一聴して吃驚。これって60年代後半から70年代前半にかけて一世を風靡した電化マイルズの世界そのものではないですか。マイルスのイタコが憑依してWadada Leo Smithに乗り移ったかのごとく、フリージャズの混沌とした世界観を具現化しています。2曲目タイトルが「DeJohnette」だし。怪しい雰囲気を醸し出すVijay Iyerのエレピ、終始暴れっぱなしのShannon Jackson。いったいこの手の音楽のユーザーっているのだろうかと思いつつ、痛快なジャズロックアルバムってやはり好きだな~。 ●Musicians Wadada Leo Smith / trumpet Vijay Iyer / piano,rhodes,synthesizers John Lindberg / bass Shannon Jackson / drums
●Numbers 1. Rose Parks 2. DeJohnette 3. Caracan Of Winter 4. Tabligh
Musician●Scorpions Title●Taken By Force(50th Band Anniversary Edition)(2015年) ■Amazonより購入
Scorpionsのバンド結成50周年記念してリリースされたリマスターシリーズ。1977年発売の「Taken By Force」はUlrich Jon Roth在籍時代のラスト盤になります。一般的には、Ulrich Jon Roth脱退の理由はバンドがメジャー志向になることでの音楽的方向性に相違云々と言われていますが、実際はモニカ・ダンネマンの意向も大きかったのではないかと推測しています。モニカ・ダンネマンといえば、言うまでもなくジミ・ヘンドリックスの最期を看取ったドイツ人女流画家で、実際はUlrich Jon Rothに接近したのは彼女のほうからという説があります。これは個人的な妄想ですが、「貴方にジミヘンの姿がかぶるの~」とか何とか言われてすっかり籠絡されたのではと。となると、まだ20歳そこそこで田舎の純朴な青年(?)だったUlrich Jon Roth。舞い上がって「ワシはジミヘンの後継者になるんじゃ!」と決心してしまうことは無理からぬことですし、責めたりできません。バンドがアメリカを市場として大きく転換を図る状況で、彼がそこにとどまる理由はないわけです。Ulrich Jon Rothがモニカと出会ったのが1976年。バンド脱退が78年ですから、時系列的にも合点がいきます。
そんなわけで「Taken By Force」です。このアルバムは何回かリマスター化されているので、特別な新鮮感はないのですが、最大の売りは6曲のボーナストラックでしょうね。ちなみに#8「Born to Touch Your Feelings」は以前のリマスター盤にも収録された日本人女性入りヴァージョンです。
#9 Suspender Love 「Tokyo Tapes」で披露されたアルバム未収録曲。ライブと違ってこちらは試作品臭が漂います。あまり乗り気でなかったのかも。
#11 Believe in Love これもデモ曲。完全に気が抜けた感じでKlaus Meineもまったく気合いが入っていません。
#12 Midnight Blues Jam これもデモ曲ですね。後半に聴かれるUlrich Jon Rothのソロはなかなかいいのですが…
#13 Blue Dream ボーカル抜きのインストナンバー。曲中盤からなぜか「Little Wing」的な展開になります。
#14 Born to Touch Your Feelings 元曲「Born to Touch Your Feelings」のデモ音源。もちろん気合いが入っていません。
というわけでボーナストラックに関しては、特筆するべき曲もなくあまり期待するとがっかりしてしまうのですが、既出音源のリマスター効果は抜群ですし、このアルバムを持っていない人は買っても損はしないと思われます。 ●Musicians Klaus Meine / vocal Ulrich Jon Roth / guitar,vocal Rudolf Schenker / rhythm guitar,vocal Francis Buchholz / bass Herman Rarebell / drums
●Numbers 1. Steamrock Fever 2. We'll Burn the Sky 3. I've Got to Be Free 4. The Riot of Your Time 5. The Sails of Charon 6. Your Light 7. He's a Woman - She's a Man 8. Born to Touch Your Feelings 9. Suspender Love 10. Busy Guys 11. Believe in Love 12. Midnight Blues Jam 13. Blue Dream 14. Born to Touch Your Feelings
Musician●Jimi Hendrix(guitar) Title●Freedom Atlanta Pop Festival(2015年) ■Amazonより購入
Jimi Hendrixの晩年期、1970年7月4日ジョージア州バイロンで開催されたAtlanta Pop Festivalでのライブ音源が正式リリースされました。もちろん、Atlantaの音源はこれが初出ではなく、その昔「Stages」というライブ4枚組ボックスに一部が収録されていました。今回、「Stages」に収録されなかった「Red House」「Message To Love」「All Along The Watchtower」「Freedom」「Hey Joe」の5曲が追加され、リマスター。一応、これでAtlantaに関しては音源的に“コンプリート”ということになります。
音源にしろ映像にしろ、Atlanta関連作品はウッドストックやワイト島に比べると何となく雑な扱いを受けているように感じていましたが、それは自身の体調が不調で、パフォーマンス的にもやや難があったからだと理解していました。実際、[Disc 1]を聴く限り出来としては正直いまひとつなんですよね。気合いが乗っていないというか魂が抜けているというか。長くファンを続けているとそんなことは織り込み済みでいまさら驚くことではないのですが、ジミヘンを聴いたことがない人にはお勧めできないな、というのが正直なところです。ところが[Disc 2]に移ると俄然調子が上がってきたようで、「All Along the Watchtower」「Freedom」「Foxy Lady」あたりはかなり聴き応えがあります。つられてBilly Coxもなかなかファンキーなベースを奏でています。
●Numbers [Disc 1] 1. Fire 2. Lover Man 3. Spanish Castle Magic 4. Red House 5. Room Full of Mirrors 6. Hear My Train a Comin' 7. Message to Love
