ギターシンセの名手John Abercrombieの「Current Events」
Musician●John Abercrombie(guitar,guitar-synthesizers)
Title●Current Events(1986年)
■ディスクユニオンで購入
ECMを代表する知性派ギタリスト、John Abercrombie(ジョン・アバークロンビー)がやはりECMを代表するベースの名手、Marc Johnson(マーク・ジョンソン)、Peter Erskine(ピーター・アースキン)と組んで作ったEDM珠玉の名盤です。1986年リリース。
Abercrombieは1970年代後半あたりからギターシンセを積極的に導入し、さらに彼しか出せないサスティーンサウンドに磨きをかけることによって、叙情的で独自の空気感を漂わせる作品を残してきました。この作品はAbercrombieが追究してきた音楽観の集大成とも言える作品で、魅力がぎっしりと詰まっています。
何とも不思議なグルーヴ感をもつ#1「Clint」で聴かれるギターシンセの素晴らしさはもちろん、続く#2「Alice In Wonderland」でのあまりにも美しいプレイは、数あるECMサウンドの中でも間違いなくベスト3に入る名演です。原曲がもつ幻想的で邪気のない世界をとてつもなく速いパッセージで再現する圧倒的なテクニックは流石の一言。極端な話、この1曲のみを聴くためにこのアルバムを購入しても十分にお釣りが戻ってくるはずです。
作品を通して聴いてみるとAbercrombieのギターシンセが作り出す独特な空気感は、これまたほかのプレイヤーでは再現不可能なものであり、間違いなくギターシンセを持たせても第一人者だと断言できます。これまで多くのギタリストがギターシンセにチャレンジしてきましたが、多くはキーボードの代用品で終わってしまう残念な結果に終わっているように思います。ところがAbercrombieは、ギターに加えてさらに新しい楽器として完全に手の内に入れているだけでなく、作品全体の中でギターシンセをどのように使うべきかを緻密に計算しています。時々使うエレクトリック・マンドリンも合わせて(最近ではあまり使いませんが)、まさに音の魔術師たるゆえんです。
このトリオは1988年にボストンでのライブ音源を残していますが、これは「Current Events」のライブバージョンという趣。2枚を聴き比べてみると大変興味深いと思います。まあ、ECMファンなら当然おやりになっていると思われます♪
●Musicians
John Abercrommbie / guitar,guitar-synthesizers
Marc Johnson / bass
peter Erskine / drums
●Numbers
1. Clint
2. Alice In Wonderland
3. Ralph's Piano Waltz
4. Lisa
5. Hippityville
6. Killing Time
7. Still
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コメント
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マクラフリン先生のトリオライブの傑作「Live at the Royal Festival Hall」のスタジオ録音バージョンが「Que Alegria」だという事は認識していましたが…
敬愛するアバクロ先生の「ボストンライブ」に対応するスタジオ作品があるとは今まで知りませんでした!
大変勉強になりましたm(_ _)m
この音源は持っていませんでしたので、早速ゲットし、今聞きながらコメントを書いています。
未だ1曲目とアリスしか聴けていませんが「ボストンライブ」関連作と思って聴くと大変味わい深いです。
投稿: betta taro | 2011年4月26日 (火) 22時09分
betta taroさま
とんでもない亀レス、ご容赦ください。
ボストンライブに対するスタジオ盤というのは私が勝手に定義づけ
しているだけですが、メンバーと時期を考えるとあなが無理筋ではないと
思っています。
この時期のアバクロ先生は一番脂が乗っていますよね!
投稿: 奇天烈音楽士 | 2011年7月 2日 (土) 13時40分