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ジャズピアノ

2016年8月13日 (土)

Michel Reis / Hidden Meaning(2012年)

Index
Musician●Michel Reis(piano)
Title●Hidden Meaning(2012年)
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ルクセンブルグ公国出身でNYCを拠点に活動する鍵盤楽器奏者、Michel Reis(ミシェル・レイス)の2012年作です。何となく購入した最新作「Capturing This Moment」(2015年)が望外の出来映えだったので、時系列を遡って購入しました。どうやら最近来日していたようです。

Michel Reis / piano
Stefan Karl Schmid / tenor sax,soprano sax,clarinet
Robert Landfermann / bass
Jonas Burgwinkel / drums

メンバーは「Capturing This Moment」と同じで、2012年6月19日、20日ドイツ・ケルンでレコーディングされています。

「Capturing This Moment」で強く感じられた欧州特有の憂いと湿気を帯びた現代ジャズという点では、まさに期待通りの内容に仕上がっています。アレンジとしては、随所に新たな試みが見られた「Capturing This Moment」よりはやや大人しめなので、その部分だけ面白味という意味では欠けるかもしれないですね。リリカルなMichel Reismのプレイを細部にわたって神経が研ぎ澄まされたリズム隊の好サポートが実に印象的。主役を立てつつしっかりと自己主張するStefan Karl Schmidのサックスにも好感がもてます。

●Musicians
Michel Reis / piano
Stefan Karl Schmid / tenor sax,soprano sax,clarinet
Robert Landfermann / bass
Jonas Burgwinkel / drums

●Numbers
1.  Repercussions
2.  Prescience
3.  Seduction
4.  Hidden Meaning
5.  Americana
6.  Haunted House
7.  Inside The Jewel Box
8.  What Comes Later,I Can
9.  Elegy
10. The Birdwatcher
11. Until The Next Time

2016年6月 5日 (日)

Richard Beirach / Elm(1979年)

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Musician●Richard Beirach(piano)
Title●Elm(1979年)
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Richard BeirachといえばポストEvans世代の中でも第一人者として知られていますが、彼がECM時代に残した傑作の1枚がこの「Elm」ではないかと思っています。このアルバム、アナログでは所有していましたがふと思い立ってCDを入手した次第です。1979年5月、Ludwigsburgにて録音。プロデューサーはマンフレード・アイヒャー。

Richard Beirach / piano
George Mraz / bass
Jack DeJohnette / drums

DeJohnetteに関してはいまさら説明不要ですが、Beirachとの共演作となると他に思い当たる作品が思い出せません。おっと、George Adamsの「Sound Suggestions」がありましたね。チェコの至宝、George Mrazはバークリー音楽院時代からの盟友で、やはり同窓のJohn Abercrombieとともに数々の共演作があります。

あらためてBeirachのキャリアを見直してみると、1970年代のECM関連としてはDavid LiebmanやJohn Abercrombieなどとの客演以外では、「Eon」(1974年)と「Hubris」(1977年)とこの「Elm」しかなく、あとは非ECM系なのですね。専属主義が強いECMとしては意外と言えば意外なのですが、これは想像するに「自分が本当に演奏したい音楽を演奏する」という彼の考え方に忠実になった上での結果ではないかと思います。この揺るがぬ信念が後にECMの総帥アイヒャー氏との確執につながったりしたわけですが。

#1   Sea Priestess
いきなりのキラーチューン。ピアノトリオでありながらDejohnetteもMrazも自己主張が前面に出るタイプのミュージシャンなので、静かな音楽を期待すると強烈なしっぺ返しをくらいます。

#2  Pendulum
どこかしらモンク的な感じの作品です。Beirachお得意の節回しの連続なのですが、絶妙なセンスで決して飽きさせることがありません。DeJohnetteとの丁々発止的なやり取りはまるで格闘技を見ているようです。バックで煽りまくるMraz。

#3  Ki
泣かせるバラードなのですが、この曲でもバックが黙っていません。静かに静かに、なおかつ激しく激しく。この二律背反的な要素を同時にやってのける神業にただただ唖然とします。

#4  Snow Leopard
ちょっとコリア的な感じを醸し出すリズミカルな作品です。初リーダー作「Eon」でも同じような展開の曲がありました。ここでもDeJohnetteが大暴れで凄まじい緊張感を曲全体にもたらしています。曲中盤で聴かれるMrazの超絶ベースソロにも注目です。

