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2016年3月

2016年3月27日 (日)

Marc Ducret / Le Sens De La Marche(2007年)

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Musician●Marc Ducret(guitar)
Title●Le Sens de la Marche(2007年)
■Amazon Franceより購入


久々にMarc Ducret物件です。2007年11月アヴィニョンと2003年4月26日「Auditorium du Thor」のライブ(#4)を集めた代物です。このアルバムも結構早くに入手して聴いていたのですがいざレヴューにあたってはかなりの難敵でして、いままで放置しておりました。

Marc Ducret / guitar
Bruno Chevillon / bass,electric bass
Eric Echampard / drums
Antonin Rayon / piano,electric piano,clavinet
Paul Brousseau / keyboards,samplers
Tom Gareil / vibraphone,marimba
Matthieu Metzger / alto,soprano sax
Hugues Mayot / tenor,baritone sax
Yann Lecollaire / clarinets,flute,ophone
Pascal Gachet / trumpet,fluegelhorn,bass trumpet
Jean Lucas / trombone

ベースのBruno ChevillonとドラムのEric EchampardはDucretと旧知の仲の強力リズム隊ですね。いまのDucretにとっては10名以上の大コンボというか管楽器を多数擁した編成は珍しくありませんが、おそらくこのライブが初めてのケースではないでしょうか。いろんな意味で実験的ですし、チャレンジフルなライブであることには違いありません。そんなことのあって、これは迂闊に下手なことを書けないな、という思いがあったりしたわけです。その間、例の「Tower」シリーズで管楽器入りの大編成ライブに対して免疫力もついてきたところで、再聴。

そもそもすべてのメンバーの演奏力が完璧すぎるので曲間の拍手で初めてライブ音源だと気がつくほどなのですが、それにしても凄まじいを通り越しているライブです。曲はあくまでもシリアスでダーク。大編成だからといって途中でダレることがなく、すべてのパートが一糸乱れずに完璧にコントロールされています。Ducretの統率力なのか、メンバーの技量がDucretと同等なのか。私などは#1で展開される圧倒的なポリリズムだけで卒倒しかけました。聴く者をかなり選ぶ音源であることは確かですが、いったん魅力にハマってしまうと二度と抜け出すことができない恐ろしいライブです。

●Musicians
Marc Ducret / guitar
Bruno Chevillon / bass,electric bass
Eric Echampard / drums
Antonin Rayon / piano,electric piano,clavinet
Paul Brousseau / keyboards,samplers
Tom Gareil / vibraphone,marimba
Matthieu Metzger / alto,soprano sax
Hugues Mayot / tenor,baritone sax
Yann Lecollaire / clarinets,flute,ophone
Pascal Gachet / trumpet,fluegelhorn,bass trumpet
Jean Lucas / trombone

●Numbers
1.  Total Machine
2.  Tapage
3.  Le Menteur Dans L'Annexe
4.  Aquatique
5.  Nouvelles Nouvelles Du Front

2016年3月26日 (土)

Schnellertollermeier / X(2015年)

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Musician●Schnellertollermeier
Title●X(2015年)
■iTunesより購入


スイス出身のハードコア系フリージャズバンドSchnellertollermeierによる3枚目のアルバムです。フリー系専門レーベル「CUNEIFORM」より2015年リリース。ディスクユニオンのレコメン情報を頼りに入手しました。どうやらこれが世界的なデビュー作のようです。

Andi Schnellmann / ass
Manuel Troller / guitar
David Meier / drums

という3人組のバンドなんですが動画を見るかぎり皆さんまだ若手という感じですね。すでに欧州では知る人ぞ知るという存在のようで大規模なフェスでも結構な動員数を誇るとか。バンド名はメンバーのファミリーネームを連結したものだと思われます。

