安達久美さん第2弾「Winners!」
Musician●安達久美(guitar)
Title●Winners!(2008年)
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日本を代表する女性ギタリスト安達久美さん率いる「Club Pangaea」の第2弾です。2008年リリース。前作「Little Wing」はデビュー作ということもあって、ロック、ブルース、フュージョン、ファンクなどの音楽的要素が詰まった博覧会的な内容でしたが、2作目にしてやや方向性が定まってきた感じがします。たとえて言うならば「女Jeff Beck」です。ちょうど「There And Back」の頃のJeff Beckを彷彿とさせる感じはロックギターの王道を歩み始めたと表現したらよいかも。相変わらずロック/ブルースを基調にしながら適度にファンク色を混ぜたり、フュージョン的なアレンジを施すバランス感覚がナイスです。
#1 Delusion
Jeff Beckかと思わせる壮大なロックナンバー。キーボードがJan Hammerのイメージに近かったりするのは気のせいなのでしょうか。中盤から炸裂する安達さんのソロはトレモロを派手に使いまくっています。これもBeck御大からの影響なのでしょう。
#2 Europe
ある年齢以上の人間にとってはお馴染み、カルロス・サンタナの代表曲「哀愁のヨーロッパ」のカバーです。エレキギターを手にした人なら必ずコピーするのではと思われる通過儀礼的な名曲です。あのロングサスティーンをどうやって再現するのだろうかと思いきや、安達さんは見事に期待に応えてくれています。途中からややフュージョン的なアレンジに移り、そしてBeck的なアレンジで名曲に新たな息吹を吹き込んでいます。
#3 All One
安達さんにしては珍しく内省的でリリカルなバラード。途中からジャズ的なアレンジに移りますが、あえて派手なソロを封印して静的なイメージを作り出しています。ちょっと静かなScott Hendersonという感じです。
#4 X-Wing Fighter
映画「Star Wars」の主人公が登場する宇宙船を「X-Wing Fighter」というそうです。なにやらPlanet Xを彷彿とさせるガリガリ、ゴシゴシとした金属的なリフから始まる壮大な宇宙をイメージした楽曲です。中盤で弾ける安達さんのソロはBeck的ではありますが、適度な「泣き」が入ったソロ回しは日本人好みな味わいです。あ、弾いているのは日本人だから当たり前か。途中から弾いている人の性別、国籍などはとるに足らないことなんだと思われてきます。
#9 Winners!
これまた快活に疾走しまくるロックナンバー。何でもモータースポーツをイメージして作られたそうだとか。Beck敵に言えば「Star Cycle」なのでしょう。ラストの鍵盤楽器との激しい掛け合いは、やっぱりJeff BeckとJan Hammerが繰り広げた往年の熱演を思い出させます。オジサン心がよくわかっていらっしゃる。
前作との比較では長足の進歩を見せている安達さん。あえて欲を言えばもっとギラギラしたものを聴かせてくれてもと思いますが、それは次作以降に期待いたします。「女性ギタリスト」という冠がとれたときにいよいよ本物になるのでしょうね。ちなみに安達さん直筆のタブ譜がおまけとしてついてきます。
●Musicians
安達久美 / guitar
則竹裕之 / drums
清水興 / bass
河野哲三 / keyboards
●Numbers
1. Delusion
2. Europe
3. All One
4. X-Wing Fighter
5. Peaceful Time
6. Catch Ball
7. Tribe Drive
8. Touch Me Gently
9. Winners!
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