豪州出身の鍵盤楽器奏者Sean Waylandの「Pistachio」
Musician●Sean Wayland(piano,keyboards)
Title●Pistachio(2008年)
■Amazon USAより購入
豪州出身で現在はアメリカで活躍する鍵盤楽器奏者Sean Wayland(ショーン・ウェイランド)による2008年の作品です。Sean Waylandといえば同郷のギタリストJames Muller(ジェームス・ミュラー)との諸作品でも知られていますが、さらに元「Lost Tribe」のギタリストで現在はリーダー作でいぶし銀のジャズギターを聴かせてくれているAdam Rogers(アダム・ロジャーズ)まで参加しているとあれば買わない手はありません。
届いたのは紙1枚のペラペラジャケット。しかもCD本体はむき出しの状態で無造作に入れられています。最近は低予算のためなのかこんな残念な仕様が多いですね。しかもクレジット情報があまりに少なく誰がその曲に参加しているかさえ定かではありません。何だかな~という感じです。この盤をブログで紹介されている奇特な方がおられたので、それを頼りに調べてみると、どうやら2008年にNYで録音された模様です。何だかトホホ音源の気配が漂いますが、中身は最強です。特にKeith Carllock(drums)とTim Lefebvre(bass)によるリズム隊は最強の一語!乗り乗りのグルーヴ感と書くと何だか安っぽく聞こえますが、それ以上の形容詞が見つかりません。本人の弁によれば70年代のHerbie Hancockが得意としたファンク/フュージョンの雰囲気を目指したとのことです。
#1. Club Sandwich
いきなりファンキーな感じでしかもWaylandのボーカル付きということで驚きます。この人、ボーカルもやるなんて知りませんでした。けっして上手いとはいえませんが、味のあるボーカルです。先のブロガー氏の形容を拝借すると「Steely Dan風」とのこと。いや、Steely Dan自体あまり聴いたことないし(汗)。メインストリームを避けて過ごしてきたツケがいまになってきています。自分自身の言葉で形容できないのが歯がゆいのですが、ちょっとファンク色が強い昔のAOR風という感じでしょうか。AORにはあまり馴染みがないのですが、エレピが結構心地よい佳作です。
#2 Arc Is Enough
ギターのAdam Rogersが大暴れしています。Rogersの最近のリーダー作はコンテンポラリージャズというか割と正統派ジャズギタリストへと近づいている感が強いのですが、その昔ジャズユニット「Lost Tribe」に在籍していた頃はかなり尖ったソロを聴かせてくれました。Waylandに煽られたのか、まさかの「回春的な変態フレーズ」の連発には驚きです。相変わらずリズム隊が強力すぎます。
#11 Drag Out The Cliches
Waylandによるリリカルなピアノから始まる美しいバラード。途中からRogersのアコギがこれまた美しいソロを連発しています。このピアノとギターの絡みはEvansとHall以降、当欄にとって涙腺を刺激しまくる取り合わせであります。
#12 E Of 1
Adam RogersとJames Mullerのソロが聴けるという奇跡のような曲。この2人の接点となるとよくわかりませんが、これからのコンテンポラリージャズを牽引していくギタリストであることは間違いありません。最初の頃はソロというよりお互いが得意とするヴォイシングの応酬で絶妙な世界で築き上げています。最初にRogersが口火が切るやいなや、Mullerがすかさず反応。火の出るような2人の凄まじいソロのバトルが展開されます。いやー、こんな素晴らしいギターバトルは久しぶりに聴きました。
しかし、Wayland関連の音源はあまりに流通が悪すぎます。James Mullerとの共演作も地元豪州のCD屋ですらほとんど入手不可能というありさま。オージージャズって地元では冷遇されているのではという邪推までしてしまいます。CD-Babyなら比較的手に入りやすいような気がします。
動画は#2 Arc Is EnoughですがAdam RogersではなくJames Mullerが担当。凄まじい暴れぶりです♪
●Musicians
Sean Wayland / piano,keyboards
Keith Carlock / drums
Tim Lefebvre / bass
Adam Rogers / guitar
James Muller / guitar on E Of 1
Matt Clohesy / bass
●Numbers
1. Club Sandwhich
2. Arc Is Enough
3. Soft Oz Rock
4. Jackie O
5. John Coltlane
6. Onit
7. Don't Get Me Wrong
8. Be My Guest
9. Organic Cigarettes
10. Stuck In Oz
11. Drag Out The Cliches
12. E Of 1
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コメント
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さっそくオーダーを出しました。
来るのが楽しみです。
James MullerはChad Wackermanの『Scream』などで聴かれるようなHoldsworth系の
プレイが、どちらかというと好みです。
Adam Rogersは、どのアルバムでもらしさを出せるプレイヤーという印象です。
Alex Sipiaginの『Mirrors』でのプレイやTerri Lyneらとのユニットで『Structure』というアルバムでのプレイが好きです。
Adam Rogersの音色やプレイスタイルを聴くと最近の滝野聡さんのプレイがダブってきます。
貴重な情報ありがとうございます。
投稿: jaco3110 | 2011年7月 4日 (月) 10時04分
jaco3110 さま
コメントありがとうございます。
おお、ご購入されましたか!
私もJames MullerはWackermanの作品で初めて聴いてから、
リーダー作にも手を伸ばしています。
なかなか入手しづらいのが難点ですね。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2011年7月18日 (月) 12時01分