バンドインフォメーションによれば、ロック、ジャズ、プログレ、パンクなどの要素を取り入れたフリー系を得意とするようで、確かに聴いてみると圧倒的なテクニックと尋常でないハイテンションでガンガン疾走するパワータイプ。類型を探すのは結構難しいのですが、あえて言えば爆裂的な破壊力という意味では「Scorch Trio」に近いかな、という印象です。もっともこの手のフリー系バンドに対して類型を求めること自体が無意味なのかもしれません。個人的にはミニマル的なリフが麻薬的な魅力を放つ#1「X」がベスト。

実は2ndアルバム「Zorn einen ehmer uttert stem!!」(2010年)もiTunesで入手できます。こちらはまだガムシャラに音を詰め込んだという感じで、完成度としてはいまひとつです。


●Musicians
Andi Schnellmann / bass
Manuel Troller / guitar
David Meier / drums

●Numbers
1.  X
2.  Backyard Lipstick
3.  Riot
4.  Sing For Me
5.  Massage Du Printemps
6.  ///\\\///

2016年3月21日 (月)

Gilad Hekselman / Homes(2015年)

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Musician●Gilad Hekselman(guitar)
Title●Homes(2015年)
■Amazonより購入


イスラエル出身でNYCを拠点に活躍する若手ギタリスト、Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)による5作目のリーダー作です。2015年リリース。この人、前々から気にはなっていたのですがなかなか聴く機会に恵まれず、やっと入手した次第です。2014年5月10日、11日、NYCにてレコーディング。

Gilad Hekselman / guitar
Joe Martin / bass
Marcus Gilmore / drums
Jeff Ballard / drums on #3,#10

基本ギタートリオ構成なのですね。Gilad Hekselman自体が初聴きになるのでほかのアルバムとの比較はできないのですが、1曲目からドがつくストライクのギターです。繊細でいながら結構冒険的なフレーズを生み出しているのですが、決して俺が俺が的に前面にシャシャリ出ないタイプ。低体温系というか、奥ゆかしいというか。思うにこうした独自の空気感ってBen Monderあたりから始まった現代ジャズギターの系譜なんでしょうね。聴く者を選ぶプレイヤーであることは確かですが、ギター好きには堪らない仕掛けと新たな発見が随所に仕込まれています。

12曲中、8曲がGilad Hekselmanオリジナルで、ほかはPat Metheny、Bud Powellらのカヴァー。#10がMethenyのカヴァーですが、面白いアレンジに仕上がっていますね。

●Musicians
Gilad Hekselman / guitar
Joe Martin / bass
Marcus Gilmore / drums
Jeff Ballard / drums on #3,#10

●Numbers
1.  Homes
2.  Verona
3.  KeeDee
4.  Home E-minor
5.  Space
6.  Cosmic Patience
7.  Eyes to See
8.  Parisian Thoroughfare
9.  Samba Em Preludio
10. Last Train Home
11. Dove Song
12. Place Like No Home

2016年3月20日 (日)

Logan Richardson / Shift(2016年)

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Musician●Logan Richardson(alto sax)
Title●Shift(2016年)
■Amazonより購入


アメリカ生まれで現在はパリに居を構えるサックス奏者、Logan Richardsonのリーダー作です。2016年リリース。2013年12月4日、5日、NYCにて録音。

Logan Richardson / alto sax
Pat Metheny / guitar
Jason Moran / piano
Harish Raghavan / bass
Nasheet Waits / drums

Logan Richardsonは初聴きなんですが、Pat MethenyとJason Moranが参加となれば買いますよね、ふつう。実はLogan Richardsonはこの2月にプロモーションのために来日していて引き連れてきたのが、何と今をトキメクMike Moreno。個人的にはMethenyよりもMorenoのほうが興味津々なわけで、来日ライブを見逃したことは痛恨の極みです。

このアルバムは元々自主制作盤だったそうで、日本の版元が“発掘”したとのこと。Methenyは金になるだけに目ざといというか当然というかですね。作風はというと典型的な現代ジャズという塩梅で、よくも悪くもMethenyが場の雰囲気をコントロールしています。Richardsonは割と常識にかなったプレイに徹しています。Jason Moranの好サポートも良し。Nasheet Waitsはおそらく初聴きですが、リズムを手堅くキープするというよりも自ら崩していくタイプで、隠れフリー系的な臭いを感じさせます。結構面白いプレイヤーですね。

