Gordon BeckとJohn McLaughlinによるポップカバー集
Musician●Gordon Beck(piano)
Title●Experiments With Pops(1966年)
■ディスクユニオンで購入
ヨーロピアンジャズを代表する鍵盤楽器奏者で映画「フレンチ・コネクション」のサントラ音楽で有名なGordon Beck(ゴードン・ベック)が1966年に録音したポップナンバーのカバーアルバムです。Gordon BeckといえばのちにIan Carr(イアン・カー)率いる「Nucleus」に籍を置いたり、フリー系ドラム奏者John Stevens(ジョン・スティーヴンス)との共演を契機にAllan Holdsworth(アラン・ホールズワース)と何枚かの作品を残したりと、英国ジャズロック界で重要な働きをしてきました。そういえば1986年にAllan Holdsworthが2回目の来日公演を果たしたとき、ツアーメンバーとして来日しています。
このアルバムはポップスナンバーのカバーですが、1966年当時はまだジャズロックが生まれる前の話です。参加メンバーを見て吃驚!ギターに無名時代のJohn McLaughlin(クレジットはなぜかJohnny McLaughlinとなっています)、Jeff Clyne(bass)、Tony Oxley(drums)という全員がのちに英国ジャズロックの中心人物になる面子です。Jeff ClyneとTony OxleyはJohn Stevensと行動を共にしフリージャズ路線へ、John McLaughlinは言うまでもなくMiles楽団に加入することで一躍有名になり、Tony Williamsとの共演を経て70年代初頭に「Mahavishunu Orchestra」を結成します。ともあれ、この時期はほとんど無名の存在だったはずです。
このアルバムで興味深いのが#2「Norwegian Wood」と#3「Sunny」の2曲。前者は言うまでもなくレノン・マッカートニー作の名曲ですが、モダンジャズ風にアレンジすることにまったく異なった曲として新たな息吹が吹き込まれたかのようです。McLaughlinの躍動感あふれる溌剌としたギタープレイが実に新鮮で、12弦ギターと生ピアノのユニゾンは息を飲むほど美しいプレイです。McLaughlinはディストーションなどのエフェクターはほとんど使っておらず、ほぼ生音に近い感じ。それでも「McLaughlin特有の手癖」はすでに顕著ですでにプレイスタイルが確立されていたわけです。おっと、レノン&マッカートニー関連では「Michelle」も取り上げられております。
かたや「Sunny」は黒人歌手Bobby Hebb(ボビー・ヘブ)による大ヒット曲ですが、こちらはBeckによるピアノソロ。本音を言えばギターも聴きたいところですが、ソウルフルな原曲イメージが華麗なヨーロピアンジャズに変身させてしまうワザは流石の一語。蛇足ですがこの「Sunny」は勝新太郎や和田アキ子、最近では加護亜依によってカバーされています。Pat Martinoも「Live!」でカバーしていましたね。Hebbの曲は続く#4「Up,Up And Away」でもカバーされていてこちらではMcLaughlinが大活躍しています。何とも流麗で美しいギターソロはこのアルバムでの最大の聴きどころです。
このアルバムの存在自体、あまり知られていないようで数年前にディスクユニオンが輸入販売したときはちょっとした話題になっていました。若きジャズロックの天才たちの軌跡を探るうえでも重要な作品だと思います。
●Musicians
Gordon Beck / piano
Johnny McLaughlin / guitar
Jeff Clyne / bass
Tony Oxley / drums
« Mick Goodrick / Biorhythms(1990年) | トップページ | Greg Howeの2nd「Introspection」も紙ジャケットで聴いてみる »
「ジャズピアノ」カテゴリの記事
- Michel Reis / Hidden Meaning(2012年)(2016.08.13)
- Richard Beirach / Elm(1979年)(2016.06.05)
- Joanne Brackeen / AFT (1977年)(2016.05.14)
- 上原ひろみ / Spark(2016年)(2016.02.14)
- RANDY INRAM / Sky/Lift(2014年)(2016.01.01)
« Mick Goodrick / Biorhythms(1990年) | トップページ | Greg Howeの2nd「Introspection」も紙ジャケットで聴いてみる »
コメント