新進気鋭のテクニカル系ギタリストNick Matzkeのソロ
Musician●Nick Matzke(guitar)
Title●Physical Proof(2009年)
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昨年の5月あたりから本格的に始めたTwitterですが、同好のよしみといいますか同じ趣向の方々が自然発生的に集まるような流れになってきまして、おかげさまで知らなかったミュージシャンや作品に巡り会うことができました。「たった140字で勝手に呟いていて何が面白いの?」とか「いや、じきにブームは去りますよ」と否定的な見方をする向きもありますが、まあそれは活用の仕方であって、自分なりに使いこなしていけば結構面白いものだと思います。一時のブームにただ乗った人は結局Twitterの面白味がわからずにTwitterを止めてしまうケースがあるようですが、それはどんなメディアや通信手段でも起こり得ることです。それをもって「Twitterは一過性のブームだった」と断ずるのは拙速な見解で、これからはTwitterも成熟に向かっていくのではないでしょうか。
今回、ご紹介するのはTwitterで知った新進気鋭のテクニカル系ギタリストNick Matzkeです。当欄と同じ趣向をもつ方がTwitter上で絶賛されていたので、そのまま乗ってしまいました。いやー、これが大正解!正直に言いましてこのNick Matzkeというプレイヤーの情報はまるでわかりません。自身のサイトでは初ソロということになっていますが、初めて見るファミリーネームといい、一見するサラリーマン風の風貌といい、謎多きギタリストです。
恐る恐る聴いてみると、これがドンズバ!の傑作。オールギターインスト作品ですが、全体を通して評すると「回春したGreg Howe」という感じです。1曲目からいきなり飛ばしまくる超絶技巧の嵐にすっかり魅了されてしまいました。Greg Howeよりもロック寄りでGibsonのES-335から生み出される野太い音にすっかりやられています。テクニカル系ギタリストはともすればテクニックのみに走りがちで、冗漫な感じに陥ることもあるのですが、Nick Matzkeはギターを歌わせる術を心得ています。だから、「昔のGreg Howe系」という評価にしました。
一方で、#4「Peligro」や#7「The Djinn」のようなネオクラシカル風の曲も用意されています。こちらのテイストもなかなかです。多くの先達が編み出したテクニックや表現方法を貪欲に吸収したうえで、しっかりと自分のものへと昇華できています。ただ、あえて苦言を呈しますと#8「Clean Up」のような打ち込みが前面に出すぎた曲は個人的な好みもあってあまり推奨できません。また、全体的に音が割れ気味で耳が辛い曲もありますが、ここら辺は予算の問題もあるので(笑)、次作での挽回に期待です。しげしげとクレジットをみたら「Yuka Yanagihara」という日本人プレイヤーが参加しています。
というわけで、次の作品も聴きたくなるようなプレイヤーに久々に出会えました。この素敵な出会いの機会を作っていただいたTwitter仲間の九条さんにこの場を借りて感謝申し上げます。
●Musicians
Nick Matzke / guitar,bass,keyboards,drum-programming
Ben Stueve / bass
Nate Laguzza / drums
Dave Vandigirry / drums
Yuka Yanagihara / piano
Ray Reich / keyboard
●Numbers
1. Natural Tendencies
2. 68-44
3. Peace Of Mind
4. Peligro
5. Interlude
6. Another View
7. The Djinn
8. Clean Up
9. Collision Course
10. D.R.E
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