超個性派ギタリストBen Monderの3rd「Excavation」
Musician●Ben Monder(guitar)
Title●Excavation(1999年)
■ディスクユニオンで購入
NYを中心に活動している先鋭的ジャズギタリストBen Monder(ベン・モンダー)によるソロ第3弾です。1999年リリース。当欄でも何回か取り上げているギタリストですが、「光速アルペジオ」を武器とする特異なプレイスタイルにもかかわらず、いまのジャズシーンでは欠くことのできない人気者で、夥しい数のセッション活動をこなしている多忙の人です。
ソロ第1弾、第2弾では「光速アルペジオ」だけですべてを作り上げてしまうという「偉業」を達成したMonderですが、この第3弾ではボーカルとしてドイツ出身の奇才Theo Bleckmann(テオ・ブレックマン)を迎え入れています。クレジットを見ると「Vocal」ではなく「Voice」とするあたりに並々ならぬ自負とこだわりを感じさせますが、同時にえも言われぬ不気味さが漂います。ベースはAllan Holdsworthとも共演歴があるSkuli Sverrisson、ドラムはJim Blackというこれまたひと癖もふた癖もある個性派揃いです。
このアルバムの最大の聴きどころは何と言ってもBleckmannによる唯一無比とも言えるファルセットを多用した幻想的な歌声です。それにMonderの「光速アルペジオ」が絡んでいくことによってどんな音世界が築かれるかに注目。いやいや、これが実に怪しい音の世界なのです。聴き方によってはちょっと不思議な環境音楽という感じですが、聴き込んでいくうちに恐ろしくも美しく、それでいて比類なき暴力性に満ちた作品であることに気がつくはずです。
前2作ではそれぞれ1曲ずつしかソロフレーズを披露しなかったMonderですが、ここでは積極的にソロを連発。あるときはフォーマルなジャズギター風、あるときはコンテンポラリー系、あるときにはアヴァンギャルドな過激なソロと、まさに変幻自在。専売特許でもある光速アルペジオはさらに音に厚みが増して、音の空間に広がりが感じられます。機材の詳細が不明なのですが、もしかしたら12弦ギターを使い始めたのかもしれません。ギター好き、コンテンポラリー系が好きな方には、ぜひお勧めしたい意欲作です。
●Musicians
Ben Monder / guitar
Theo Bleckmann / voice
Skuli Sverrisson / bass
Jim Black / drums
●Numbers
1. Mistral
2. Luteous Pangolin
3. Ellenville
4. Sunny Manitoba
5. Hatchet Face
6. Etching
7. Windowpane
8. You Are My Sunshine
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» Ben Monderの"Excavation"を久々に聞いた。 [中年音楽狂日記:Toshiya's Music Bar]
Excavation Ben Monder (Arabesque) いきなりであるが,Ben Monder,不思議なギタリストである。この人の演奏ぶりは捉えどころがないというというか,あまりほかでは聞 [続きを読む]
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奇天烈音楽士さん,こんにちは。TBありがとうございました。
今回,久しぶりにこのアルバムを聞いたんですが,やっぱり変態です(笑)。サウンドとしてはBill Frisellを思わせる部分があると思いますが,これほどアルペジオを多用しているとは思いませんでした。ユニークなギタリストであることは間違いないですが,こういう音って好きな人ははまると思いますね。かく言う私もそのクチです。
ということで,こちらからもTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2017年1月 9日 (月) 11時47分
中年音楽狂さま
TBありがとうございます。仰るとおりこの人は安定した変態です。古くからの知人がNYCで音楽ライターをしているのですが、仲間うちでも変人、どケチで有名だそうです。
ただそれだけ変人だからこそ、アルペジオ一筋でアルバムを作るという発想も出てきたのでしょうね。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2017年1月 9日 (月) 22時35分