肝心のMethenyですが、2006年にMichael Breckerの遺作「Pilgrimage」に参加して以来の客演とのこと。それだけLogan Richardsonの力量を買っているのでしょう。曲によってエレキ、ギターシンセを使い分けて変化をつけています。でも、どこをどこから切ってもMethenyはMethenyなんですね。Metheny目当てで買っても損はしないと思います。

●Musicians
Logan Richardson / alto sax
Pat Metheny / guitar
Jason Moran / piano
Harish Raghavan / bass
Nasheet Waits / drums

●Numbers
1.   Mind Free
2.   Creeper
3.   In Your Next Life
4.   Locked Out Of Heaven
5.   Slow
6.   When I Wake (interlude)
7.   Imagine
8.   AloneL
9.   In Between (interlude)
10.  Time
11.  Untitled
12.  Dream Weaver
13.  Shifting Sand

2016年3月19日 (土)

Clint Houston / Inside The Plan Of The Elliptic(1979年)

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Musician●Clint Houston(bass)
Title●Inside The Plain Of The Elliptic(1979年)
■Amazonより購入


1970年代から80年代にかけて多くの作品に参加していたベース奏者のClint Houstonによる2枚目のリーダー作です。1枚目「Watership Down」(1978年)にはJohn Abercrombieが参加していました。

Clint Houston / bass
Joanne Brackeen / piano
Ryo Kawasaki / guitar
Rubens Bassini / congas,percussions

「Watership Down」からはAl Fosterがコンガに、ギターが川崎燎に代わっています。Joanne Brackeenのみ継続参加。ちなみにこの3人はJoanne Brackeenのリーダー作「ATF」(1977年)でも共演しているので、短期間のうちに蜜月時代があったわけですね。

前作が70年代新感覚派ジャズという案配でどちらかと言えば尖った雰囲気だったのですが、本作はメンバー構成の変化からラテン、ボサノヴァ方面に舵を切っています。ブラジル人コンガ奏者、Rubens Bassiniの参加もそのためだったのでしょう。Clint Houstonはセッション活動が長かったためか、自らが前面に出てくるタイプのプレイヤーではありませんが、#4「Letitia」で聴かれる高速ベースソロ、アルバム中、唯一のフリー曲#6「Black Thing」などが聴き所ですね。

●Musicians
Clint Houston / bass
Joanne Brackeen / piano
Ryo Kawasaki / guitar
Rubens Bassini / congas,percussions

●Numbers
1.  Geri
2.  You Are Like The Sunlight
3.  Goodbye Mr.P
4.  Letitia
5.  Inside The Plain Of The Elliptic
6.  Black Thing

2016年3月13日 (日)

Rolf Lislevand / Nuove Musiche(2006年)

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Musician●Rolf Lislevand(archlute,baroque-guitar,theorboe)
Title●Nuove Musiche(2006年)
■World Guitarより購入


ノルウェー出身のリュート奏者、Rolf LislevandのECMデビュー作品です。

Rolf Lislevand / archlute,baroque-guitar,theorboe
Arianna Savall / triple harp,voice
Pedro Estevan / percussions
Bjorn Kjellemyr / colascione,bass
Guido Morini / organ,clavicord
Marco Ambrosini / nyckelharpa
Thor-Harald Johnson / chitarra battente

17世紀頃の作曲家が作った“古楽”を現代風にアレンジした作品で、邦題は「天空のスピリチュアル」。楽器クレジットを見ても知らない名前ばかりですが、古楽器を中心に使っているとか。17世紀と言えばバロック音楽の全盛期ですが、時代的にも個人的嗜好にぴったりマッチしています。

“古楽”というと一見して敷居が高そうですが、実際聴いてみると現代風にアレンジが施されているので、予備知識なしでも十分楽しめます。時にバロック的であり、土着的な民族音楽的であり、スパニッシュの香り漂う楽曲もありと内容的にもバラエティに富んでいるので、聴いていて飽きません。無論、ジャズ的な要素は皆無で、どちらかと言えばワールドミュージック、ヒーリング系に分類される作品になると思います。ちょっと疲れた時に聴いてみたいですね。

