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2013年6月29日 (土)

Fuzeに苦手意識がある人には…上原ひろみ5th「Beyond Standard」

R0012357
Musician●上原ひろみ(piano,keyboards)
Title●Beyond Standard(2008年)
■ディスクユニオンで購入


もはや世界的な存在になってしまった上原ひろみの5th「Beyond Standard」をあらためて聴き直しています。前作「Time Control」から怪物David Fiuczynskiと行動を共にしはじめたことで、旧来のファンから戸惑いの声が上がりました。

いわく「これはジャズなのでしょうか」
いわく「ギターが存在しなくても成立する」

おそらく前々作「Spiral」とは真逆の作風だったので、起こりえた拒否反応だったのでしょう。確かにピアノ中心の音づくりを期待した人にとっては、David Fiuczynskiの変態ギターは劇薬に近いものがあります。Fuzeのギターを初めて聴いた人も多かったでしょう。喧しいギターがピアノを邪魔と捉えられても無理もないでしょう。しかし、ここで忘れてはいけないのは、上原ひろみはセルフプロデュースのミュージシャンであるということ。おそらく「Time Control」ではバンド形式の音楽に挑戦したかったのだと思われます。そして、熟慮を重ねてギター奏者としての適任者がFuzeだったのです。上原ひろみをジャズという枠組みで考える人にとっては、なるほど違和感を感じるかもしれませんが、「上原ひろみの音楽」と理解すればと思うわけです。

というわけで前作に続き懲りずに(?)Fuzeを起用したこの「Beyond Standard」はタイトル通り、彼女にとってのスタンダードに挑戦した作品です。彼女にとっては「Jeff Beckまでもがスタンダードなのか」という個人的なというか年齢的なギャップもないわけではありませんが、こればかりは仕方がありません。David Fiuczynski(fretted and frettless guitar)、Tony Grey(bass)、Martin Valihora(drums)というバンド形式で臨んでいます。

やや気負いのようなものが感じられた前作との比較で聴いてみると、バンドとしてのまとまりが出てきた分だけ長足の進歩と安定感があります。それにしても、Fiuczynskiの「ハズシ方」は相変わらず絶妙で、予定調和を徹底的に嫌う作風はここでも際立っています。Fuze自身「マイクロトーン」(微分音)を追究していた時期に重なり、フレットレスでしか再現できない「ハズシ」を随所でぶっ込んでくることで、バンドに対してえも言われない緊張感をもたらしています。その緊張感を受けて、見事に切り返す上原ひろみももちろん尋常ではありません。しかも、喜び勇んで切り返すのが彼女の最大の魅力です。

Fuzeのギターを「音程がズレている」と解釈してしまう人は、間違いなくこのアルバムを好きになることはないと思われますし、「ギターなしでも成立する」と思ってしまうのでしょう。もっと自由に聴けばいいのに…自由性こそジャズの醍醐味では、というのはそれこそ余計なお節介ですが。

●Musicians
上原ひろみ / piano,keyboards
David Fiuczynski / fretted and frettless guitar
Tony Grey / bass
Martin Valihora / drums

●Numbers
1.  Intro: Softly As In a Morning Sunrise
2.  Softly As In a Morning Sunrise
3.  Clair De Lune
4.  Caravan
5.  Ue Wo Muite Aruko
6.  My Favorite Things
7.  Led Boots
8.  XYG
9.  I've Got Rhythm

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