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2016年6月 5日 (日)

Richard Beirach / Elm(1979年)

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Musician●Richard Beirach(piano)
Title●Elm(1979年)
■Amazonより購入


Richard BeirachといえばポストEvans世代の中でも第一人者として知られていますが、彼がECM時代に残した傑作の1枚がこの「Elm」ではないかと思っています。このアルバム、アナログでは所有していましたがふと思い立ってCDを入手した次第です。1979年5月、Ludwigsburgにて録音。プロデューサーはマンフレード・アイヒャー。

Richard Beirach / piano
George Mraz / bass
Jack DeJohnette / drums

DeJohnetteに関してはいまさら説明不要ですが、Beirachとの共演作となると他に思い当たる作品が思い出せません。おっと、George Adamsの「Sound Suggestions」がありましたね。チェコの至宝、George Mrazはバークリー音楽院時代からの盟友で、やはり同窓のJohn Abercrombieとともに数々の共演作があります。

あらためてBeirachのキャリアを見直してみると、1970年代のECM関連としてはDavid LiebmanやJohn Abercrombieなどとの客演以外では、「Eon」(1974年)と「Hubris」(1977年)とこの「Elm」しかなく、あとは非ECM系なのですね。専属主義が強いECMとしては意外と言えば意外なのですが、これは想像するに「自分が本当に演奏したい音楽を演奏する」という彼の考え方に忠実になった上での結果ではないかと思います。この揺るがぬ信念が後にECMの総帥アイヒャー氏との確執につながったりしたわけですが。

#1   Sea Priestess
いきなりのキラーチューン。ピアノトリオでありながらDejohnetteもMrazも自己主張が前面に出るタイプのミュージシャンなので、静かな音楽を期待すると強烈なしっぺ返しをくらいます。

#2  Pendulum
どこかしらモンク的な感じの作品です。Beirachお得意の節回しの連続なのですが、絶妙なセンスで決して飽きさせることがありません。DeJohnetteとの丁々発止的なやり取りはまるで格闘技を見ているようです。バックで煽りまくるMraz。

#3  Ki
泣かせるバラードなのですが、この曲でもバックが黙っていません。静かに静かに、なおかつ激しく激しく。この二律背反的な要素を同時にやってのける神業にただただ唖然とします。

#4  Snow Leopard
ちょっとコリア的な感じを醸し出すリズミカルな作品です。初リーダー作「Eon」でも同じような展開の曲がありました。ここでもDeJohnetteが大暴れで凄まじい緊張感を曲全体にもたらしています。曲中盤で聴かれるMrazの超絶ベースソロにも注目です。

#5  Elm
内省的なバラード曲です。ただただ美しい。

有名な逸話なので詳細は割愛しますが、盟友John Abercrombieとのセッション中、失恋で落ち込んでいたAbercrombieを励まそうとBeirachは激しいハードバップをプレイしていました。そこに現れたのがECMの総帥アイヒャー氏。ご存じの通りECMのブランドイメージに厳格な彼にとって、ハードバップなどを弾くピアニストなどは論外だったわけです。即座にプレイを中断するよう指示を出しましたが、それにタテついいたのが男Beirach。親友を励まそうとして何が悪い、自分の好きな音楽を弾いて何が悪い、というわけです。この日を境にBeirachはアイヒャーと決別します。そればかりか、アイヒャー氏はBeirach関連の音源のほとんどはECMのラインアップから外してしまいます。リーダー作はもちろん、確執の原因となったJohn Abercrombieの「Arcade」「Abercrombie Quartet」「M」までもが廃盤扱いになってしまいます。後になって日本盤限定として「Hubris」と「Elm」、そして「Arcade」の発売が許されましたが、ほかはCD化もままならい状況です。いや、正確に言いますと日本限定、販売数限定で「Eon」もCD化されていますが、瞬く間に廃盤になっています。アイヒャーさん、いい加減に大人になって復刻してはどうでしょうか。これは文化的にも大きな損失ですよ。

<付記>「Abercrombie Quartet」「M」は「Arcade」との3枚組ボックスとして復刻しています。

●Musicians
Richard Beirach / piano
George Mraz / bass
Jack DeJohnette / drums

●Numbers
1.   Sea Priestess
2.   Pendulum
3.   Ki
4.   Snow Leopard
5.   Elm

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コメント

自分のリッチー・バイラーク遍歴は、ECMの国内盤3部作(当時は入手できました)からはじまっている(’80年代後半か’90年代初期だったかな?)ので、幸いな(?)ことに、これらが彼の本質である、なんてことを感じています。でも、後に彼はもっといろいろな面があるということに気がつきました。BOXセットで発売、なんてことになれば快挙ですね。

TBさせていただきます。

910さん

TBありがとうございます。たまに硬質なピアノトリオを聴きたくなる時があるのですが、そんな時はこのアルバムはうってつけですね。バックが盤石なだけに、安心して身をゆだねることができます。
BOXセットで発売…。できれば生きているうちにお願いしたいものです♪

こちらからもTBお送りします。

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