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2015年10月

2015年10月31日 (土)

LAGE LUND / FOUR LIVE AT SMALLS(2011年)

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Musician●Lage Lund(guitar)
Title●Four Live At Smalls(2011年)
■Amazonより購入

最近個人的にお気に入りのノルウェイ出身の新進気鋭ギタリスト、Lage Lund(ラージュ・ルンド)ライブ音源です。相変わらず横道ばかりに行ってメーンストリームから逸脱している次第です。ところでこの人の名前表記ですが「ラーゲ」「ラージュ」の2通りがあるのですが、ここではHMVでの表記に合わせています。といってもHMVでも2通りの表記があったりするわけですが…。

2005年開催のモンクコンペディションで優勝した若き実力派のLage Lund。大きくはコンテンポラリー系ギタリストということでジャンル分けしていいと思うのですが、年齢のわりには妙に老成した雰囲気を漂わせたと思えば、ばりばりNYC裏街道的なプレイを披露したりと、引き出しが多いというか一筋縄ではいかない感じがします。そのあたりは聴き込んでいくことで判明してくるのではないかと思いますが、ちょっと正体不明という意味でMike Morenoと相通じるものがあります。思えばLundの存在を知ったのは、Mike Moreno繋がりでMatteo Sabattiniの「Msnyq」だったわけで、こういうのって知らないうちに繋がっていくのですよね。

というわけでメンバー紹介。
Lage Lund / guitar
Pete Rende / piano
Ben Street / bass
Marcus Gilmore / drums

2011年5月3日、4日、NYCの「Smalls Jazz Club」でのライブ音源になります。Ben Street(bass)はお馴染みですが、Pete Rende(piano)とMarcus Gilmore(drums)の2人はお初かな? いや、この周辺の音楽を聴いているとすれ違っている可能性が大なのですが、すみません、勉強不足、調査不足です。

というわけで拝聴。この人のライブは初聴きですが、ライブだからといってけっして熱くなるわけではなく、相変わらず端正でクールなナチュラルトーンでまとめています。一聴すると淡々とプレイしているように聴こえるのですが、ソロパートに突入してアドリブを展開するあたりになると、静かに静かに燃え上がります。それでいて聴く人間に熱さをほとんど感じさせないあたりが、Jim Hallを祖としてAbercrombieを父とするコンテンポラリー系の伝統芸なのでしょうね。

実際、注意深く聴いてみるととんでもないテクニシャンなのですが。いわゆる玄人受けするというか、メーンストリームの牙城を築き上げたMethenyあたりとは対極のところで勝負するプレイヤーです。

●Musicians
Lage Lund / guitar
Pete Rende / piano
Ben Street / bass
Marcus Gilmore / drums

●Numbers
1.  Strangely
2.  Circus Island
3.  Party of One
4.  All Across The City
5.  Intro to Soliloquy
6.  Soliloquy
7.  Circus Blues

2015年10月26日 (月)

John McLaughlin & The 4th Dimensionのライブに行ってきました

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Musician●John McLaughlin & The 4th Dimension
Date●2015/10/24 Sut.1st Stage
Place●Blue Note Tokyo

73歳にしてバリバリと弾きまくるジャズギター界の巨匠にして現人神、John McLaughlin。彼が率いる「John McLaughlin & The 4th Dimension」のライブに行ってきました。会場の「Blue Note Tokyo」は20数年前はちょいちょい行ってましたが、ほんとうにご無沙汰で移転したことすら知らなかったという浦島太郎状態。巨匠の生の姿を拝んだのも同地で行われた「Tokyo Live」(1994年)以来ですから21年ぶりという計算になります。94年来日ライブではJoey DefrancescoとDennis Chambersとのトリオ構成でした。

今回は新譜「Black Light」をひっさげての来日になりますね。フライヤーによると「Montreux Jazz Festival Japan 2015」の一環としての扱いだとか。

