あらためてHoldsworth & Beck「The Things You See」を聴き直す
Musician●Gordeon Beck(piano)
Title●The Things You See(1980年)
■ディスクユニオンで購入
最近、公私ともなかなか落ち着かない状態が続いているためか、漁盤生活がなかなか思うようにいきません。新規物件もネットに頼るばかりで、実際にお店を訪問して物色するという漁盤生活の基本すら覚束ない状態です。とはいえ、先日ふと空いた時間があったのでわがホームグラウンドのひとつである「ディスクユニオン横浜西口店」を訪問。このお店は若干HM系とヒップホップ系に強いとされているようですね。
そこで確保したのが、Holdsworth & Beck「The Things You See」(1980年)です。その昔、ジムコという国内メーカーから「Sunbird」(1979年)とのカップリング盤が出ていましたが、「Sunbird」は一部収録曲が抜けていたりと中途半端な商品でした。「The Things You See」単体CDとしては数年前にディジパック仕様で再発売された情報はキャッチしていましたが、ここにきてやっと確保成功ということです。
このアルバムの説明の前に、当時のAllan Holdsworthの足跡を若干おさらいします。1979年にBruford「One Of A Kind」に参加した後、Holdsworthはかつての同僚Gordon Beckのユニットに参加します。そこで制作されたのが前述「Sunbird」。ドラムにベテランAldo Romano、ベースにJean-Francois Jenny-Clarkというカルテット構成でした。その後、Gongの「Time Is Key」に参加した後、再びGordon Beckとのレコーディングに臨みます。1979年12月から翌1980年1月にかけてパリで録音されています。今回はベース、ドラム抜きのデュオ構成。JMSというフランスのマイナーレーベルからリリースされ、日本では1982年にディスクユニオン系レーベル「DIW」から発売されています。このアルバムに参加後、カール・ジェイキンス主導のSoft Machine最後の作品「Land Of Cockayne」(1980年)にゲスト参加しています。
久しぶりにこの音源を聴き直して感じたのですが、やはり「I.O.U.」の原点らしきものが随所に感じられます。収録曲は「イギンボトムズレンチ」時代のものを焼き直したりしているのですが、ギタープレイ自体は「I.O.U.」の萌芽を感じさせるのです。
#1 Golden Lakes
Holldsworthのプロデビュー「イギンボトムズレンチ」(1969年)の収録曲。自身の曲だけに何ら迷いもなくアコギが縦横無尽に流麗なソロを生み出しています。考えてみれば、Holdsworthが本格的にアコギに取り組んだのはこのアルバムが最初ではないでしょうか。
#2 Stop Fiddlin
Gordon Beckによる曲。Holdsworthの出番はありません。1985年にHoldsworthが二度目の来日公演を果たしたとき、ツアーメンバーとしてGordon Beckも参加しましたが、この曲をさらりと披露していました。このアルバムを聴いた観衆だけに贈られたさりげないプレゼントという感じだったことを記憶しています。
#3 The Things You See
「I.O.U.」にも収録されている曲。いわゆるサビの部分から入るので戸惑いますが、やがて始まるGordon Beckとの掛け合いは「The Things You See」の世界そのもの。途中からアコギからエレキに代わり、曲後半では例のウネウネを披露しています
#4 Diminished Responsability
このアルバムの最大の聴きどころ。静かな立ち上がりから一転して激しいインタープレイの応酬が始まります。ややフリー気味のギターソロと変幻自在に支えるGordon Beckのピアノは見事の一言。曲の流れのなかには2人の対話と静かな物語が感じられます。1980年代にHoldsworthが関わった曲のなかで最も好きな曲のひとつです。
#6 At The Edge
「I.O.U.」収録「The Things You See」の前半部分を思わせるというか、原型になった曲。この曲では全編エレキを使っていますが、特筆すべきはHoldsworthがボーカルをとっているという点。Holdsworthのボーカル自体は「イギンボトムズレンチ」でも聴かれますし、「Soft Machine」や「UK」時代でもさりげなくバックボーカルをとっていました。しかし、きちんと歌ったという意味ではこの曲が空前にして絶後といえるでしょう。確か小川銀次氏が「John Wettonを思わせる哀愁がこもった歌唱」と評していた記憶があります。確かに言われてみればそんな感じがします。
最後に。このアルバムのもう一人の主役、Gordon Beckですが昨年(2011年)に亡くなっていたそうです。迂闊にもつい最近知りました。生Gordon Beckを拝んだ立場としては、何とも無念です。この場をお借りしましてお悔やみ申し上げます。合掌
●Musicians
Gordon Beck / piano,electric-piano
Allan Holdsworth / guitars
●Numbers
1. Golden Lakes
2. Stop Fiddlin'
3. The Things You See
4. Diminished Responsability
5. She's Lookin',I'm Cookin'
6. At The Edge
7. Up Country
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