Chris Potterの新境地「Underground」
Musician●Chris Potter(tenor sax)
Title●Underground(2006年)
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NYCを拠点に活躍するサックス奏者Chris Potter(クリス・ポッター)が2006年にリリースした“問題作”です。参加メンバーはWayne Krantz(guitar)、Craig Taborn(keyboards)、Nate Smith(drums)のカルテットが基本で、盟友Adam Rogersは2曲に参加しています。つまりは「ベース奏者」不在の変則構成ということですが、鍵盤楽器が上手いことフォローしているので、ベース不在をあまり意識させません。
「Follow the Red Line」(2007年)もけっこう尖った作風でびっくりした記憶があるのですが、こちらもかなりのぶっ飛びぶりです。聞けばこの「Underground」ユニット自体がChris Potterにとっては別働隊にあたり、「4ビート」を一切排した音楽をやりたかったそうです。確かに「4ビート」は出てきませんね。言ってみれば「変則リズムを基調としたハードフュージョン」という表現が相応しいかもしれません。Steve Colemanを祖とする「M-Base的サウンド」の新しい形と言ってもいいかと思います。ジャズから入る人にとっては違和感を感じるかもしれませんが、ロックやファンクから入った人にとってはドンピシャとハマる可能性が大です。
この手の音楽は大きく好き嫌いが分かれると思うのですが、個人的にはグリグリの「○」。横ベクトルではなく縦から攻め立ててくる変則リズムに乗ってPotterの激しいブロウが五臓六腑を刺激しまくります。このアルバムの最大の肝であるWayne Krantzのカッ飛んだフレーズも、このアルバム限定という意味では非常にマッチしています。釣られる形でAdam Rogersも「Lost Tribe時代」を思わせるような尖ったフレーズを連発してくれているのはご愛敬かもしれません。ラストの「Yesterday」はビートルズのカバーですが、いい意味でのクールダウンという位置づけなのでしょうか。
●Musicians
Chris Potter / tenor sax
Wayne Krantz / guitar
Craig Taborn / keyboards
Nate Smith / drums
Adam Rogers / guitar on #6,#9
●Numbers
1. Next Best Western
2. Morning Bell
3. Nudnik
4. Lotus Blossom
5. Big Top
6. The Wheel
7. Celestial Nomad
8. Underground
9. Yesterday
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コメント
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私Chris Potter知ったのは奇天烈音楽士さんのblog経由だったように記憶しています(いつもありがとうございます)。この版も"Follow the Red Line"も、1コードファンクや電化マイルスのようなリズムと音響のパワーと、M-BASEやブルックリン派の技巧的な作曲術・構成力を見事に"fusion"させていて、本当にホレボレします。「電化ジャズはどう進化すべきだったのか」というテーマに真正面から取り組んで、素晴らしい成果を出しているって感じですね。
ECMのSirensもとてもよかったですが、やっぱりUndergroundのほうがビリビリ来るかな!
投稿: mucho | 2013年7月29日 (月) 08時21分
muchoさま
コメントありがとうございます。
私はAdam Rogersから繋がっていったクチなので、確かなことは言えませんが、それこそ掃いて捨てるほどたくさんのミュージシャンがうごめくNYCジャズシーンで、これだけ第一線を張っていること自体が奇跡的ではないかと、あらためて思います。
なるほど、確かにマイルズが突きつけた「電化ジャズ」の現代形として、しっかりと答えを出していると思います。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2013年8月 5日 (月) 11時00分