Holdsworth本人名義のベスト盤「Against the Clock」
Musician●Allan Holdsworth(guitar)
Title●Against the Clock(2005年)
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この春先に引退説が流れたAllan Holdsworth(アラン・ホールズワース)ですが、その後の動向はどうなったのでしょうか。いくら遅れてきた天才とはいえども年齢的には60代半ば。普通だったら隠居生活に入っても不思議ではないお年頃なわけで、これも致し方ないのでしょうね。この音源も発売と同時に入手しながら長い間放置プレイにしていたものです。最近になって聴き直している次第です。某巨大通販サイトのレビューでは糞味噌にこき下ろした記憶がありますが、あれから7年、私も少しは大人になったので印象も変わるのではないかと思った次第です。
本人プロデュースとしては初のベスト盤としてそこそこ話題になった盤ですが、フォンの間では賛否両論であったことも事実です。いうまでもなく「シンタックス容認派」と「シンタックス拒絶派」との仁義なき代理戦争であったわけです。2枚組のCDは[CD1]がギターアルバム、[CD2]が件のシンタックスアルバムとして編纂されています。[CD2]には未発表曲が2曲、[CD 2]の#1「Tokyo Dream」はアルバム「Wardenclyffe Tower」の日本盤限定ボーナストラックとして収められたもので、輸入盤しかもっていない人にとってはこちらも「お初」になります。
アルバム「Matal Fatigue」(1985年)にはじまり「Flat Tire」(2001年)までそれぞれ2~3曲がチョイスされていますが、本人セレクトだけにそれなりの説得力が伝わってきます。特にギターアルバムである[CD 1]はあらためて聴き直してみてその素晴らしさを再認識させられた次第です。問題は7年前にあれほど毛嫌いしていた[CD 2]、つまりシンタックスアルバムですがやはりどうしても受け入れられない壁を感じてしまいます。これはいろいろあるのですが、いちばん大きな理由として弦楽器であるギターの音をシンタックを経由してわざわざ鍵盤楽器的な音に変換することに、意義というか意味を見い出せない点にあるのです。いや、正確に表現するとうまい具合に鍵盤楽器的な音に変換できたとして、本職の鍵盤楽器と比べてどうなのよ、という疑問がついて回るのです。これはHoldsworthの売りのひとつである「鍵盤楽器的なヴォイシング」とはまったく「別物」で、あれはギターが奏でるヴォイシングだからこそ衝撃的だったと思うのです。すみません、まだ大人になりきれていません。
と文句を言いつつ[CD 2]に収められたボーナストラック2曲について。
#12 Let's Throw Shrimp
なにやらジャズファンク的な面白い曲です。バックはバックはJimmy Johnson(bass)、Chad Wackerman(drums)という旧知の仲なので、御大も実に伸び伸びとプレイしています。シンタックス1本ではなくギターも併用しているからなのでしょう。皮肉にも[CD 2]ではいちばん好きな曲です。
#13 Shenandoah
御大としては珍しくシングルノートによるベタなメロディー。ひねりもなにもないベタさに驚いた次第です。妙に牧歌的で何やら学校の放課後に流れる校内BGMのようです。いや、そんなことはないか。
それにしても、ベスト盤を謳いながら「I.O.U」や「Road Games」という重要作品からのセレクトが皆無であることに大きな疑問を感じます。おそらくややこしい契約上の問題があったと思うのですが、コアなファンにとっては首を捻らざるを得ないのです。スリーブにはエディ・ヴァン・ヘイレンとの貴重な2ショットが載っています。
●Musicians
Allan Holdsworth / guitar,synthaxe
Alan Pasqua / keyboards
Billy Childs / keyboards
Steve Hunt / keyboards
Bob Wackerman / bass
Gary Willis / bass
Jimmy Johnson / bass
Skuli Sverrisson / bass
Dave Carpenter / bass
Chad Wackerman / drums
Gary Novak / drums
Gary Husband / drums
Kirk Covington / drums
Tony Williams / drums
Vinnie Colaiuta / drums
Naomi Star / vocals
Rowanne Mark / vocals
●Numbers
[CD 1]
1. Tokyo Dream [WardenclyffeTower-JapanVersion(93)]
2. Sphere of Innocence [WardenclyffeTower(92)]
3. Rukukha [Hard Hat Area(94)]
4. Low Levels High Stakes [Hard Hat Area(94)]
5. How Deep Is The Ocean [None Too Soon(96)]
6. Nuages [None Too Soon(96)]
7. Devil Take The Hindmost [Metal Fatigue(85)]
8. Home [Metal Fatigue(85)]
9. Peril Premonition [Secrets(89)]
10. The Sixteen Men of Tain [The Sixteen Men of Tain(00)]
11. Mr.Berwell [Atavachron(86)]
12. Looking Glass [Atavachron(86)]
13. Pud Wud [Sand(87)]
[CD 2]
1. Spokes [Secrets(89)]
2. Distance vs. Desire [Sand(87)]
3. Mac Man [Sand(87)]
4. Against The Clock [Wardenclyffe Tower(92)]
5. Eeny Meeny [Flat Tire(01)]
6. Secrets [Secrets(89)]
7. Bo Peep [Flat Tire(01)]
8. Postlude [Hard Hat Area(94)]
9. All Our Yesterdays [Atavachron(86)]
10. Eidolon [The Sixteen Men of Tain(00)]
11. Sundays [With A Heart In My Song(92)]
12. Let's Throw Shrimp [bonus]
13. Shenandoah [bonus]
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