[Disc 2] 1. All Along the Watchtower 2. Freedom 3. Foxy Lady 4. Purple Haze 5. Hey Joe 6. Voodoo Child (Slight Return) 7. Stone Free 8. Star Spanged Banner 9. Straight Ahead
いままであまり披露しなかった流麗な早弾きが聴かれる#4「Hypnotic」、リリカルな魅力満載の#6「The Last Stand」、アコギとParksとの絡みがあまりにも美しいラスト#9「Epilogue-The Rise」が個人的なお気に入りです。もちろん捨て曲は一切無しで、今年度ジャズギター部門でベストアルバム認定です。
●Musicians Mike Moreno / guitar Aaron Parks / piano Doug Weiss / bass Eric Harland / drums
●Numbers 1. Intro 2. The Hills Of Kykuit 3. Lotus 4. Hypnotic 5. The Empress 6. The Last Stand 7. Can We Stay Forever 8. Blind Imagination 9. Epilogue-The Rise
Musician●Jim Hall(guitar) Title●Live In Tokyo(2015年) ■HMVより購入
コンテンポラリー系ギターの始祖、Jim Hallの「Live In Tokyo」が完全版として再発売されたので早速入手しました。1976年10月28日、中野サンプラザでの音源を収録。来日公演としては3回目、自身のバンドを率いての来日は初めてだっだそうです。
Jim Hall / guitar Don Thompson / bass Terry Clarke / drums
というトリオ構成。このアルバム、アナログ盤で所有していましたが、プレイヤーを手放してしまってから疎遠になっていました。一度CD化されましたが気がついた時は廃盤でプレミア付きの高価に。でもってキング廉価盤シリーズから待望の再発売。またまた廃盤になること必至なので、気になる人は早めに入手のほどを。ちなみに日本の印象を綴った「Jazz Impressions Of Japan」も同時発売されています。
アナログ盤では契約の関係でカットされた大ヒット曲「Concierto De Aranjuez」と再発売時に「Concierto De Aranjuez」の身代わりにカットされた「Secret Love」が加わって、目出度く今回“コンプリート”ということです。
Jim Hallのライブ盤というと同時期の「Live!」(1976年)もあったりするのですが、まさに真正ジャズギターという感じの「Live!」と比較すると「Live In Tokyo」のほうは陽気なジャズおじさんのライブという印象をこれまでもっていました。ギターという楽器の奥深さにハマってしまうと、やっていることはどちらの盤もとんでもなく凄いのですが、こちらのほうは相変わらずテクニカルな部分をあまり感じさせません。いまになって思うと、それも芸のひとつなんだなと思えるようになってきました。
いろいろな楽しみ方ができるライブ盤なのですが、惜しむらくはジャケットデザイン。オリジナルデザインのドヤ顔アップのほうがしっくりくるのですが。それもこれもアナログ盤を手に凝視した時の既視感が脳裏にこびりついているからなのでしょうね。ちなみに「Jazz Impressions Of Japan」も再発売時のジャケットになっています。こちらもオリジナルデザインのほうがインパクトあったのですが…
アナログ盤のジャケットデザインがこれですね
Jazz Impressions Of Japanのジャケット新旧比較(上が旧、下が新)
●Musicians Jim Hall / guitar Don Thompson / bass Terry Clarke / drums
●Numbers 1. Billie's Bounce 2. Charlie Parker 3. Twister 4. Secret Love 5. Concierto De Aranjuez 6. Chelsea Bridge 7. St.Thomas
●Numbers 1. Serenade Imprevue 2. Le Point Du Jour 3. Turbulences 4. La Plaine 5. La Grange Aux Belles 6. Une Muse Danse 7. Jadis 8. Ciel Amer 9. Libellule
さて#1「Dialectes」からして「Live」で聴かれたDucretの強烈な雄叫びでスタート。強烈すぎます。鉄壁のリズム隊も一切の乱れ無し。Ducretのギターはやはりこのリズム隊でこそ生きるのではないかと思います。#2からブラス隊が加わるのですが、相変わらずDucretが完璧にコントロールしていて、これまた一切のモッタリ感が感じられず、まるで一線級のオーケストラのような構成美が感じられます。ラスト#5「Porteurs de lanternes」は再びトリオに戻り、鬼神のごとく弾きまくるDucretと破壊力満点のリズム隊との息を飲む攻防戦に完全ダウン。
決して聴きやすい音源とは言えませんし、かなり聴く者を選びますが、現代フリージャズに触れるうえでは欠かせない名演だと確信します。 ●Musicians Marc Ducret / guitar Bruno Chevillon / bass Eric Echampard / drums Fabrice Martinez / trumpet Christophe Monniot / sax Samuel Blaser / trombone
私はこの3枚を「アバクロ耽美系3部作」と僭越ながら勝手に名づけているのですが、やはり個人的には「M」がベスト。溶けてしまいそうな甘露な世界と現代ジャズ特有のスリリングな魅力が見事に融合されています。とりわけ#2「M」、#4「Flashback」でのAbercrombieとRichard Beirachとの激しくも美しいインタープレイの応酬、そして桃源郷を彷徨するかのごとく美しく歌い上げる#7「Pebbles」。やっぱり、何度聴いても名盤だよな~♪ ●Musicians John Abercrombie / guitar,mandolin guitar Richard Beirach / piano George Mraz / bass Peter Donald / drums
●Numbers [Disc 1] Arcade Recorded December 1978 Talent Studio,Oslo Engineer:Jan Erik Kongshaug Producer:Manfred Eicher
最近のコメント