#5  Elm
内省的なバラード曲です。ただただ美しい。

有名な逸話なので詳細は割愛しますが、盟友John Abercrombieとのセッション中、失恋で落ち込んでいたAbercrombieを励まそうとBeirachは激しいハードバップをプレイしていました。そこに現れたのがECMの総帥アイヒャー氏。ご存じの通りECMのブランドイメージに厳格な彼にとって、ハードバップなどを弾くピアニストなどは論外だったわけです。即座にプレイを中断するよう指示を出しましたが、それにタテついいたのが男Beirach。親友を励まそうとして何が悪い、自分の好きな音楽を弾いて何が悪い、というわけです。この日を境にBeirachはアイヒャーと決別します。そればかりか、アイヒャー氏はBeirach関連の音源のほとんどはECMのラインアップから外してしまいます。リーダー作はもちろん、確執の原因となったJohn Abercrombieの「Arcade」「Abercrombie Quartet」「M」までもが廃盤扱いになってしまいます。後になって日本盤限定として「Hubris」と「Elm」、そして「Arcade」の発売が許されましたが、ほかはCD化もままならい状況です。いや、正確に言いますと日本限定、販売数限定で「Eon」もCD化されていますが、瞬く間に廃盤になっています。アイヒャーさん、いい加減に大人になって復刻してはどうでしょうか。これは文化的にも大きな損失ですよ。

<付記>「Abercrombie Quartet」「M」は「Arcade」との3枚組ボックスとして復刻しています。

●Musicians
Richard Beirach / piano
George Mraz / bass
Jack DeJohnette / drums

●Numbers
1.   Sea Priestess
2.   Pendulum
3.   Ki
4.   Snow Leopard
5.   Elm

2016年5月14日 (土)

Joanne Brackeen / AFT (1977年)

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Musician●Joanne Brackeen(piano)
Title●AFT(1977年)
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Joanne Brackeenのリーダー作「AFT」です。この人、ベース奏者のClint Houstonつながりで客演作は聴いているのですが、リーダー作は初聴きです。あらためて聴き直すとずいぶんと男性寄りのプレイヤーなのですね。力強くてダイナミック。さすがスタン・ゲッツの楽団に抜擢されるだけあります。

Joanne Brackeen / piano
川崎燎 / guitar
Clint Houston / bass

個人的には川崎燎の参加がポイントです。彼の音源は気になったら入手する程度なのでコレクターとまではいきませんが、いままで聴いた音源の中ではかなりジャズ寄りで速いパッセージを連発しています。加えてフラメンコの影響を随所に感じさせるフレーズの連発で実に個性豊かな仕上がりになっています。Clint Houstonのベースもドラムレスの空間を埋めるかのごとく、いつになく饒舌なプレイに徹しています。

ここで余談を。1970年代前半、Tony WilliamsがLifetimeをいったん解体し、New Lifetimeを結成する際、後任ギタリストとして川崎燎が参加することになりリハーサルまで行ったとのこと。しかし、Tony Williamsはなぜか姿をくらまし音信不通に。実際はスウェーデンに渡り、ストックホルムで亡きJack BruceとAllan Holdsworthの3人に黒人女性歌手を加えてスタジオセッションを行っています。で、蓋を開けてみたらNew Lifetimeの正式ギタリストはAllan Holdsworthに決定していたというオチ。川崎燎にとってはとんでもない話ですが、裏ではJack BruceとJohn McLaughlinあたりがHoldsworthを押していたのでしょうね。以上、ライナーからの情報でした。

●Musicians
Joanne Brackeen / piano
川崎燎 / guitar
Clint Houston / bass

●Numbers
1.  Haiti B
2.  Charlotte's Dream
3.  Dreamers
4.  Aft
5.  Winter Is Here
6.  Green Voices Of Play Air

2016年2月14日 (日)

上原ひろみ / Spark(2016年)

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Musician●上原ひろみ(piano,keyboard)
Title●Spark(2016年)
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ご存じ「Hiromi The Project Trio」による4枚目になる新譜「Spark」が届きました。

上原ひろみ / piano,keyboard
Anthony Jackson / contrabass guitar
Simon Phillips / drums

個人的にはこの3人によるプロジェクトがここまで続くとは想像もしていませんでしたし、厳しい音楽市場を考えると同一メンバーによる連続作というのは状況的になかなか出来ないことだと思います。