●Musicians
Rolf Lislevand / archlute,baroque-guitar,theorboe
Arianna Savall / triple harp,voice
Pedro Estevan / percussions
Bjorn Kjellemyr / colascione,bass
Guido Morini / organ,clavicord
Marco Ambrosini / nyckelharpa
Thor-Harald Johnson / chitarra battente

●Numbers
1.  Arpeggiata Addio
2.  Passacaglia Antica I
3.  Passacaglia Andaluz I
4.  Passacaglia Antica II
5.  Passacaglia Cromatica
6.  Passacaglia Antica III
7.  Passacaglia Cantus Firmus
8.  Passacaglia Caltica
9.  Passacaglia Spontanea
10. Passacaglia Andaluz II
11. Toccata
12. Passacaglia Cantata
13. Corrente
14. Corrente
15. Toccata
16. Ciaccona
17. Toccata Cromatica

2016年3月12日 (土)

David Gilmore / Energies Of Change(2016年)

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Musician●David Gilmore(guitar)
Title●Energies Of Change(2016年)
■Amazonより購入


「M-BASE派」ギタリストDavid Gilmoreによる4枚目のリーダー作です。David Gilmoreといってもあの有名なギタリストではなく、かつてAdam Rogersが在籍していたジャズファンクユニット「Lost Tribe」にも参加していたアフリカ系米国人です。第一、スペルも違いますしね。日本盤リリースは2016年ですが、レコーディングは2010年、2012年となっています。

David Gilmore / guitar
Marcus Strickland / soprano sax,alto sax,tenor sax,bass-clarinet)
Luis Perdomo / piano
Ben Williams / bass
Antonio Sanchez / drums
Kofo Wanda / talking drums on #3

いまをトキメクAntonio SanchezやBen Williamsの参加とあればメンツ買いしても大正解。いかにも「M-BASE派」らしい変拍子の乱打と複雑な楽曲構成の連続です。David Gilmoreのギターをまともに聴いたのは「Lost Tribe」以来ですが、相変わらず尖ったギターが素晴らしいですね。Lost Tribe時代を思い出させる#1、打楽器が乱れ撃たれるなかギターとサックスとの高速ユニゾンが最高に格好いい#2、複雑な楽曲構成が麻薬的に格好いい#3と、息継ぎの余裕を一切与えない緊張感の連続。絶え間なく繰り広げられるガチンコ勝負は聞き応え十分でゲップが出そうです(失礼)。

David Gilmoreは当然として、全曲にわたってMarcus Stricklandによる八面六臂の活躍が目立ちます。若かかりし頃のDavid Binneyと重ね合わせながら聴くのもおもしろいかも知れません。

Lost Tribe関連記事はこちら
Lost Tribe / Lost Tribe(1993年)
Lost Tribe / Soulfish(1994年)
Lost Tribe / Many Lifetimes(1998年)

●Musicians
David Gilmore / guitar
Marcus Strickland / soprano sax,alto sax,tenor sax,bass-clarinet)
Luis Perdomo / piano
Ben Williams / bass
Antonio Sanchez / drums
Kofo Wanda / talking drums on #3

●Numbers
1.  Energies Of Change
2.  Rajas Guna
3.  Dance of Duality
4.  The Seeker
5.  Sacred Pause
6.  Over Shadow Hill Way
7.  Awakening
8.  Revelations
9.  Trick of

2016年3月 6日 (日)

Pete McCann / Range(2015年)

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Musician●Pete McCann(guitar)
Title●Range(2015年)
■Amazonより購入


NYCで活躍するコンテンポラリー系ギタリスト、Pete McCannによる最新作「Range」です。2014年5月8日、NYCにて録音。

Pete McCann / guitars
John O'Gallagher / alto sax
Henry Hey / piano,organ,rhodes
Matt Clohesy / bass
Mark Ferber / drums

