北欧の暗黒神「OPETH」の9th「Watershed」
Musician●Opeth
Title●Watershed(2008年)
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ここにきて三度「メタル・マイブーム」の到来です。とは言っても、頸椎に慢性的な弱点を抱える当欄としてはあまり刺激的なメタルは控えている状況です。
今回ご紹介するのは北欧が生んだプログレ系メタルバンド「OPETH」(オーペス)による通算9枚目のアルバムです。2008年リリース。確かOPETHのバンド名は「月の町」という意味だったと思います。デビュー当初はデス声を中心にした「普通のデスメタルバンド」でしたが、3枚目をリリースしたあたりから、70年代的なプログレッシヴロックの要素を巧みに取り入れながら大きく変貌を遂げました。また、ボーカルも「デス一辺倒」から「ノーマルボイス」との併用という独自のスタイルを完成。「デス=醜悪」VS「ノーマル=美」が生みだす見事なコントラストと、メロトロン的なキーボードを駆使したプログレ的アレンジによって独自の音楽観を築き上げています。リーダー兼ボーカルのMikael Akerfeldt(ミカエル・オーカーフェルト)はボーカルとリードをこなすフロントマンですが、デス声はともかくとして、「ノーマルボイス」はどこかしらジョン・ウエットンを彷彿とさせる憂いがこもった声質が特徴的です。
前作リリース後にバンドの屋台骨を支えてきたマーティン・ロペス(drums)とピーター・リンドグレン(guitar)の2名が脱退してしまいますが、ドラムには新たにMartin Axenrot、ギターにFredrik Akessonが加入しています。当然、特にドラムの交代が気になるところですが、新任のMartin Axenrotのプレイはどちらかというと、メタル色が濃厚で、ソリッドでタイト。前任者が流動的で変則プレイを得意としていたのに対し、新人ドラムのプレイは直線的・鋭角的でスピーディー。したがってリズムセクションとしてはとっつきやすくなった印象を受けます。
肝心の楽曲ですが、相変わらずのプログレとデス、静と動、叙情性と邪悪、アコースティックとメタルなどのお得意の「二律背反的サウンド」が健在。新メンバーによる新たなスパイスが加味されたという感じで、デビュー作からのファンを十分に納得させるものに仕上がっています。1曲目の「Coil」という曲はいきなり、AkerfeldtとNathalie Lorichsという女性ボーカルのツインボーカルという新境地を見せてかなり面食らいますが、あとはお得意のOPETHサウンドがこれでもかと展開しています。その意味ではややマンネリ感がないわけでもありませんが、予定調和的な展開とはいえ、新作のたびにさまざまな手法を駆使しながら表現する力量はいつも感心させられます。1度ではなく、何回も聴き込んでいきたくなるそんな作品です。
この「OPETH物件」に関しては今後、ちょくちょくお届けする予定です。ちなみに当欄が入手したのはDVDがおまけとして付いているスペシャル・エディションです。
●Musicians
Mikael Akerfeldt / vocal,lead guitar
Fredrik Akesson / rhythm guitar
Per Wiberg / keyboard
Martin Mendez / bass
Martin Axenrot / drums
●Numbers
1. Coil
2. Heir Apparent
3. The Lotus Eater
4. Burden
5. Porcelain Heart
6. Hessian Peel
7. Hex Omega
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