欧米のギタリストは真似できません。Nguyen Le「Million Waves」
Musician●Nguyen Le(guitar)
Title●Million Waves(1995年)
■Amazonより購入
両親がベトナム人でフランス育ちというギタリスト、Nguyen Le(グエン・レ)による初期のソロアルバムです。1995年に良質のジャズアルバムを送り出すACTレーベルからリリースされています。参加メンバーはPat Methenyなどとの共演で知られる売れっ子ドラム奏者Danny GottliebとDieter Ilg(ベース)というトリオ構成。
日本でのNguyen Leの知名度はあまり高くないと思われますが、フランスやイタリアを中心としたヨーロピアンジャズ界では大人気のギタリストで、ソロ活動のほなに多くのセッション活動をこなしていて、最近では映画音楽も手がけているようです。そのプレイスタイルは独特すぎるほど独特で、ジャズを基本としていながら、ロック、ベトナム民族音楽、北アフリカ門族音楽などの要素を貪欲に取り入れつつ、独自のスパイスを加味して、唯一無比の世界を作り上げています。ギタリストとしてのスタイルは、Scott HendersonやAllan Holdsworthなどのテクニカル系ギタリストからの大きな影響を受けつつ、Jimi Hendrixからも相当にインスパイアされています。先に触れた多層におよぶ音楽的要素と多くの引き出しを秘めたプレイスタイルとが渾然一体となって、まか不思議で万華鏡のようなサウンドが完成するのです。
そんなわけで実に多面的な魅力をもつプレイヤーですが、何よりも特徴的なのは絶妙なアーミングです。あまりにも華麗で繊細な味わいをもつアーミングは、達人HoldsworthやJeff Beckあたりとはまた違った魅力を秘めています。たとえが難しいのですが欧米的な発想では考えつかない、アジア的なアーミングとでもいいましょうか。オープニング曲「Mille Vagues」は韓国の民族音楽をヒントに作られた曲ですが、繊細で微妙なニュアンスを再現できるのは名ギタリスト多しといえ彼以外にはいないでしょう。
また、ジミヘンフリークぶりを存分に発揮しているのが「Little Wing」をカバー。ロックテイストを醸し出しながら、彼独自のアレンジを加えて名曲に新たな生命を吹き込んでいます。
ギタープレイヤーとして、さまざまな音楽的要素を圧倒的なテクニックで表現するととに、アジア人であるわれわれの心の奥底まで揺さぶるプレイヤーは、Nguyen Le以外に思いつきません。まさに「音の一人多国籍軍状態」を体現するこの素晴らしいギタリストですが、残念ながら日本では無名に近いというのが不思議でなりません。
●Musicians
Nguyen Le / guitar, guitar-synthesizer, e-bow
Dieter Ilg / acoustic bass, mouth jive
Danny Gottlieb / drums & percussion
●Numbers
1. Mille Vagues
2. Trilogy
3. Be Good
4. Mango Blues
5. Butterflies & Zebras
6. Little Wing
7. El Saola
8. Sledge
9. Moonshine
10. I Feel Good
« 新進気鋭のテクニカル系ギタリストAndy Jamesの1st | トップページ | 幻のRon Thal 1stが再発売されてました♪ »
「ジャズギター」カテゴリの記事
- David Gilmore / Transitions(2017年)(2017.04.08)
- Kurt Rosenwinkel / Caipi(2017年)(2017.04.02)
- Wolfgang Muthspiel,Mick Goodrick / Live At The Jazz Standard(2010年)(2016.08.06)
- John Abercrombie / Within A Song(2012年)(2016.07.03)
- Albert Vila / The Unquiet Sky(2014年)(2016.06.25)
« 新進気鋭のテクニカル系ギタリストAndy Jamesの1st | トップページ | 幻のRon Thal 1stが再発売されてました♪ »
コメント