というわけで拝聴。4作連続で聴いていると聴く側も一種の“慣れ”みたいなのが出てしまうのですが、良くも悪くも期待通りの“Hiromi節”の連続です。前作「Alive」(2014年)を聴いたときは「正直ここまでやってしまうと次作は聴き側のハードルが上がって大変だな」という印象を持ったのですが、本作は結果として現状維持になったなというのが率直な感想です。もちろんプレイそのものやぴったりと息の合った3人のインタープレイの応酬は素晴らしいの一語。でも、耳に入ってくる音はどこかで聴いたことのあるフレーズが多いんですよね。その意味で新鮮な驚きに満ちていた前々作「Move」(2012年)のほうが面白かったな、というのが正直なところです。前作でも同じようなことを書きましたが、彼女の音楽的活動の目標がこのプロジェクトの維持にあるとしたら、早晩行き詰まってしまうでしょうし、そろそろ方向転換のタイミングに近づいているのではと個人的には思います。

それにしても、「Alive」で感じられた“プログレ成分”はますます濃厚になっています。#1「Spark」での静寂なイントロから一転して変拍子で攻め立ててくる展開などはまさにプログレそのものですね。

とまぁ、上原ひろみについてはついつい辛口になってしまうのですが、これも大きな期待値の裏返しということでご理解ください。

●Musicians
上原ひろみ / piano,keyboard
Anthony Jackson / contrabass guitar
Simon Phillips / drums

●Numbers
1.  Spark
2.  In A Trance
3.  Take Me Away
4.  Wonderland
5.  Indulgence
6.  Dilemma
7.  What Will Be,Will Be
8.  Wake Up And Dream
9.  All's Well

2016年1月 1日 (金)

RANDY INRAM / Sky/Lift(2014年)

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Musician●Randy Ingram(piano)
Title●Sky/Lift(2014年)
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新年明けましておめでとうございます。本年も「奇天烈音楽館」をご贔屓にお願い申し上げます。というわけで、新年らしく爽やかな1枚を。アラスカ州アンカレッジ出身の鍵盤楽器奏者、Randy Ingramの2014年リーダー作です。Mike Moreno関連で引っかけた物件になります。2012年12月7日、NYCブルックリンにてレコーディング。

Randy Ingram / piano
Mike Moreno / guitar
Matt Clohesy / bass
Jochen Rueckert / drums

Mike MorenoとMatt Clohesyの参加、そしてエヴァンス作「Time Remembered」が取り上げられているあたりで、およその作風が想像できるわけですが、まさに期待を裏切らない内容に仕上がっています。つまりはエヴァンスフォロワーによる現代ジャス的解釈を具体化すると、間違いなくこのように仕上がるんだろうな、ということです。

冒頭の#1「Sky/Lift」からIngramとMorenoとの息の合ったプレイを聴かされて、いきなりノックアウト。これは、素晴らしいではないですか!変則リズムが心地よい#3「99」で聴かれるMorenoのソロもこれまた良し。キース・ジャレットのアメリカンカルテットを彷彿とさせる#5「St.Louis」も聴いていて面白いですね。

というわけで、エヴァンスファン(フォロワーも含めて)とMorenoファンには自信をもってお勧めしたい名盤です。


●Musicians
Randy Ingram / piano
Mike Moreno / guitar
Matt Clohesy / bass
Jochen Rueckert / drums

●Musicians
1.  Sky/Lift
2.  Silent Cinema
3.  99
4.  Time Remembered
5.  St.Louis
6.  The Sea
7.  Late Romantic
8.  Nicky

2015年11月22日 (日)

BARRY MILES / WHITE HEAT(1971年)

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Musician●Barry Miles(electric piano,piano,vibraphone)
Title●White Heat(1971年)
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米ニュージャージー出身の鍵盤楽器奏者、Barry Milesによる1971年作品です。恥ずかしながらBarry Milesは初聴きなんですが、経歴を見て吃驚。ジャズドラマーとしてキャリアスタートを切ったMilesの初レコーディングは何と12歳だったとか。その後、鍵盤楽器に活路を求め、メジャーデヴュー作としてこの「White Heat」が作られたとか。その後、70年代中盤にアル・ディメオラと組んで、ディメオラの初リーダー作「Land Of  The Midnight Sun」(1976年)に参加しています。もっとも「Land Of  The Midnight Sun」はChick Coreaという大物が参加していたので、あまり印象に残っていないんですね。80年代に入ってからはロバータ・フラックのバックを務めたりしています。1971年NYCにて録音。

Barry Miles / electric piano,piano,vibraphone
Victor Gaskin / bass
Warren Smith / congas
Terry Silverlight / drums
John Abercrombie / guitar
Pat Martino / guitar
Lou Tabackin / tenor sax,flute