John McLaughlin / guitar
Gary Husband / keyboards,drums
Etienne Mbappe / bass
Ranjit Barot / drums

という鉄壁の面子。当方が選んだのは10月24日の17時スタートの1stステージ。体力的に不安を覚える初老世代にとっては、ありがたい時間設定です。会場時間の30分ほど前に現地に着くと、同世代とおぼしきオジサンがすでに10数名。ほとんどのオジサンが単独行動というのも特徴的ですね。先日のPat Martinoのライブのように団体客やわけがわからないまま連れてこられたような年輩女性の集団も見あたりません。つまりはコアなファンが中心ということです。Blue Note Tokyoは受付を済ませてしまえば会場時間まで出入り自由なので、列に長時間並ぶことなくこれもありがたいことです。

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さて、入場して座席はステージ向かってやや右寄りの前から3席目という絶好のポジションを確保。後は現人神の降臨を待つのみです。自由席は6人掛けテーブルの相席なんですが、同席はモノの見事にオジサンばかり。それは一向にかまわないのですが、私の隣席のかなり恰幅のいいオジサンが、よくもまあ食べること食べること。私などはハイネケン1杯しかオーダーしなかったのですが、そのオジサンはデカいポテトやらソーセージやらグラタンやらパスタやらと次々とオーダーし、ワインをがぶ飲みしながら汗だくになって食べまくっていました。そんなに空腹ならいったん外出して牛丼の特盛りでも食べてくればいいのに、と思ってしまう私はかなりの貧乏性ですが(笑)

開演時間の17時を5分ほど過ぎて、いよいよ現人神の降臨です。21年ぶりに見た巨匠はあと2年で後期高齢者に突入する人にはとても思えないほど、若々しく全身から活力が漲っています。加えて背も大きい。180センチ超えは確実です。ギターは最近愛用の「PRS」を使用。見るところかなり軽量のギターでワイヤレスで直接PAに飛ばしているようでした。向かって左からグラサン姿で黒手袋をはめたEtienne Mbappe、インド風の衣装をまとったRanjit Barot、巨匠、相変わらず目つきが悪いGary Husband。Ranjit Barotの右にはもう1台ドラムセットがあるのでGary Husbandがダブルドラム作戦にたくらんでいるのでしょう。

巨匠のMCでメンバー紹介が行われた後、いきなりHusbandがパーカッションを打ち鳴らし、負けじとRanjit Barotが激しい連打で応酬するという変則リズムの洪水に。すぐさま巨匠によるエッジが効きまくったギターが加わり、1曲目からボルテージは最高潮に。セットリストは新譜「Black Light」からが中心で、3曲目までは何とかチェックしていたのですが途中から曲順などはどうでもよくなってしまうほど、次から次へと驚きのパフォーマンスが目前で繰り広げられます。とにかくよく動き回るし、癖のあるフィンガリングには一分の衰えも感じられないし、フレーズは相変わらずへんてこだし、しかも感情が豊か。これが73歳のギタリストですか!と驚きの連続です。

亡き盟友パコ・デ・ルシアに捧げた「El Hombre Que Sabia」や師匠ラヴィ・シャンカールに捧げた「Panditji」、しっとりと歌い上げる「Gaza City」ももちろん披露。アルバムではアコギだった「El Hombre Que Sabia」はそのままエレキで弾きまくっていましたね。途中、Ranjit Barotによるインド風ラップやEtienne Mbappeの超絶ベースソロなど、見せ場がてんこ盛りという感じの1時間20分でした。最後は鍵盤から慌ただしく移動したGary HusbandとRanjit Barotのダブルドラムが炸裂する「Kiki」で圧巻の大団円。このダブルドラム作戦は個人的には懐疑的だったのですが、目の前でこんな凄いものを見せつけられると、考え方も180度変わってしまうから現金なものです(笑)。ところで、Husbandはキメのフレーズを弾くたびにドヤ顔で客席を見渡すのですが、あの怖い目つきはどうかと思うのでできるだけ見ないようにしていました(笑)。ふと、気がつくと隣席の大食漢オジサンは、巨匠のギターソロの時は食事を中断してステージに目を向けるのですが、Husbandの鍵盤ソロの時はひたすらパスタを頬張っていました。どうやらHusbandに対するスタンスだけは、私と同じのようです(笑)

