Bruce Bartlettの2nd「Nasty Habits」
Musician●Bruce Bartlett(guitar)
Title●Nasty Habits(1999年)
■メーカーサイトより購入
ボストンを中心に活躍するジャズフュージョン系ギタリストBruce Bartlettの2ndです。1999年リリース。1st「Free For A Price」からわずか1年後のリリースですから、この手のミュージシャンとしては異例の早さです。10年ぶりの「新作」なんていうのは、この業界では当たり前のローテーションですからね。それだけ1stが好評を博したのではないでしょうか。
さて、1stでも触れたようにBartlettはボストン・バークリー音楽院のギター科の講師を15年以上も務めたキャリアをもつだけにギターの腕前はスコブル付きの巧さです。ジャスフュージョンといっても若干ブルース寄りのフレージングと明快なサウンドはハードフュージョンギターの王道を歩んでいます。中低音に独特な味わいがある伸びのあるナチュラルトーンにはゾッとするほどの色気を感じさせます。なるほど「Musician's Musician」とプロギタリストの間で絶賛されるのも当然という素晴らしいソロの連発です。参加メンバーは前作に引き続きAllan Holdsworthとの競演で知られる鍵盤楽器奏者Steve Hunt、ベースにSteve SmithのVital Informationで活躍したBaron Browneが参加。楽曲はすべてBartlettのオリジナルです。
こんな素晴らしいプレイヤーなのに、「知る人ぞ知る存在」に甘んじていることが残念でなりません。リアルCDも一昨年あたり前までは自身のサイトから直接購入できたのですが、いまはデジタル音源をダウンロードするしか方法がありません(決済はPay Palのアカウントが必要です)。
全世界的にリアルCDの売り上げが落ち込み続けている状況で、こうしたデジタル音源での配信に頼るというのも仕方がないのかもしれません。では、デジタル配信がリアルCDに完全にとって代わっているかというと、実はそれは大きな誤解で、デジタル音源の売り上げも下降傾向にあるとか。これでは多くの人達の鑑賞に堪えうる「音楽」が減ってきているという証になってしまいます。つまり音楽業界全体が萎んでいるのです。リアルCDも売れない→デジタル配信も下降気味→ミュージシャンが経済的に潤わない→良質な音楽が生まれる可能性がますます低下する…こんな「負のスパイラル現象」が一昨年あたりから顕著になってしまっています。こうした悪循環に歯止めをかけるべくたとえば「違法ダウンロードの取り締まり」が本格化しています。もちろん音楽家の権利を守るための法整備も大切ですが、一方でこうしたマイナー系ミュージシャンが仕事に対する正当な報酬を得られる環境を整えることも同じように大切ではないでしょうか。
相変わらず日本では「カバー物」が大流行ですが、カバー物は過去の遺作を食いつぶすだけで、実際は何ら新しい創造をしていません。中高年世代が懐かしがって昔の音源を買い求めるのはいいとしても、それだけでは次世代につながる音楽が生まれることにはなりません。若い世代が音楽からどんどん離れていってしまうだけです。困ったことです。当欄がカバー物ブームに強い違和感を感じるのはそんな理由からです。話がそれてしまいました。
●Musicians
Bruce Bartlett / guitar
Steve Hunt / keyboard
Baron Browne / bass
Marty Richards / drums
Oscar Stagnaro / bass on 4:01 AM
●Numbers
1. Nasty Habits
2. Top Down
3. Once Again
4. Nine Lives
5. Audio Torture
6. 4:01 AM
7. Cheisea Vibe
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