何と当時は若手ギタリストだったJohn AbercrombieとPat Martinoが参加しています。Martinoはすでにリーダー作を何枚か出していましたが、ECM参加前のAbercrombieはまだまだ無名だったはずです。

「Return To Jazz Funkシリーズ」として国内盤でCD化された本盤は、まさにタイトル通りのジャズファンクの世界。でもあえて苦言を呈すと、71年当時はファンクという言葉はまだ一般化していない時代で、レコード会社による後付け的な強引さを感じます。自分的には70年代ジャズロックにファンクやソウルミュージック的な要素をブレンドしたように思えます。

さて肝心の2人のギタリストですが、特にPat Martinoの活躍ぶりが特筆モノです。詳細なクレジットがないのですが、#2「White Heat」、#4「Descent」、#5「Tangent」、#6「Foot Mother」の4曲でプレイ。特に#2で聴かれる鬼気迫るギターソロはすでに完成されています。もちろん十八番のシーケンス・スケールの連続技も披露されています。

一方で、Abercrombieはソロらしいソロをとっていません。おそらく#1「Little Heart Of Pieces」、#3「Woodstock」、#7「Sound Song」で聴かれるワウワウを効かせたバッキングは彼のものと思われますが、確証はありません。#1ではスキャットに合わせてそれっぽい感じで弾いてはいるのですが、Martinoの存在感と比較してしまうと陰が薄いですね。



●Musicians
Barry Miles / electric piano,piano,vibraphone
Victor Gaskin / bass
Warren Smith / congas
Terry Silverlight / drums
John Abercrombie / guitar
Pat Martino / guitar
Lou Tabackin / tenor sax,flute

●Numbers
1.  Little Heart Of Pieces
2.  White Heat
3.  Woodstock
4.  Descent
5.  Tangent
6.  Foot Mother
7.  Sound Song

2015年10月18日 (日)

Michel Reis / Capturing This Moment(2015年)

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Musician●Michel Reis(piano)
Title●Capturing This Moment(2015年)
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ルクセンブルグ公国出身でNYCを拠点に活躍する鍵盤楽器奏者、Michel Reis(ミシェル・レイス)です。何となくレコメン情報を眺めていて推薦文に釣られて捕獲した物件であります。つまりは初聴きミュージシャン。何となくジャケ写から音が聴こえてきた感じもしたわけです。だから、ジャケットは大切なんです。2014年7月30日、31日、ドイツにて録音。

Michel Reis / piano
Stefan Karl Schmid / tenor sax,soprano sax,clarinet
Robert Landfermann / bass
Jonas Burgwinkel / drums

あれま。どなたも存じ上げません。名前からして欧州系のミュージシャンなのでしょうね。

全くの直感で入手したのですが、これが大正解。系統としては現代ジャズなのですが、主役のReisのリリシズムが迸るピアノと哀愁感あふれどこか陰を感じさせる楽曲の数々。NYCで活躍しているといいながらもすべてにおいて欧州的なテイストにあふれているんですよね。清涼感をまといつつダークな部分も存分に感じさせるあたりが憎いところです。おそらくECM系が好きな人は、ハマってしまうのではないかと思います。方向性はかなり異なりますが、個人的にはAntonio Faraoと並ぶ2015年の掘り出し物件認定です。

●Musicians
Michel Reis / piano
Stefan Karl Schmid / tenor sax,soprano sax,clarinet
Robert Landfermann / bass
Jonas Burgwinkel / drums

●Numbers
1.  Image #4
2.  Half Asleep Beneath The Stars
3.  Capturing This Moment
4.  Pastral
5.  Galapagos
6.  Image #1
7.  Forest Scene
8.  Fleeting Reality
9.  Twin Lakes
10. Image #3
11. Distant Constellations
12. Corner of the Sky
13. Image #7
14. Dry Winds And Dead Sands

2015年9月13日 (日)

ANTONIO FARAO / BOUNDARIES(2015年)

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Musician●Antonio Farao(piano)
Title●Boundaries(2015年)
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当欄では初お目見え、初聴き音源&ミュージシャンです。イタリア出身で今年50歳という鍵盤楽器奏者、Antonio Faraoの最新盤です。2015年リリース。珍しく密林のレコメンドに乗っかったというか、ジャケットの一種異様さぶりにビビってしまい脅迫されてポチってしまった、というのが真相なんですが。まぁ、珍しく直感が働いたという感じです(笑)。2015年4月21日、22日、イタリアにて録音。版元は「Verve」。