これだけの大ベテランのライブとなると、少しは落ち着いてもかまわないと思ったりしますが、老いてなお盛ん。精力的なステージから年齢的なものは微塵も感じさせないどころか、ますます進化していました。

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2015年10月25日 (日)

かみむら泰一 / のどの奥からうまれそうなかんじ(2007年)

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Musician●かみむら泰一(tenor sax)
Title●のどの奥からうまれそうなかんじ(2007年)
■Amazonより購入

前々から気になっていたBen Monder(guitar)客演作をようやく入手しました。かみむら泰一さん(tenor sax)による「のどの奥からうまれそうなかんじ」(2007年)です。恥ずかしながらかみむらさんの存在は知らなかったのですが、サックスや小物による生音とPCやEffecterなどを駆使して音楽活動を行っている東京在住のミュージシャンだそうです。調べてみたら首都圏を中心に精力的なライブ活動を行っているようです。

というわけで完全にBen Monder目当てで入手したわけですが、参加メンバーがさりげなく豪華です。

かみむら泰一 / tenor sax,effects
Drew Gress / bass
Ben Monder / guitar on #1-3,#6-#8
鳥山タケ / drums
市野元彦 / guitar on #2-#3,#4-#5,#8

作風としてはNYCあたりが似合いそうなコンテンポラリー系ジャズなのですが、微妙にリズムを崩してきたりアブストラクトな一面を聴かせたりと、なかなか一筋縄ではいかない感じです。相変わらずBen Monderのギターはのらりくらりとつかみ所がなく、ヌエ的な立ち回りを見せていますが、かみむらさんもその点に期待したのでしょうね。タイトル曲の#4は曲途中から一転してインプロ的な展開になるあたりが面白く感じられました。

●Musicians
かみむら泰一 / tenor sax,effects
Drew Gress / bass
Ben Monder / guitar on #1-3,#6-#8
鳥山タケ / drums
市野元彦 / guitar on #2-#3,#4-#5,#8

●Numbers
1.  顔と顔
2.  La-Mi
3.  お魚
4.  のどの奥からうまれそうなかんじ
5.  Shrimping
6.  Kioka 2
7.  つまりまする
8.  Parents
9.  カエルのまたの下

2015年10月24日 (土)

BRAND X / LIVE FROM RONNIE SCOTT'S LONDON SEPTEMBER '76(1976年)

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Musician●Brand X
Title●Live From Ronnie Scott's London September '76(1976年)
■HMVより購入

ここに来て「Brand X」の発掘ライブ音源がちょいちょいリリースされのは一体どういう理由なのでしょうね。誰かが老後資金を蓄えようと私蔵音源を商品化しているのでしょうか。隠居状態のPhil Collinsはメンバーではありますが、権利関係はJohn GoodsalとPercy Jonesが握っていると思われるので、“犯人”は2人のうちどちらかだと思われます。私が最近入手したのは1977年11月28日、サンフランシスコライブと今回ご紹介する1976年9月、ロンドン「Ronnie Scott's Club」でのライブ音源です。

Robin Lumley / keyboards
John Goodsall / guitar
Percy Jones / bass
Phil Collins / drums

毎度お馴染みの70年代Brand Xの固定メンバーです。ちなみに77年の音源にはPhil Collinsは参加しておらずKenwood Dennardという人がドラムを担当しています。サンフランシスコライブが海賊盤に毛が生えたレベルで若干がっかりしていたところ、対してこちらの盤はなかなか上出来な内容で一安心。おそらくライン撮りなのでしょうね。音質もバランスもまずまずです。GoodsallとJonesファンなら“買い”でしょう。

