Matching Mole2作目にしてラストアルバム「Little Red Record」
Musician●Matching Mole
Title●Matching Mole's Little Red Record(1972年)
■ディスクユニオンで購入
イギリス出身のサイケ系ジャズロックグループ「Matching Mole」の2ndです。1stはかなりジャズロック志向がが強かったのですが、このアルバムでは鍵盤楽器の比重がかなり増えたたまか、よりサイケ度が高まったように感じられます。ついでに言えばWyattのファルセットもかなり露出が高まり全体として浮遊感あふれる楽曲が中心に。プロデュースはKing CrimsonのRobert Frippが務めています。
このアルバムをリリース後、Robert Wyattは酔ったうえで転落事故に遭い重傷を負ってしまいます。まぁ、自業自得と言えばそれまでなのですが不幸にして下半身不随に。一時は再起不能と囁かれましたが数年後、見事に復活しています。
#1. Staring In The Middle Of The Day We Can Drink Our Politics Away
生ピアノの伴奏にのってまるで讃美歌のようなファルセットコーラスで始める奇妙な曲。やがてオルガンが入り込んできてまるで桃源郷のようなトリップ世界が繰り広げられます。
#2 Marchides
オルガンによる反復螺旋型リフで始まりやがて笑い声のSEが。なんだかおちょくりっぽいなと思いきやWyattの一閃によってハードなジャズロックサウンドに。Bill MacCormickのファズベースが地べたをのたうち回るように地響きを立てて暴れまくります。やがてテーマが一巡するとエレピによって静かにクールダウンします。やがてテーマは一変し、反復フレーズをベースにしたミドルテンポのジャズロックに。中期Soft Machineにかなり似ているのですがギターが入っているだけサウンドにはバラエティが感じられます。何とも起伏に富んだ展開です。アルバム中最大の力作。
#3 Nan True's Hole
不安感を煽るようなWyattのボーカルで始まる不気味極まりない曲。ライブでも定番曲ですね。お得意のワンテーマのリフレインによって進行していきますが、途中からエレピ、ギター、ベース、スキャットなどが渾然一体となって重なり合い妙な高揚感を醸し出しています。
#4 Rightious Rhumba
SEっぽいスキャットでスタートしますが、すぐさま本格的なジャズロックへ突入。ディレイがかかったPhil Millerのギターがしばらくリードしますが相変わらず捉えどころがない浮遊感あふれるソロです。
#5 Brandy As In Benj
#4からそのままの流れで突入。ギターの小気味よいカッティングをバックにDave McRaeのオルガンが暴れまくります。激しい転調でもまったく破綻をきたさないのはDave McRaeのワザによる部分が大きいと思われます。
#6 Glolia Gloom
これまでの動的な展開から一転し、シンセによる暗黒世界のような唸りから始まります。ひとしきり暗黒世界が去ると今度は男女の会話によるSEに、やがてバックが稼働し始めるとミドルテンポをバックにWyattとSEが交差しはじめます。何だかとても猥雑な世界です。最後は再びオープニングのシンセが流れ出し静かにクールダウン。この電子音はゲスト参加のEnoが担当しているのだと思われます。
#7 God Song
アコギとベース、スキャットとで構成される小曲です。メランコリックな調べに乗せてWyattが切々と歌い上げます。フォークトラッド的な楽曲ですが、Phil Millerがわざとずらし気味の音階を奏でるなど、やはり一筋縄ではいきません。
#8 Flora Fidgit
アップテンポな展開が小気味よい感じの曲。エレピがリードするいかにもカンタベリー系らしい曲。エレピとベースがユニゾンで進行しますが、ブレイクしてからは一転してフリーな感じに。やがてフェードアウトしていきます。
#9 Smoke Signal
クロス気味にフェードインしてくるラスト曲。エレピが煌びやかなな調べを奏でますが、ドラムはバックで自由奔放に暴れまくります。ベースも重戦車のように突進しまくります。曲中盤から一転して電子音によるカオスの世界へ。散文的に音と音の交差が展開される中、Wyattが悪さを繰り返しています。やがてテーマに戻りますが、再度、電子音によって終焉を迎えます。圧倒的な大団円。
●Musicians
Dave McRae / piano,electric piano,hammond organ,synthesizer
Robert Wyatt / drums,mouth
Phil Miller / guitar
Bill MacCormick / bass
guest musician
Eno / V.C.S.3(on gloria gloom)
●Numbers
1. Staring In The Middle Of The Day We Can Drink Our Politics Away
2. Marchides
3. Nan True's Hole
4. Rightious Rhumba
5. Brandy As In Benj
6. Glolia Gloom
7. God Song
8. Flora Fidgit
9. Smoke Signal
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