未発表音源と言っても3曲ですが。帝王Miles「Bitches Brew Live」
Musician●Miles Davis(trumpet)
Title●Bitches Brew Live(1969年、1970年)
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一時期(といっても20年くらい前の話ですが)、やたらと出回っていたMiles Davisの未発表音源。その多くはスタジオ録音のアウトテイクを拾遺集的に編集したうえで既存の音源とドッキングさせる編集盤か、地下音源として密かに流通していたライブ音源を「正規盤」として「格上げ」したものがほとんどでした。さすがにネタ切れになったのか、近年はほとんど見かけることもなくなりましたが、久々にリリースされたのがこの作品です。タイトルから一目瞭然で、名盤「Bitches Brew」をリリースした時期のライブ音源です。前半3曲が1969年7月5日、米Newport Jazz Festivalでの音源。後半6曲が1970年8月29日、英ワイト島でのライブ音源。ワイト島にはジミヘンやジャニス・ジョプリンなども参加していましたね。参加メンバーはNewportがChick Corea、Dave Holland、Jack DeJohnette、ワイト島がGary Bartz、Chick Corea、Keith Jarrett、Dave Holland、Jack DeJohnette、Airto Moreiraという構成。
ワイト島に関してはすでにオフィシャルDVDとして日の目を見ているので「まったくのお初」ではないのですが、まあ初CD化ということでは看板に偽りはありません。一方、Newportは完全に未発表なので資料的価値も含めてきちんと聴かないといけません。地下音源スレスレのこもった音質には若干がっかりですが、「電化Miles」初期の貴重音源は確かに聴き応えがあります。ただ、新規メンバーが多いということで、演奏自体はいまひとつ。今にもイ崩壊しそうな危うい雰囲気を打破するかのごとく、帝王の怒りのブロウが炸裂します。同時期(1969年7月)のライブ音源に仏アンティーヴ収録の「1969 Miles」がありますが、出来としてはアンティーヴのほうが上だと思います。
一方、Newportの1年後に収録されたワイト島は秀逸の出来映えです。すでに映像でご覧になった方も多いので詳細は割愛しますが、単に新規メンバー3名(Gary Bartz、Keith Jarrett、Airto Moreira)が加わっただけでなく、凄まじいポリリズムのもと、「電化Miles」が著しく進化を遂げていることにあらためて驚かされます。CoreaとJarrettの双頭鍵盤楽器体制は短命に終わってしまったので、資料的価値もあります。DeJohnetteも1969年当時は若干の迷いが感じられましたが、1年後には骨をナタで砕くようなマッチョ的なプレイへと変貌を遂げています。
「電化Miles」はさらに強力なポリリズムを追い求め、どちらかといえばJazz寄りのCoreaとHollandを解雇し、ファンク色濃厚なベース奏者Michael Hendersonを迎え入れ、狂乱のサウンドを志向し始めます。また、折りをみて小飼いの超絶ギタリストJohn McLaughlinをツアーに参加させてこれまた凄まじいパフォーマンスを聴かせてくれています。これらの音源については機会をあらためて。
とまあ、いろいろと書きましたが未発表ライブ音源ということで作品性というよりも、どうしても資料的な意味合いに視線が向いてしまいます。と同時に、わずか1年間の間に劇的な進化を遂げた「電化Miles」の姿を確認するためのアルバムではないかと思います。
●Musicians
#1~#3
Miles Davis / trumpet
Chick Corea / piano
Dave Holland / bass
Jack DeJohnette / drums
#4~#9
Miles Davis / trumpet
Chick Corea / piano
Keith Jarrett / organ
Dave Holland / bass
Jack DeJohnette / drums
Airto Moreira / percussion
Gary Bartz / sax
●Numbers
1. Miles Runs The Voodoo Down
2. Sanctuary
3. It's About That Time / The Theme
4. Directions
5. Bitches Brew
6. It's About That Time
7. Sanctuary
8. Spanish Key
9. The Theme
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