鬼才Lenny Breauのトリオ作品「Lenny Breau Trio」
Musician●Lenny Breau(guitar)
Title●Lenny Breau Trio(1979年)
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アメリカ出身のジャズギタリストLenny Breau(レニー・ブロウ)による自身5枚目のリーダー作。1979年にリリースされています。レーベルを見ると「Direct-Disk Labs」とあるのですが、一時期流行っていた「ダイレクトディスク」「ダイレクトカッティング」と関係あるのでしょうか。ちなみに「ダイレクトディスク」「ダイレクトカッティング」とは確か録音現場にカッティングマシンを持ち込んでそのままダイレクトにレコードを作ってしまうという「究極の直接録音」だったと記憶しています。いわゆる編集作業が発生しないため、実に生々しい臨場感が味わえます。クレジットによれば2トラックにダイレクトにレコーディングされ、当たり前ですが一切の編集作業は施されていないと書かれています。Lenny Breauの初期作品はかなり品薄でプレミアがつくケースが多いのですが、この盤も昔は入手困難でした。でも最近は某密林などでも比較的安価で取り扱っていますね。
Lenny Breauは一時期カナダへ渡ってギタートリオを結成したりしていますが、元々はカントリーバンドからスタートし、その後ジャズへ転向したため生粋のジャズメンとはかなり風情が異なります。聞けば両親ともカントリー畑のミュージシャンだったとか。加えて1960年代後半のデビュー当時から7弦ギターやタップ奏法を導入していたため異端のミュージシャン、ジャズギターの異端児と呼ばれていたようです。さらに生来精神的な障碍を抱えていたうえに重度のドラッグ中毒に罹り、1984年、43歳のときに何者かによって殺害されるという数奇な人生を歩みました。そんなエピソードがさらにLenny Breauを必要以上に「神格化」させているのかもしれません。Jim Hallなどのいわゆるジャズギタリストとは対極の位置にあることは間違いないでしょう。
さて1st「Guitar Sounds from Lenny Breau」や2nd「Velvet Touch of Lenny Breau Live!」で漲っていた極度の緊張感に比べると、この作品は若干リラックスムード。アコギとエレキを巧みに使い分けながら、随所で素晴らしいフレーズを披露しています。ただ「ダイレクト・カット」からの影響なのか割と手堅くまとまっているのも確かです。曲もあまりひねらず素直なものが中心です。とはいえ、誰にも真似できない独特なアルペジオ、タップから生まれるビロードのような触感を感じさせる美しいハーモニクスはBreauならではのもの。それだけでもこの作品を聴く価値はあるでしょう。参加メンバーはDon Tompson(bass)、Claude Ranger(drums)となっていますが、Don TompsonはJohn Abercrombieとの共演でも有名ですね。
●Musicians
Lenny Breau / guitar
Don Tompson / bass
Claude Ranger / drums
●Numbers
1. You Needed Me
2. Don't Think Twice (It's All Right)
3. Mister Night
4. Neptune
5. Claude (Free Song)
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