余談ですがこのCDをiTunesでリッピングしたところ、ミュージシャン名、アルバム名、曲名とも全く無関係な情報が出てきてビックリ。音楽ジャンルを見ると「Disco」という表示。演奏時間もライナー情報と誤差の範囲を遙かに超えて食い違っています。「これは品違いだ!」と血圧が上がってHMVに対して怒りの返品依頼をしようとしました。まぁ、洒落で品違いの音源を聴いてやろうと思い直したところ、聴こえてくるのは間違いなく「Brand X」。仕方がないので手動で情報を修正しました。地下音源ならともかく、ふつうに市場で出回る商品でもこんなことがあるんですね。酷いよな~。

●Musicians
Robin Lumley / keyboards
John Goodsall / guitar
Percy Jones / bass
Phil Collins / drums

●Numbers
1.  Unorthodox Behaviour
2.  Malaga Virgen
3.  Improvisation(Aka Tito's Leg)

2015年10月18日 (日)

Michel Reis / Capturing This Moment(2015年)

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Musician●Michel Reis(piano)
Title●Capturing This Moment(2015年)
■Amazonより購入


ルクセンブルグ公国出身でNYCを拠点に活躍する鍵盤楽器奏者、Michel Reis(ミシェル・レイス)です。何となくレコメン情報を眺めていて推薦文に釣られて捕獲した物件であります。つまりは初聴きミュージシャン。何となくジャケ写から音が聴こえてきた感じもしたわけです。だから、ジャケットは大切なんです。2014年7月30日、31日、ドイツにて録音。

Michel Reis / piano
Stefan Karl Schmid / tenor sax,soprano sax,clarinet
Robert Landfermann / bass
Jonas Burgwinkel / drums

あれま。どなたも存じ上げません。名前からして欧州系のミュージシャンなのでしょうね。

全くの直感で入手したのですが、これが大正解。系統としては現代ジャズなのですが、主役のReisのリリシズムが迸るピアノと哀愁感あふれどこか陰を感じさせる楽曲の数々。NYCで活躍しているといいながらもすべてにおいて欧州的なテイストにあふれているんですよね。清涼感をまといつつダークな部分も存分に感じさせるあたりが憎いところです。おそらくECM系が好きな人は、ハマってしまうのではないかと思います。方向性はかなり異なりますが、個人的にはAntonio Faraoと並ぶ2015年の掘り出し物件認定です。

●Musicians
Michel Reis / piano
Stefan Karl Schmid / tenor sax,soprano sax,clarinet
Robert Landfermann / bass
Jonas Burgwinkel / drums

●Numbers
1.  Image #4
2.  Half Asleep Beneath The Stars
3.  Capturing This Moment
4.  Pastral
5.  Galapagos
6.  Image #1
7.  Forest Scene
8.  Fleeting Reality
9.  Twin Lakes
10. Image #3
11. Distant Constellations
12. Corner of the Sky
13. Image #7
14. Dry Winds And Dead Sands

2015年10月17日 (土)

SCREAMING HEADLESS TORSOS / CODE RED(2014年)

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Musician●Screaming Headless Torsos
Title●Code Red(2014年)
■Amazonより購入


David Fiuczynskiが率いる「Screaming Headless Torsos」による新譜をようやく入手しました。2014年リリース。スタジオ録音盤としては、「2005年」以来の9年ぶりになりますが、ユニット1st「1995年」からは19年ぶり。ほぼ10年に1作というペースを守っていることになりますが、どうせなら本作も1年先送りにして「2015年」にリリースすればよかったのに…と思ったりもします。このアルバム、何度も発売延期になっているうちに、すっかり忘れてしまい、慌てて入手した次第です。

