Cream解散直後のJack Bruce「Things We Like」
Musician●Jack Bruce
Title●Things We Like(1968年)
■ディスクユニオン関内店で購入
「Cream」の中心メンバーJack Bruce(ジャック・ブルース)がグループ解散宣言後の1968年8月にレコーディングした、実質的には初リーダー作です。正式リリースは1970年。参加メンバーはJohn McLaughlin(guitar)、Dick Heckstall-Smith(sax)、Jon Hiseman(drums)という英国ジャズロック界の重要人物の名前がずらり。1968年8月という時期は、まだCreamとしてのツアーを行っていた頃の話で、かたやブルースロック、かたやジャズとJack Bruceの音楽的な二面性が伺える音源ということになります。時間をやや過去に戻してみれば、Jack Bruce自身がグラハム・ボンドのオーガニゼーションでジャズをプレイしていたときのボンド抜きの構成ということになります。
以前の記事でも触れましたが実はこのアルバムには興味深いエピソードがあります。英国ジャズロック界で頭角を現しつつあった若きマクラフリンは、マイルス楽団を脱退し初リーダー作の準備に取り組んでいたTony WilliamsからLifetime参加のオファーを受けます。彼にとっては千載一遇のチャンスです。ところが慢性的に金欠状態だったマクラフリンは渡米のお金すら持っていなかったそうです。そんなマクラフリンの窮状をみかねたかつての同僚であるJack Bruceはこのアルバム制作にマクラフリンを誘います。本来、このアルバムはギター抜きのトリオ構成で制作される予定でしたが、男気あふれるJack Bruceはマクラフリンのポジションを用意すると同時に、ギャラによって渡米資金まで用立てたわけです。なんとも「ふかいい話」ではありませんか。もしJack Bruceの誘いがなければあの「Emergency!」(1969年)は世に送り出されなかったわけですし、マイルスの「In A Silent Way」や「Bitches Brew」「Jack Johnson」も当然違ったものになっていたでしょう。となるとマイルスの勧めで結成したMahavishnu Orchestraも陽の目を見なかったかもしれません。Jack Bruceがロック界のみならず、ジャズロック界でも睨みをきかせているのはこんなエピソードがあるからなのかもしれません。のちにJack Bruce自身が「第2期Lifetime」に加入したのは、そんな話があったからではないかと。
この音源でのいちばんの聴きどころは#5「Hckhh Blues」。鬼神のごとく弾きまくるマクラフリンのギターからは「これで稼ぎまっせ~!」という執念が伝わってきます。
●Musicians
Jack Bruce / bass
John McLaughlin / guitar
Dick Heckstall-Smith / sax
Jon Hiseman / drums
●Numbers
1. Over The Cliff
2. Statues
3. Sam Enchanted Dick Medley
4. Born To Be Blue
5. HCKHH Blues
6. Ballad For Arthur
7. Things We Like
8. Ageing Jack Bruce, Three, From Scotland, England
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