Antonio Farao / piano
Mauro Negri / tenor and soprano sax
Martin Gjakonovsky / bass
Mauro Beggio / drums

ゲストミュージシャンとしてアルト奏者が2曲に参加しています。全8曲中、#2がTony Williams、#3がHarbie Hancockの曲で残り6曲がFaraoによるもの。カバー曲をみれば、Faraoのルーツ的なものはある程度見てとれます。基本カルテット構成でテナー(アルト)と鍵盤とが絡み合い、リズム隊が彩りを加えるというオーソドックスなスタイル。テイストとしてはいまのメーンストリームジャズに欧州スタイルのダークである意味陰鬱な要素を加えてみました、というイメージ。言葉として表現するのはなかなか難しいのですが、一言で言ってしまえば、いきなり1曲目からとにかく格好いいわけです。サックスがダークな部分を受け持ち、Faraoの鍵盤が攻撃的な要素とリリシズム的な要素という相反するモノを一手に引き受け、強靱で活力あふれるリズム隊がガッツリと支える、しかも各パートの役割分担が絶妙なバランスでもって見事なグルーヴ感を生み出す。自分で書いていてなんのこっちゃよくわからないのですが、久しぶりに“生きたジャズ”を聴いた感があります。

さんざん心を乱されたあげく、ラスト#7「Around Phrygian」でのECM的で見事なクールダウンには、手練れというか思わす「ずるい!」と心の中で叫んでしまいました。Farao君、相当な“たらし”です。

●Musicians
Antonio Farao / piano
Mauro Negri / tenor and soprano sax
Martin Gjakonovsky / bass
Mauro Beggio / drums

Luigi Di Nunzio / alto sax on #4,#6

●Numbers
1.  Boundaries
2.  Hand Jive
3.  Maiden Voyage
4.  Coolfunk....
5.  My Sweetest
6.  Not Easy
7.  Around Phrygian

2015年7月29日 (水)

John Taylor亡くなる

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英国出身の鍵盤楽器奏者、John Taylorが7月17日、心不全のため亡くなりました。享年72歳。西フランスのセグレ村で開催されたサヴール・ジャズ・フェスティバルでの演奏中、グランドピアノにもたれかかるように倒れ、病院に搬送。死亡が確認されたそうです。

長いキャリアのわりにリーダー作が少ないので、日本での知名度はいまひとつの印象を受けますが、60年代後半から70年代初頭のジャズロック期、70年代中盤からのECM時代と息の長い活躍を続けてきました。現代ジャズ、コンテンポラリー系ジャズの主要作品に数多く参加し、後世に受け継がれる名演を残してきた功績は大いに讃えられてもいいと思います。

個人的にはジャズロック期でのJohn Surmanとの共演作、ECM時代でのKenny WheelerやJan Garbarekとの共演作が印象に残っています。以下に参加作品をあげます。意外なところではDavid Sylvianとの共演作も。あらためて合掌です。

音源はBill Frisell (g)、Arild Andersen (b)、Alphonse Mouzon (d)との共演ライブ「A Molde Concert」(1980年)より