David Ginyard / bass
Skoota Warner / drums
Gene Lake / drums
David Fiuczynski / guitar
Daniel Sadownick / percussions
Freedom Bremner / vocals
Akie Bermiss / additional keyboards
Chevy Chevis / additional background vocals
Tania Jones / additional background vocals
James Valemtine / additional rhythm guitar

Fiuczynskiと驚異のヨーデルヴォイスの使い手、ディーン・ボウマンとの関係性はもう途絶えてしまったようですね。「2005」でのボウマンの劣化ぶりは誰が聴いても明らかだったわけで、同アルバムにゲスト参加していたFreedom Bremnerがメーンヴォーカルへと昇格しています。相変わらずジャズ、ファンク、フリー、ロックなどが渾然一体となった無国籍サウンドは健在です。1曲目から尋常ならないハイテンションでただひたすら圧倒されます。ただ「1995」で受けた衝撃を考えると、音づくりもずいぶんと大人しくなったな~というのが率直な印象です。常識にかなってきたというか、逆に私の受け取り方が常識から離れてきているのか。どっちにしても、「1995」で感じられた圧倒的なパワーを比べてしまうと、Fiuczynskiもそろそろお年なのかなと思ってしまいます。

Freedom Bremnerもそつなく立ち回ってはいますが、絶頂期のボウマンのヴォーカルと比較してしまうと、パワー不足は否めません。無い物ねだりをしても仕方がないのですが、「1995」を上回ることはもう難しいのでしょうね。Fiuczynskiのギターと巧みなアレンジ、強力リズム隊の好サポートで救われているように思いました。

●Musicians
David Ginyard / bass
Skoota Warner / drums
David Fiuczynski / guitar
Daniel Sadownick / percussions
Freedom Bremner / vocals

●Numbers
1     Code Red
2     Brooce Swayne
3     Wizard Of Woo
4     Field Of Light
5     With You
6     Fried Tongue
7     Sideways
8     Running Black Water
9     Almond Pear In Love
10     Dead Christmas Trees
11     My Reasons For Silence

2015年10月12日 (月)

PAT MARTINO / JOYOUS LAKE(1976年)

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Musician●Pat Martino(guitar)
Title●Joyous Lake(1976年)
■ライブ会場で購入


巨匠Pat Martinoによるワーナー・ブラザース移籍第2作目で、病に倒れる前、最後のレコーディングになったアルバムです。1976年9月、アメリカはフロリダでレコーディングされています。

Pat Martino / guitar,synthesizers,percussions
Mark Leonard / bass
Kenwood Dennard / drums
Delmar Brown / piano,synthesizers

同年に録音された「Starbright」はWarren Bernhardt、Gil Goldstein、Mike Mainieri、Will Leeなどを従えた豪華面子での制作でしたが、今回は一転して無名のミュージシャンばかりを集め自ら「Joyous Lake」というユニット名を名乗ったうえでの録音になっています。このアルバム制作にあたって、Martino本人も臨んだオーディションには、ライル・メイズやヴィニー・カリウタなどの参加していたそうです。

前作「Starbright」制作から間髪入れずに作られたこのアルバムですが、サウンド面では大きく異なります。当時大流行したジャズ・フュージョンブームに乗っているという点では同じですが、楽曲・アレンジ面とも一本筋が通った硬派な作品に仕上がっています。これはドアーズやジョニ・ミッチェルなどを手がけた大物プロデューサー、Paul A.Rothchildの手腕による部分も大きいかと思われます。「Starbright」は作品としての統一感は皆無に等しくて聴く者を困惑させましたが、本作はがっつりとやりたいこと、表現したいことが伝わってきます。

