個性派ギタリストNguyen Leの2nd「Zanzibar」
Musician●Nguyen Le(guitar)
Title●Zanzibar(1992年)
■Amazon Franceより購入
新年、あけましておめでとうございます。
今年も当欄をお引き立てのほどよろしくお願い申しあげます。
といいつつも、実際にこの原稿を書いているのは12月初旬の年末の慌ただしい時期だったりします。もとより季節感などは完全無視のブログなので個人的にはまったく頓着していないのですが、まずはご挨拶まで。
さて、昨年の晩秋から年末にかけてボーナス狙いなのかはわかりませんが、多くの再発売ものや発掘音源のリリースが重なりました。個人的にはJimi Hendrixの未発表音源を収めた5CD+1DVDセットの登場が大きいと思いましたし、John Lennon没後30年なのかThe Beatlesの「赤盤」「青盤」のリマスター盤発売も結構な話題になったと思います。そういえばThe Beatlesの17作品がアップルレコード社とAppleとの「歴史的な和解」によってiTunes上でリリースされたのも昨年11月でした。
というわけで昨年末から当欄が実に強力にプッシュしています、超個性派ギタリストNguyen Le(グエン・レ)によるソロ第2弾です。良質なコンテンポラリー系ジャズの宝庫ACTレコードからのリリースです。1992年の作品。
参加メンバーはArt Lande(ピアノ)、Paul MCcandless(サックス)、Dean Johnson(ベース)、Joel Allouche(ドラム)というカルテット構成。
1st「Miracles」で少しだけ触れましたがやや手探り状態の感があった前作に比べて、格段に進歩というか、いよいよ本領発揮という感じです。というのも両親がベトナム出身という民族ルーツを惜しげもなく作品にも導入し、単なるフュージョン作品に終わらせることなく、西欧的な要素とアジアンテイストとの融合を貪欲に図っているのです。
これまで「ワールドミュージック」と呼ばれるジャンルでは似たような「融合」は見られましたが、どうも取って付けたような「違和感」が拭えませんでした。勝手な持論ですが、アングロサクソン系のミュージシャンがアジア的な要素を作品に導入した場合に起きる違和感なのではないかと思われます。しかし、アジアの血をひくミュージシャンが同じ試みをするとどうなるのか。これは前例がないと思われます。
オープニングの#1「Zanzibar」こそやや大人しめですが、2#「Sarugaku」は曲というよりも「お能」のように不気味に響くヴォイスが延々と続くなか、Nguyen Leのギターシンセがさらに不気味な雰囲気を醸し出しています。作品中、最も異色なナンバーです。
続く#3「Urbi」は一転してロックタッチの曲。連打される銅鑼が生み出す妙なポリリズムとNguyen Leによる国籍不明なフレーズが妙なバランスを醸し出しています。
やたら攻撃的な前半に対し途中はやや中だるみの感がありますが、後半の「Singe Pelerin」と「Lucie & Umbrae」で聴かせるこの世のものと思えない美しいソロはまさに絶品!ほかに類例が見られないこの超個性派ギタリストは、日本では無名に近いようですが、ギター好きの人にはぜひ勧めたい作品です。長い間、廃盤状態が続いていましたが、2005年にフランスで復刻されました。この機会にぜひ!
●Musicians
Nguyen Le / guitars,gt-synth,synth-programming & sequencing
Art Lande / piano,thumb piano
Paul McCandless / soprano saxophone,oboe,english horn,bass clarinet
Dean Johnson / acoustic bass
Joel Allouche / drums,percussion
●Numbers
1. Zanzibar
2. Sarugaku
3. Urbi
4. Isoar
5. Nomaco
6. Singe Roi
7. Omero
8. Lupi Pilu
9. Trace
10. Singe Pelerin
11. Lucie & Umbrae
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Paul McCandless が来日します。お知らせまで。9/24-25 新宿 Pit Inn です。
投稿: invs | 2011年9月11日 (日) 21時52分
invsさま
コメントありがとうございます。
貴重な情報ありがとうございます♪
投稿: 奇天烈音楽士 | 2011年9月19日 (月) 20時52分