でもって、北欧のコルトレーン、Jan Garbarekとの共演音源♪


John Taylor - Solo
  Solo  1992
  Insight  2003
  Songs & Variations  2005    
  Angel of the Presence  2006    
John Taylor Trio (Chris Laurence and Tony Levin)
  Decipher  1972
John Taylor Trio (Steve Arguelles and Mick Hutton)
  Blue Glass   1991
John Taylor Trio (Marc Johnson and Joey Baron)
  Rosslyn  2003
John Taylor Sextet(Kenny Wheeler / Stan Sulzmann / Chris Pyne / ChrisLaurence / Tony Levin)
  Pause and Think Again (unauthorised release)   1971
With Arild Anderson
  A Molde Concert  1980    
With Julian Arguelles
  Pheadrus  1991
With Azimuth
  Azimuth / The Touchstone / Depart  1977/79/80
  Azimuth '85  1985
  ow it was then...never again  1995
With Uli Beckerhoff
  Private Life   1992
With Harry Beckett
  Flare Up  1970    
  Warm Smiles   1971    
  Themes for Fega  1972    
With Henning Berg
  Tango and Company  1997
With Ian Carr
  Sounds and Sweet Airs  1993
With Bruno Castellucci
  Lost and Found       
With Graham Collier
  Songs for My Father            
With the Creative Jazz Orchestra
  Exits and Entrances  2002
With John Dankworth
  Full Circle  1972    
With Martin Drew
  The Martin Drew Band  1976    
With John Eardley
  Namely Me  1974    
With Peter Erskine
  You Never Know  1993
  Time Being   1994
  As it Is  1996
  Juni  1999
With Gil Evans
  The British Orchestra  1983    
With Jan Garbarek
  Places   1977    
  Photo with...   1978
With Mike Gibbs
  Tanglewood 73   1973    
  By the Way  1993
With Charlie Haden
  Nightfall   2005    
With Don Sugarcane Harris
  Keep on Driving         
With Karsten Houmark
  Dawn          
With Lee Konitz
  Songs of the Stars  1988    
With Volker Kriegel
  Spectrum  1971    
    Missing Link   1972    
With Cleo Laine
    An Evening with Cleo Laine  1972    
With Kirk MacDonald
    Pure and Simple  2001    
With Vince Mendoza
  Epiphany       
With Nick Purnell
  Onetwothree  1990
With Enrico Rava
  Secrets  1984    
With Ronnie Scott
  Serious Gold  1977    
With Alan Skidmore
  Once Upon a Time  1971    
  TCB  1973    
With Stan Sulzmann
  On Loan with Gratitude   1976    
  Everybody's Song but My Own  1987    
With John Surman
  How Many Clouds Can You See?  1970    
  Tales of the Algonquin   1971    
  Conflagration            
  Morning Glory   1973    
  Stranger Than Fiction  1994
  Ambleside Days  1993
  Proverbs and Songs  1997
With Steve Swallow
  Parlance
With David Sylvian
  Gone to Earth  1986
  Pop Song  1989    
With Colin Towns
  Mask Orchestra   1993
With Ray Warleigh
  Reverie  1974    
With Kenny Wheeler
  Song for Someone  1975    
  Double Double You  1984
  Flutter by Butterfly  1988
  Music for Large and Small Ensembles  1990
  The Widow in the Window   1990
  Kayak   1992
  All the More   1998    
  A Long Time Ago  1999    
  Moon   2001    
  Where do we go from Here?   2005    
With Kenny Wheeler/Riccardo del Fra
  Overnight   2002
With Norma Winstone
  Edge of Time   1972    
  Somewhere Called Home   1986
  Like Song Like Weather   1998    
  With Various Artists
  Ten Piano Players (Volume One)    1996
  Ten Piano Players (Volume Two)    1998    
With Miroslav Vitious
  Journey's End  1983    
With Maria Pia De Vito
  Phoné   
  Nel Respiro   2002    
With Maria Pia De Vito and Ralph Towner
  Verso   2000
With Eric Vloiemans
  Bitches and Fairy Tales 1999    
  Umai   2000    
With Attillo Zanchi
  Some Other Place   1992    

2015年5月 9日 (土)

PAUL BLEY / QUIET SONG(1976年)

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Musician●Paul Bley(piano)
Title●Quiet Song(1976年)
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Paul Bleyが主導となって結成された異色トリオによる作品です。1976年に「IREC」というレーベルからリリースされています。レコーディングは1974年11月14日、NYCで行われています。

参加メンバーは
Paul Bley / piano,fender rhodes
Jimmy Giuffre / alto flute,clarinet
Bill Connors / guitar
という構成。Bill Connorsは時期的にECM所属ですね。

というわけで傾聴。
実はこの作品、かなり前に入手していたにもかかわらず、長らく放置してきた物件です。何というか、積極的に聴く気にならなかったというの本音なのですが…。Pau Bleyが奏でる内省的なメロディーにJimmy GiuffreとBill Connorsの2人が絡んでいくという内容ですが、これがやたらと沈んだ感じです。これといった盛り上がりもなく、ただ淡々と進行するサマはまるで修行僧の呟きのようで、かなり聴く者を選ぶ作品であることは確か。放置物件認定にしていた理由もそこにあります。Bill Connorsはアコギのみでの参戦ですが、イメージとしては彼がECMに残しているギターソロ作のプレイに近いです。

●Musicians
Paul Bley / piano,fender rhodes
Jimmy Giuffre / alto flute,clarinet
Bill Connors / guitar

●Numbers
1.  Solo
2.  Duet
3.  Play Blue
4.  Clarinet
5.  Yeah,Guitar
6.  Carol
7.  Trio
8.  Goodbye
9.  Laurent
10. Quiet Song

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