サウンド自体は完全にジャズ・フュージョンなのですが、ギターは完全にMartino節のオンパレード。でも、一切の違和感は感じられません。バックとの抜群の一体感が強烈なグルーヴを生み出して、実に素晴らしい演奏に仕上がっています。この「Joyous Lake」が恒久的なユニットになったかどうかは、肝心の本人が病に倒れてしまったので、真相は不明です。タラレバになりますが、そのまま継続していたとしたらマハヴィシュヌ・オーケストラのような存在になったのではないでしょうか。

●Musicians
Pat Martino / guitar,synthesizers,percussions
Mark Leonard / bass
Kenwood Dennard / drums
Delmar Brown / piano,synthesizers

●Numbers
1.  Line Games
2.  Pyramidal Vision
3.  Mardi Gras
4.  M'wandishi
5.  Song Bird
6.  Joyous Lake

2015年10月11日 (日)

SCORCH TRIO WITH MARS WILLIAMS / MADE IN NORWAY(2011年)

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Musician●Scorch Trio
Title●Made In Noway(2011年)
■メーカーサイトより購入


フィンランド出身のフリー&爆裂系ギタリスト、Raoul Bjorkenheim率いる「Scorch Trio」のライブ音源です。アナログ盤のみの販売で限定500枚という当欄好みのレア物件。ちなみに私のシリアルナンバーは500枚宙74番です。2011年5月23日、オスロにあるカフェ(!)および2011年5月25日、Bergenという場所でのライブ音源です。それぞれ1枚ずつ収められており、この手のフリー系ミュージシャンとしては破格のアナログ2枚という圧倒的な物量です。

Raoul Bjorkenheim / guitar
Mars Williams / tenor,alto,soprano sax,flute,toys
Ingebrigt Haker Flaten / bass
Frank Rosaly / drums

という面子。ノルウェー出身のダブルベース奏者で「Atomic」のメンバーIngebrigt Haker Flatenは、「Scorch Trio」のレコーディングにも参加歴があります。Frank Rosalyはアメリカ出身の若手ドラム奏者のようですが、Ingebrigt Haker Flatenとの交流から今回のライブに参加した模様です。Scorch Trioに招かれた形になっているサックス奏者、Mars Williamsは今年御歳60歳というベテランで、NYCを拠点に活躍するフリー系ミュージシャンで、位置どりとしてはJohn Zorn関連人脈にあたるようです。どっちにしてもかなりのアンダーグラウンドぶりが感じられる人選です。

「Scorch Trio」のライブ音源は今回が初めてですが、スタジオにおいても編集作業無しの即興演奏が主体なので、彼らの意識としてはスタジオと会場との違いでしかないのでしょう。いきなりBjorkenheimのギターが火を吹くような雄叫びをあげ、リズム隊が稼働し始めるとあとはもうカオスの世界。この3人だけでも迫力満点なのですが、Mars Williamsによるフリーキーなブロウが加わることによって、さらに混迷の度を深める形に。

全曲が完全フリーなのでかなり聴く者を選ぶ作品であることは間違いないのですが、決して冗漫になることなく異常なまでのハイテンションで最後まで疾走する圧巻のプレイからは、むしろある種の爽快感さえ感じさせるから不思議です。一聴するとハチャメチャなようでいて、実は細部の部分にまで完璧にコントロールされたインプロの嵐は、相当なインテリジェンスを備えていないとできるものではありません。北欧フリーファンは必聴といえるかも。

●Musicians
Raoul Bjorkenheim / guitar
Mars Williams / tenor,alto,soprano sax,flute,toys
Ingebrigt Haker Flaten / bass
Frank Rosaly / drums

●Numbers
[Side A]
1.  Sloo
2.  Cosl

[Side B]
1.  Loos
2.  Oslo

[Side C]
1.  Genber
2.  Enberg

[Side D]
1.  Bergen

2015年10月10日 (土)

TETRAGON / NATURE(1971年)

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Musician●Tetragon
Title●Nature(1971年)
■Yahoo!オークションで入手


