ザ・ピーナッツがなんとKing Crimsonをカバー
Musician●ザ・ピーナッツ
Title●ザ・ピーナッツ・オン・ステージ(1972年)
■Amazonより購入
昨年からお世話になっている「Twitter」で昨年末、ごく狭い範囲で話題になっていた「ザ・ピーナッツ」。今さらいうまでもありませんが、1960年代から70年代にかけて活躍した双子による女性デュオです。若い方にとっては馴染みがないかもしれませんが、映画「モスラ」で「モスラ~や、モスラ~」と歌っていた2人と言えば思い当たる方もいるのではないでしょうか。姉の伊藤エミは引退後に沢田研二と結婚しています(後に離婚)。
どうして「Twitter」上で話題になっていたかというと、どなたかが「ザ・ピーナッツがKing Crimsonの『エピタフ』を歌っている」と呟かれたからです。「Twitter」の仕組みをご存じの方ならすぐおわかりのように、こうした「奇特な呟き」は瞬時に好事家に発見されてしまいます。発見した人は即座に自分の呟きとして発信することが必定なので、今度はほかのユーザーに広まることに。こうやっていわば「ねずみ講的に拡散」するのが「Twitter」の特性なのです。当然、私も「これは、驚き!」と呟いたので拡散に一役買ってしまったのですが、私の呟きに反応していただいたフォロワーの方(私の呟きをご覧いただいているTwitterユーザーのこと)の中で確実にお二人はこのアルバムを購入しています。
というわけで負けじ(?)と入手したのがこのライブ音源です。クレジットによれば1972年の「民音ステージ」でのライブであるとか。購入のきっかけはKing Crimson「エピタフ」を聴きたいがためですが、中身を見てさらに驚愕!なんとユーライア・ヒープ「対自核」やキャロル・キング「It's Too Late」までカバーしているのです。しかも、ライブで。
オープニングはその「対自核」で華々しくスタート。いまの時代では大編成の楽団がバックにつくことは滅多にありませんが、フル編成で2人を盛り立てています。アイアート・モレイアを思わせるモコモコとしたパーカッションをバックに実にファンキーなギターを弾いているのは故・山本とおるさんであるとか。ハードロックでスタートし今後は流れるように「It's Too Late」へ移るのですが、何の違和感も感じさせない見事な演出には本当に感心させられます。2人の素晴らしい歌唱力としい、一糸乱れぬ楽団間の連携といい、飽きさせることのない演出といい、どこをとっても非のうちどころがありません。これぞ本物のエンターテイメントです。果たしていまの歌謡界にこんなに素晴らしい歌唱、演奏が存在するでしょうか。録音やカラオケばかりに頼ってばかりいたために、生の歌、生の演奏で人を感動させるという音楽の本来の姿を忘れてはいないでしょうか。そして、聴く側もいつの間にかそんな脆弱な環境に慣らされてはいないでしょうか。さまざまなことを考えてしまいます。
お目当てのKing Crimson「エピタフ」はステージ中盤になって登場。もちろん演奏そのものは本家Crimsonとは比べようもありませんが、ギターはエレキとアコースティックの2本で弾き分けていますし、メロトロン的な音も十分に威力を発揮しています。ボーカルにいたってはGreg Lakeよりもある意味では上手いのではと思わせる一面もあります。老婆心ながら付け加えると、「エピタフ」はKing Crimsonが1969年にリリースした1st「クリムゾンキングの宮殿」に収められた曲。シンセとメロトロンを駆使したシンフォニックで幻想的な名曲です。ちなみに昨年大ヒットした坂本冬美「また君に恋している」が同じアルバム収録の「Moon Child」という曲に酷似 していることでも話題になりました。
冷静に考えてみるとこのライブが行われた1972年という時代は、オリジナルのリリースからわずか3年しか経っていません。しかも、まだ当時の日本では一般的とは言いがたいプログレからの選曲で、ザ・ピーナッツのファン層を考慮するとおそらくお客さんの大部分がこの曲どころかKing Crimsonの存在を知らなかったのではないでしょうか。それでも曲が終わると巻き起こる万雷の拍手。渾身の演奏は、たとえ知らない曲であっても聴く者の心を確実に揺さぶるのです。ちなみにライブ前半のアレンジは宮川泰先生が担当。宮川先生が選曲にもタッチしたかは不明ですが、おそろしく大胆でチャレンジングな試みです。書きたいことは山ほどありますが、今日はここら辺で。
途中、妙なMCが入りますが、当時渡辺プロダクションに所属していた岸部シローの声です。これは本当の蛇足ですが(笑)
♪おまけに元フォーリーブスの北公次が歌うエピタフです。トホホな感じに仕上がっています
♪何とヒデキまでもがエピタフをカバー!こちらが音源です。ファンはどこまで認識していたかが気になります。だからといってオリジナルを聴くわけないでしょうね
●Musicians
ザ・ピーナッツ
●Numbers
1. 対自核
2. It's Too Late
3. Proud Mary
4. 東京の女~サンフランシスコの女~リオの女(メドレー)
5. 情熱の花
6. ふり向かないで
7. ウナ・セラ・ディ東京
8. 恋のフーガ
9. バック・オブ・ブ・ガルー
10. エピタフ
11. 監獄ロック~レモンのキッス~ダイアナ~恋の片道切符~ミスター・ベースマン~悲しき雨音~ビー・マイ・ベイビー(メドレー)
12. ゴッドファーザー
13. 可愛い花
« DPのギタリストSteve Morseの初期作品「Coast To Coast」 | トップページ | 怪人Bucketheadが参加!Hellborgの「Octave of the Holy Innocents」 »
「歌謡曲」カテゴリの記事
- 朱里エイコの「Now On Stage」が初CD化(2014.07.06)
- 大物ミュージシャンが参加したアン・ルイスの「K-ROCK」(2014.03.30)
- ザ・ピーナッツがなんとKing Crimsonをカバー(2011.01.12)
- 「しばたはつみ」つながりで朱里エイコさんのベスト集(2010.05.18)
- しばたはつみさん、死去(2010.03.29)
この記事へのコメントは終了しました。
« DPのギタリストSteve Morseの初期作品「Coast To Coast」 | トップページ | 怪人Bucketheadが参加!Hellborgの「Octave of the Holy Innocents」 »
コメント