坂本龍一との邂逅。渡辺香津美の「Olive's Step」
Musician●渡辺香津美(guitar)
Title●Olive's Step(1977年)
■「アーリー・イヤーズ・ボックス」より
渡辺香津美「アーリー・イヤーズ・ボックス」より個別紹介です。初期渡辺香津美の人気を決定づけたといえるのがこの「Olive's Step」です。1977年6月にコロンビアスタジオで録音されています。当時はまだ「フュージョンミュージック」という言葉が定着しておらず「クロスオーバー」などと呼ばれていた記憶があります。当時のクロスオーバー専門レーベル「Better Days」からリリース。参加メンバーがやたらと豪華なのも新レーベル立ち上げに向けた意欲の表れではではないでしょうか。前半4曲(昔で言うA面)には坂本龍一、後藤次利、つのだヒロというスター軍団構成。後半3曲は松本弘(piano)、井野信義(bass)、倉田在秀(drums)、横山達治(percussions)というレギュラーメンバー構成。その後、後藤次利は「おにゃんこ路線」へ、つのだヒロはつのだ☆ひろと改名し「メリー・ジェーン路線」へと進みます。
なかでも#2「Innner Wind」は名盤「Kylyn-Live」でトップを飾った名曲。しかし「Kylyn-Live」のときほどの完成度にはまだ至らずいささか荒っぽさと手探り感は否めませんが、その生々しい野趣味が意外にはまります。思えばこのアルバムでの坂本龍一との出会いが後の「YMO」での合体に繋がっているわけで、日本の音楽史を語るうえで欠かせない名演とも言えます。
いま冷静に聴き直してみると、前半4曲(いわゆるA面)のスター軍団による演奏は急造バンドの宿命からか若干まとまりに欠け、ドタバタ感は否めません。特につのだヒロはミスキャストの感がします。渡辺香津美の本来の実力が発揮されるのは後半3曲(いわゆるB面)に移ってからで、旧知のメンバー(井野信義と倉田在秀)と共に繰り出されるグルーヴ感はやはり素晴らしいものを感じます。強力リズム隊をバックに渡辺香津美のギターもまるで水を得た魚のように自由自在に歌い上げています。特に凄まじいソロの連発が聴ける#5「SKY」は隠れた名曲です。世相と資料価値を感じるのは前半、本来の渡辺香津美を知るためには後半という「聴き分け」が必要かもしれません。
●Musicians
渡辺香津美 / guitar
坂本龍一 / electric-piano,synthesizer
後藤次利 / bass
つのだヒロ / drums
松本弘 / piano
井野信義 / bass
倉田在秀 / drums
横山達治 / percussions
●Numbers
1. Olive's Step
2. Inner Wind
3. Mellow Sunshine
4. Movin' Nozzle
5. Sky
6. Little Apple
7. Dinti
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