先日NHK-FMで放送された「プログレ三昧」。私は雑用に追われてほとんど聴けなかったのですが、いかにもこの番組が好みそうな物件をご紹介します。ご存じ「カケハシレコードさん」レコメンドで、ドイツの4人組ジャズロックバンド「Tetragon」による唯一の作品「Nature」です。1971年リリース。元は「Trikolon」というバンド名で活動していたそうです。

Hendrik Schaperというオルガン奏者がバンドキーマンのようで、オルガンを中心に据えた古式ゆかしいジャズロックという塩梅の楽曲が連なっています。いきなりJ.S.バッハの「フーガ」を取り入れたというか、そのままプレイしてしまうという#1「Fugue」には度肝を抜かれますが、全体的にはキース・エマーゾン率いる「ナイス」から華を抜いたような感じの楽曲が中心です。ギターもジャズ寄りというか、もろにブルースペンタトニックなので、いわゆるジャズロック感はあまり伝わってきません。

時に疾走感あふれる曲もあるにはあるのですが、これといった決定打がないというか、盛り上がりに欠けるあたりが「B級バンド」の域を出ない理由ではないでしょうか。端々からドイツ人らしい生真面目さは伝わってくるのですが、ロックとしての面白味という意味ではいま一つなんですよね。

ボーナストラックの#6「Doors In Between」は1972年2月12日、ドイツでのライブ音源ですが、こちらは結構盛り上がっていて。それなりに聴き応えがあります。未聴ですが「Stretch」という発掘アルバムが出回っているようです。

●Musicians
Hendrik Schaper / organ,clavinet,cembalet,piano,vocal
Jurgen Jaehner / guitar
Rolf Rettberg / bass
Joachim Luhrmann / drums

●Numbers
1.  Fugue (J.S.Bach)
2.  Jokus
3.  Irgendwas
4.  A Short Story
5.  Nature
Bonus Track
6.  Doors In Between

2015年10月 4日 (日)

TRIBAL TECH / THICK(1998年)

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Musician●Tribal Tech
Title●Thick(1998年)
■ディスクユニオンで購入


Scott Henderson(guitar)とGary Willis(bass)による双頭バンド「Tribal Tech」の通算8枚目のアルバムです。

Scott Henderson / guitar
Gary Willis / bass
Scott Kinsey / keyboards
Kirk Covington / drums

というアルバム「Illicit」以降の“不動の面子”なのですが、このアルバムでは曲を持ち寄ってリハを重ねながら一緒にレコーディングするという通常のスタイルから、4人それぞれが単独でスタジオに籠もったうえで録りためたインプロヴィゼーションを編集作業で繋ぎ合わせるという手法に変更されています。ライナーによればテープは丸3日間回し続けられたとのことで、それをHendersonとWillisがフェデックス便でやりとりしながら完成させたとのこと。今だったら圧縮ファイルをメールで送るかクラウド上のやり取りなのでしょうね。この手法はウェザー・リポートやザヴィヌル・シンジケートで好んで使われていたそうで、スコヘンがザヴィヌル・シンジケート在籍時に学んだとのことです。

というわけで、このアルバムもリリース当初から何度も聴き直しているわけですが、何とも難解すぎて彼らのアルバムの中では個人的に最も評価が困難な作品です。一度も顔を合わせることなく、データとデータとの交換によって一つの作品に仕上げるという手法は特段珍しいことではありませんが、果たして彼らにとってこれが最善の策なのかと考えるとその部分で非常に引っかかるのですよね。確かに複雑な編集作業から生み出された音源は興味深く、面白いと感じられる箇所が随所にあります。でも、彼らの本来の魅力はそこではないような気がして仕方がないのです。

