきです。でも、Huntの鍵盤が…。どうしてもHuntが重用された理由がわかりません。

#7   House Of Mirrors
アルバム「Hard Hat Area」(1993年)収録曲。かなり先行して披露されていることになりますが、観測気球的にオーディエンスの反応を確かめたかったのかもしれませんね。でも、ほとんど完成系に仕上がっています。

#8   Non-Brewed Condiment

アルバム「Atavacron」(1986年)収録曲。この曲を初めて聴いたときは度肝を抜かれましたが、相変わらず素晴らしいですね。この曲のソロを聴けただけでも十分お釣りが出ます。

#9   Zone 3
三度、フリー的なインプロ。7分にもわたる長尺は、いくらファンであってもちょっとキツいです…

#10  Funnels(bonus track)
日本盤オンリーのボートラ。アルバム「Atavacron」(1986年)収録曲。相変わらず美しく流麗なソロにうっとりとさせられます。ボートラ扱いになってしまった理由はわかりませんが、知らないままに輸入盤をつかまされた人は気の毒ですね。

ところで、今回再発売になった紙ジャケット仕様なんですが、初回発売のライナーに掲載されていた写真などは一切カットされてしまっています。居酒屋でくつろぐ御大の写真などは味があって好きだったのですが…

●Musicians
Allan Holdsworth / guitar,barritone guitar
Steve Hunt / keyboards
Gary Husband / drums
Jimmy Johnson / bass

●Numbers
1.  Zone 1
2.  Proto-Cosmos
3.  White Line
4.  Atavacron
5.  Zone 2
6.  Pud Wud
7.  House Of Mirrors
8.  Non-Brewed Condiment
9.  Zone 3
10. Funnels(bonus track)

2015年3月14日 (土)

【再聴】ALLAN HOLDSWORTH / THE SIXTEEN MEN OF TAIN(1999年)

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Musician●Allan Holdsworth(guitar,synthaxe)
Title●The Sixteen Men of Tain(1999年)
■Amazonより購入


ギターマエストロAllan Holdsworthのオリジナルアルバムを再聴するシリーズです。
前作「None To Soon」(1996年)から3年ぶりにリリースされたこのアルバムですが、自ら立ち上げたプロダクションは倒産してしまい、このアルバムはエディ・ジョブソンのインディ・レーベルからリリースされています。ジョブソンはエグゼプティヴ・プロデューサーという形で関わっていますが、彼にしても盟友の窮状ぶりを目の当たりにして何とかしたかったのでしょうね。でも、事態は好転することなく御大は離婚に追い込まれ、慰謝料としてスタジオも没収されてしまいます。経済的にも精神的にも最低の状態でレコーディングされたのが、「Flat Tire」(2001年)というわけですが、個人的には感心できるアルバムとはとても言い難く、でもってこの「Sixteen~」が御大にとって、現時点では最新作という位置づけになっています。もうあれから16年も経ってしまいましたよ、旦那!

Allan Holdsworth / guitar,synthaxe
Dave Carpenters / bass
Gary Novak / drums
Walt Fowler / trumpet on #2,#6
Chad Wackerman / drums on #7

Dave CarpentersとGary Novakの二人はお初ですね。ペット奏者のWalt Fowlerという人もゲスト参加していますが、御大とペット奏者の共演はBrufordでのKenny Wheeler以来ではないでしょうか。このアルバム、初回盤は「Gnarly Geezer Records」というところからリリースされましたが、その後版権移動があり、「Special Edition」としてボーナストラック2曲を追加したうえで再発売されています。今回リマスター化されたのは再発売ヴァージョン。ボーナストラックは既存曲の「後」に加えるのが通例ですが、アルバム頭と最後に加えて既存曲をサンドイッチにするという変則構成をとっています。Gnarly Geezer Recordsといえば、御大にとって初めてのライブDVDを出した版元なんですが、なんと本人の許諾をとっていなかったとか。確かにあの映像は酷かったです。版権移動もそのあたりが原因なのでしょうか。

#1  San Onofre
いきなりのボートラです。黒澤明監督「用心棒」を思わせる重厚なSEとともにスタート。曲というよりもセッション的な雰囲気ですね。御大のギターは最初ゆったりとスタートしますがやがて火が点いて激しい感じへと移行します。