Matt Clohesyの参加が目を引きますが、ほかのミュージシャンは決してメジャーとは言い難いですね。ドラム奏者のMark FerberはSean Waylandの「Pistachio 2」に参加していました。

Pete McCannはいわゆるコンテンポラリー系ギタリストに属すると思いますが、まず驚くのは確かなテクニックと表現力の豊かさ。彼のリーダー作「Most Folks」(2008年)でも触れましたが、元々はジミヘンから影響を受けてギターを始めたということもあり、ジャズ一辺倒ではなく随所にロックギター的なイディオムを持ち込むことで、表現の幅を広げることに成功しています。楽曲によりエフェクターを駆使しながら巧みにトーンを使い分け、変幻自在なフレーズを生み出す技には感服します。ギンギンに弾き倒したと思えば、#7のようにアコギでダークな世界を表現したりと聴いていて飽きることがありません。ギター好きはもちろん、現代ジャズに触れるうえで欠かせない好作です。

●Musicians
Pete McCann / guitars
John O'Gallagher / alto sax
Henry Hey / piano,organ,rhodes
Matt Clohesy / bass
Mark Ferber / drums

●Numbers
1.  Kenny
2.  Seventh Jar
3.  Realm
4.  To The Mountains
5.  Mustard
6.  Dyad Changes
7.  Numinous
8.  Bridge Scandal
9.  Rumble
10. Mine Is Yours

2016年3月 5日 (土)

Svein Rikard Mathisen / Copenhagen Diaries(2015年)

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Musician●Svein Rikard Mathisen(guitar)
Title●Copenhagen Diaries(2015年)
■Tower Recordより購入


ノルウェー出身のコンテンポラリー系ギタリストの新星、Svein Rikard Mathisenによるおそらく初リーダー作です。2015年リリース。2015年6月20日、22日、デンマークにて録音。ディスクユニオンのレコメン情報に乗って入手しました。

Svein Rikard Mathisen / guitar
William Larsson / piano
Paul Hinz / bass
Andreas Fryland / drums

Aske Drasbak / alto sax on #4,#6,#9
Maylen Rusti / vocal on #4,#9

基本はカルテット構成で、曲によってゲストミュージシャンが参加するという形態です。本人を含めてみなさん存じ上げないのですが、名前の感じからすべて北欧系のミュージシャンで固めていると思われます。個人的には北欧ジャズというだけで評価が増してしまうのですが、それをさて置いても、この人、かなり聴かせるギタリストです。基本はコンテンポラリー系に分類されると思いますが、速いパッセージと瑞々しいフレージングの連続に驚きの連続。ちょうど同じ北欧はデンマーク出身のTorben Waldorffのデヴュー作を聴いたときの衝撃に近いものを感じました。いや、力任せに弾き倒すタイプのWaldorffよりも、幅広い表現力や緻密な楽曲構成という点では遙かに上かも。

いきなりAdam Rogersばりの端整なメカニカルな早弾きが聴かれる#1、弾きに弾きまくる#3、女性ボーカル(ボーカルというよりもヴォイス的な)を導入した#4、#9、リリカルな魅力で満載の#5あたりが個人的な好みです。

ギタリストのリーダー作というとどうしても“俺が俺が的”に前面に出てくる傾向が強いのですが(もっともそうした部分を期待していることも否めませんが)、サイドを固めるWilliam Larssonの鍵盤も腕達者でなかなか聴かせるので、楽曲としての絶妙なバランス具合も心地良く感じられます。普通に現代ジャズ作品として聴いてもよし、もちろんギターアルバムとして聴くのもよし。しかも、これがデヴュー作とは末恐ろしいかぎりです。


●Musicians
Svein Rikard Mathisen / guitar
William Larsson / piano
Paul Hinz / bass
Andreas Fryland / drums