ここからは完全に個人的な見解ですが、鉄壁のリズム隊に乗ってスコヘンの自由奔放すぎるギターソロが縦横無尽に暴れまくる豪快さこそ、彼らの原点ではなかったのではないでしょうか。その意味では、このアルバムからはそんな豪快さはほとんど感じられません。確かにスコヘンはいつものようにギターを弾きまくっていますし、ほかのメンバーのプレイからもこれまでと特段変化した印象は受けません。しかし、バンドとしての一体感というか、生のインプロの応酬から生まれるグルーヴ感は残念ながら希薄だと言わざるをえません。丹念に作り込まれた作品が往々にして陳腐に感じられてしまうことがあります。このアルバムも策に溺れてしまっていると書いたら言い過ぎでしょうか。

●Musicians
Scott Henderson / guitar
Gary Willis / bass
Scott Kinsey / keyboards
Kirk Covington / drums

●Numbers
1.  Sheik Of Encino
2.  Party At Kinsey's
3.  Jalapeno
4.  Clinic Troll
5.  Thick
6.  You May Remember Me
7.  Slick
8.  Somewhat Later
9.  What Has He Had?

2015年10月 3日 (土)

GONG / GAZEUSE!(1977年)

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Musician●Gong
Title●Gazeuse!(1977年)
■Amazonより購入


かなり昔にレビューした物件です。再掲載というより最近、再発売されたリマスター盤のレポートです。巨匠Allan Holdsworth参加作品の中でも特異な位置づけにある、フランスのプログレバンド「Gong」の「Gazeuse!」です。オリジナルは1977年リリース。日本でのCD化は1989年以来ということで、旧規格盤は音質面で結構不満があったので、リマスター盤をこのたび再購入しました。

詳細は前回レヴューをご覧になっていただくとして、驚くべきが抜群のリマスター効果です。「Gong」の魅力は何といっても2台のヴィブラフォンによる幻想世界と4人の打楽器奏者による乱打が生み出す強烈なポリリズム。やっぱり良好な環境で聴きたいですよね。というわけで、この再発盤、音質の良さは当然として音の分離もしっかりしているので、「Gong」の魅力がしっかりと再現されています。

もちろん巨匠Holdsworthのウネウネもばっちりと堪能できます。時系列的にはAlphonso Johnsonの仲立ちで渡米。イギリス人ギタリストを求めていたTony Williamsの「Tony Williams New Lifetime」に参加。「Believe It!」(1975年)と「Million Dollar Legs」(1976年)でプレイしつつ、CTIでいわく付きの「Velvet Darkness」(1976年)を録音しています。また、アルバイト感覚で(?)、黒人女性歌手Esther Phillipsの「Capricorn Prince」(1976年)のレコーディングに参加していますが、ここでJeff Berlinと出会っています。しかしながら、「Velvet Darkness」の失敗で失意のもと、1976年夏にロンドンに戻っています。そこでVirgin Recordの友人からバンド参加を要請されたという流れのようです。

ちなみにHoldsworthは#2「Night Illusion」と#5「Shadow Of」の2曲を提供。「Shadow Of」はかの「Velvet Darkness」の焼き直しですが、「Velvet Darkness」自体が本人にとって不本意だったための意趣返し的な位置づけなのかもしれません。

今回初めて知ったのですが、タイトルが「炭酸水」を意味するこのアルバム、アメリカでは「Expresso」とタイトルとジャケットデザインを変えて発売されたとか。そんな経緯から次作「Expresso Ⅱ」になったそうです。

●Musicians
Mireille Bauer / vibraphone,marimba,glock,toms
Mino Cinelou / congas,african bell-gong,cuica,triangle,maracas,talking drums,temple blocks
Allan Holdsworth / guitars,violin,steel guitar
Didier Malherbe / sax
Benoit Moerlen / vibra
Pierre Moerlen / drums,vibra,marimba,glock
Francis Moze / fretless bass,gong,piano

●Numbers
1.  Expresso
2.  Night Illusion
3.  Percolations Pt 1
4.  Percolations Pt 2
5.  Shadow Of
6.  Esnuria
7.  Mirelle

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