#2  0274
本来のオープニング曲。このアルバムテーマはジャズらしいのですが、ジャズというよりもプログレ的な臭いのほうが強く感じられます。ためのリズム隊の変更なのだと思いますが、どうも本人の意図が上手く伝わらないのはいつものことなのですが…。確かにGary Novakはジャズ的なプレイヤーだと思います。どことなく70年代の頃のKenny Wheelerを思わせるWalt Fowlerですが、はたして本当に必要なのかは悩むところです。

#3  Sixteen Men of Tain
基本4ビートのジャズ的な曲。いまは亡きDave Carpentersのウッドベースがそれらしい雰囲気を醸し出しています。でも何をやってもHoldsworth節なんですよね。ライブでも好んで取り上げていたようです。

#4  Above and Below

スローめの優しい感じの曲。「Metal Fatigue」あたりからこんな感じの曲が登場しはじめましたね。インプロよりも展開で聴かせるタイプです。

#5  Drums Were Yellow

亡きTony Williamsに捧げた曲。これはGary Novakにとってはえらくハードルが高いですね。しかも御大とのデュオだし。確かに御大のギターにはどえらい気合いが込められているのですが、ギターとドラムとのデュオというのは2人ともに相当な表現力がないと厳しいです。

#6  Texas
妙に展開が面白い曲ですね。ここでもWalt Fowlerが登場しますが、あまり機能していないように思えるのですが…。

#7  Downside Up
この曲のみChad Wackermanが参加しています。安定のWackermanという感じですね。曲途中からの御大のソロも気持ちよさそうでとてもいい感じです。あいも変わらないHoldsworth節の連続ですが、何だかほっとできるのも事実です。

#8  Eidolon

synthaxeを駆使した曲です。間延びしたようなソロが…すみません、どうしてもこの楽器だけには馴染めません。

#9  Above and Below (Reprise)
本来ならアルバムの締めの一曲。タイトル通り、#4の続編的な曲だと思われます。synthaxeのみの曲なのでどうにもこうにも…。

#10  Material Unreal

アルバム「Road Games」収録曲「Material Real」をもじった曲なのでしょうか。はたしてこの曲が必要なのか不要なのかは何とも言いようがありません。

●Musicians
Allan Holdsworth / guitar,synthaxe
Dave Carpenters / bass
Gary Novak / drums
Walt Fowler / trumpet on #2,#6
Chad Wackerman / drums on #7

●Numbers
1.  San Onofre
2.  0274
3.  Sixteen Men of Tain
4.  Above and Below
5.  Drums Were Yellow
6.  Texas
7.  Downside Up
8.  Eidolon
9.  Above and Below (Reprise)
10. Material Unreal

2015年3月 8日 (日)

【再聴】ALLAN HOLDSWORTH / NONE TO SOON(1996年)

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Musician●Allan Holdsworth(guitar,synthaxe)
Title●None To Soon(1996年)
■Amazonより購入


希代のテクニカル系ギタリストAllan Holdsworthのリーダー作を再聴するシリーズです。とはいっても、個人的に「これはどうなのか?」と思えるアルバムは意識的に排除しているので、決してコンプリート的なものを狙っているわけではありません。

この時期、自ら立ち上げたプロダクションからコンスタントにアルバムをリリースしていますが、前作「Hard Hat Area」(1993年)から3年ぶりの“新譜”ということになります。「Velvet Darkness」を入れれば自身名義では通算9枚目の作品になります。

Allan Holdsworth / guitar,synthaxe
Gordon Beck / piano,keyboards
Gary Willis / bass
Kirk Covington / drums

Steve HuntやGary Husbandなどの“常連”は参加していません。かつての盟友Gordon Beckを迎え、リズム隊にScott HendersonとGary Willisの双頭ユニット「Tribal Tech」からGary WillisとKirk Covingtonを招聘している点が目を引きます。御大が少年期に影響を受けたジャズの巨人たちのカヴァーアルバムに仕上がっています。