Aske Drasbak / alto sax on #4,#6,#9
Maylen Rusti / vocalon #4,#9

●Numbers
1.  Obstruction
2.  Who Broke The Bat?
3.  Pheasant Cookin'
4.  Nightmares
5.  Hedmark
6.  Vanity
7.  A Moon On A Sunny Day
8.  New Beginnings
9.  I Guess Seeing One More Episode Won't Hurt Anyone

2016年3月 1日 (火)

David Bowie / ★(2016年)

Index
Musician●David Bowie
Title●★(2016年)
■iTunesよりDL


1月10日、69歳で亡くなった希代のトリックスター、David Bowie。その2日前にリリースされた「★」(Blackstar)が遺作となってしまいました。突然の訃報に驚くとともに、死に際まで何ともドラマチックでさすが“スター”は違うな~と思っていました。個人的にはDavid Bowieの存在はグラムロックの流れから出てきたミュージシャンという印象が強く、実はこれまでほとんど聴いたことがありませんでした。初期の頃では「Fame」が印象に残っている程度で、あとはSRVを擁した「Let's Dance」をレンタルしたくらいですね。だから、David Bowieについてあれこれ書くのは何だかおこがましいわけです。

でもって遺作「★」もスルーしようかと思っていたところ、当欄でもたびたび取り上げているNYCアンダーグラウンドで活躍するギタリスト、Ben Monderが参加しているという情報を得て、慌てて購入した次第です。

David Bowie / vocal,guitar,strings arrannge
Donny McCaslin / sax,flute,woodwind
Jason Lindner / piano,organ,keyboards
Tim Lefebvre / bass
Mark Guiliana / drums,percussions
Ben Monder / guitar
Tony Visconti / strings
James Murphy / percussions
Erin Tonkon / vocals

プロデューサーはTony Viscontiが務めていますが、Donny McCaslinやJason Lindner、Ben Monderなどマリア・シュナイダー楽団のメンバーが中心になっています。NYCの先鋭的ジャズミュージシャンとBowieとの接点は定かではありませんが、人脈と人脈とが繋がっていきそれぞれが共演を続けていたところが注目されたのでしょう。そんな彼らを束ねたのがTony Viscontiであり、マリア・シュナイダーということなのでしょう。参加メンバーのほとんどが年齢的に40代後半から50代前半ということで、当然のようにBowieの洗礼を受けており、少年期にはジャズ以前にロックを熱心に聴いていたであろうと思われます。したがって「Bowieのアルバムに参加しないか?」とオファーに対して、彼ら的には二つ返事で応じたことは想像に難くありません。

当欄が注目するのはBen Monderのある種変態的なギタープレイが、Bowieのアルバムにどのようにフィットするかです。#1「★」での不安感を煽るようなコードワークでいきなりMonderの面目躍如という塩梅ですね。曲中Monderは特に目立つわけではないのですが、楽曲としてのカラーを印象づけるうえで冒頭のギターは欠かせません。Donny McCaslinのサックスといい、Mark Guilianaの変態チックなドラミングも、もろにNYCアンダーグラウンドの世界そのままです。

ラスト曲「I Can't Give Everything Away」では最近のMonderとしては珍しくソロをとっていますが、これがまた素晴らしい。少しばかりRobert Fripp卿を感じられるロングトーンは、Monderの1stリーダー作「Flux」(1995年)の時点ですでに披露されていました。Monderの追っかけとしては、ついに大メジャーアルバムで「やってくれました!」と喝采したいと思います。

こちらは1975年にSoul Trainに出演した時の映像。28歳の若さでこれだけの大物感は凄いです

●Musicians
David Bowie / vocal,guitar,strings arrannge
Donny McCaslin / sax,flute,woodwind
Jason Lindner / piano,organ,keyboards
Tim Lefebvre / bass
Mark Guiliana / drums,percussions
Ben Monder / guitar
Tony Visconti / strings
James Murphy / percussions
Erin Tonkon / vocals

●Numbers
1.  ★(Blackstar)
2. 'Tis a Pity She Was a Whore
3.  Lazarus
4.  Sue (Or in a Season of Crime)
5.  Girl Loves Me
6.  Dollar Days
7.  I Can't Give Everything Away

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