#1  Countdown
言わずと知れたジャズの巨人、コルトレーンの曲。「Giant Step」ですよね。聞けば御大が初めて聴いたジャズアルバムだとか。「あれ?オリジナルはこんな曲だっけ?」と思ってしまうほどアレンジが加わっているので、種明かしがないとカヴァーだと気がつきません。テーマにはある程度忠実なんですが、イントロとかソロ回しとかが。御大がギターで管楽器風のフレーズを弾こうと思い立った曲であることは確かです。

#2  Nuages
ジャンゴ・ラインハルトの曲。オリジナルは未聴ですが美しい曲ですね。Gordon Beckのピアノに乗せてロマンチックに歌い上げる御大。それに応える形でリリカルに響きわたるBeckのソロ。

#3  How Deep Is The Ocean
ビング・クロスビーのヒット曲とのことですが、これもオリジナルは未聴です。アルバム中唯一の完全なるハードバップ風のアレンジで、いきなり御大による火の出るようなソロが飛び出します。曲中盤で聴かれるBeckのソロが秀逸です。

#4  Isotope
テナーサックスの巨人、Joe Hendersonの曲。これも恥ずかしながらオリジナルは未聴ですが、渡辺香津美の1stでカヴァーバージョンを聴いた記憶があります。だから何だかとても懐かしい感じがします。

#5  None Too Soon Part I
これはGordon Beckのペンによるオリジナル曲。組曲のような構成になんっています。ミディアムテンポで楽曲というよりもジャムセッション的な感じです。御大もリラックスして弾きまくること弾きまくること。ただ曲終盤のsynthaxeは蛇足の感がします。

#6  Norwegian Wood
言わずとしれたレノン=マッカートニーの名曲。そう言えば数多くのギタリストがビートルズの楽曲をカヴァーしたコンピアルバムに御大は「ミッシェル」で参加していましたね。原曲のテーマを生かしながらも、曲中盤からGordon Beckが弾きまくります。もしかしたらBeckのアイディアによる選曲かもしれませんね。

#7  Very Early
Bill Evansの曲です。名盤「Moon Beams」(1962年)からの選曲。いかん、オリジナル盤は所有していますが、ちゃんと聴いていません(汗)。Gary Willisのベースソロが前面にプッシュされていますが、これがまた秀逸です。普段のGary Willisはゴリゴリ弾き倒すイメージが強いのですが、意外にロマンティックな面もあるんですね。曲中盤からGordon Beckが思い入れたっぷりの生ピアノを披露。御大はほとんどソロを弾くことなく、synthaxeでバックに徹しています。

<追記>後日、オリジナル曲と聴き比べてみました。生ピアノが味わい深いオリジナルに比べるとずいぶんと煌びやかなのはsynthaxeのせいでしょうか。これもありとは思いますが、原曲のリリシズムはほとんど感じられないですね。

#8  San Marcos
Gordon Beckのオリジナル曲。テンポが速くやたら転調が激しい小曲です。御大は曲はじめにsynthaxeで短いソロを、中盤ではギターで流麗なソロを披露。

#9  Inner Urge
再度Joe Hendersonの楽曲。これも恥ずかしながらオリジナルは未聴です。終盤のソロは圧巻でバックを支えるメンバーの熱演もこれまた秀逸。でもね…ラストのMC的なものははっきり言って要らないですね。自分のヒアリング能力の無さを棚に上げてもです(汗)

●Musicians
Allan Holdsworth / guitar,synthaxe
Gordon Beck / piano,keyboards
Gary Willis / bass
Kirk Covington / drums

●Numbers
1.  Countdown
2.  Nuages
3.  How Deep Is The Ocean
4.  Isotope
5.  None Too Soon Part I~Interlude~None Too Soon Part II
6.  Norwegian Wood
7.  Very Early
8.  San Marcos
9.  Inner Urge

2015年3月 7日 (土)

【再聴】ALLAN HOLDSWORTH / HARD HAT AREA(1993年)

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Musician●Allan Holdsworth(guitar,synthaxe)
Title●Hard Hat Area(1993年)
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まだまだ懲りずに続くAllan Holdsworth御大のリーダー作再聴シリーズです。

前作「Wardenclyffee Tower」(1992年)から間髪入れずにリリースされたのがこの作品です。寡作の御大にとっては異例とも入れる量産態勢ですが、ライブ活動が安定して自ら立ち上げたプロダクション経営も順調だったようです。しかし、実際にはセールス的に好調だったのは日本のみだったようで、次第にプロダクションの経営も悪化していったようです。そんなこともあって、金銭的な問題からついには離婚に追い込まれてしまったりするわけですが…。

それはともかくやや捻りすぎの感があった前作から、実にストレートな作風に転じたこの作品は、個人的にも“御大復活か?”と思わせたものです。

Allan Holdswrth / guitar,synthaxe
Steve Hunt / keyboards
Skuli Sverrisson / bass
Gary Husband / drums

なんとシンプルな4人構成。恒例になりつつあった女性ボーカルも不在です。Steve HuntとGary Husbandの二人は旧知の仲ですが、ベース奏者をJimmy Johnsonからアイスランド出身のセッションマンSkuli Sverrissonに代えています。このアルバムの素晴らしいと思える点は多々ありますが、何よりも原点であるギターを楽曲の中心に据え、個人的はまったく食指が伸びないsynthaxeをアクセント的な味付けにとどめていることに尽きます。synthaxeも使いこなせてきたのでしょう。やっとこさ違和感を感じないようになってきました。

#1  Prelude
synthaxeをバックに今にも泣き出しそうなフレーズ。ちょっとSF映画のサントラ的だったりしますが、果たしてこの曲は本当に必要なのかといえば、ちょっと微妙ですね。

#2  Ruhkukah

#1で厳かにスタートし、スピード感あふれるこの曲で変化をつけるという展開でしょうか。ただSteve Huntの鍵盤が少し残念な感じでミソをつけている感がしないでもありません。曲終盤のスリリングなソロがあまりに素晴らしいだけに、よけいにそう思います。

#3  Low Levels,High Stakes
Steve Huntの美しい生ピアノが大変印象的な曲。この人、電子鍵盤だとがっかりするケースが目立つのですが、ピアノはすごくいい感じです。やがて始まるSkuli Sverrissonのベースソロ。正直言いまして、前任のJimmy Johnsonとの違いはよくわからないのですが、まぁ無難にこなしています。にしてもちょっとばかり尺が長いかな~。バックのストリングっぽいSEはsynthaxeでしょうか。そして満を持して御大のソロ。これがあまりにも素晴らしい出来映えで、アルバム中最高の熱演ではないでしょうか。白飯を何杯でもおかわりできます。

#4  Hard Hat Area
synthaxe中心の曲。正直言ってコメントが難しい曲。特に前半はこれだけの時間を割く必要があるのかと思ってしまいます。残念ながら御大の作曲能力の欠如ぶりがあからさまに。このことは散々ぱっら指摘されていることですけれどね。終盤のギターソロが圧巻だけに、もしかしたらソロだけで楽曲として成立するのではないかと。

#5  Tullio
のっけから弾きまくる御大。リズムチェンジと転調の繰り返しなのですが、何だか心地よく聴こえるのは何よりも御大自身が気持ちよさそうに弾いているからでしょう。曲終盤のSteve Huntの鍵盤は冗漫に感じられ今一つですね。

#6  House Of Mirrors
synthaxeによるイントロがなぜか「I.O.U.」時代を想起させます。というかコード展開の根幹はあまり変わっていないのですが…。中盤のSteve Huntの鍵盤には少しイライラするのですが、転調ともに響きわたる御大の美しいソロに溜飲を下げる次第です。気合い十分の渾身の一発です。特にギアチェンジしてからの鬼神のごとく弾きまくるフレーズは一聴の価値ありです。

#7  Postlude
プレリュードに対するアンサーソング的な一曲。synthaxeを使った静かな感じで始まりますが、やがてフリーフォームに一変するあたりが意外といえば意外。ただ御大が提唱するフリーはあくまでもジャムセッションの延長なのかなと思います。これがフリーなのかと受け取ってしまうのは、ちょっと違うのではないかと。

●Musicians
Allan Holdsworth / guitar,synthaxe
Steve Hunt / keyboards
Skuli Sverrisson / bass
Gary Husband / drums

●Numbers
1.  Prelude
2.  Ruhkukah
3.  Low Levels,High Stakes
4.  Hard Hat Area
5.  Tullio
6.  House Of Mirrors
7.  Postlude

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