ノルウェーが生んだ至宝The 3rd & The Mortalの2nd
Musician●The 3rd & The Mortal
Title●Painting on Glass(1995年)
■ディスクユニオンで購入
ノルウェー出身の6人編成のゴシックメタルバンド「The 3rd and the Mortal」による2ndです。1995年の作品。この作品から女性ボーカルAnn-Mari Edvardsen(アン・マリー・エドワードセン)を新たに迎えています。
当欄で「ゴシックメタル」を取り上げるのはおそらくお初だと思いますので、まずはひとくさり。ネーミングからもわかるようにHeavy Metalの一派であることは間違いないのですが、その道の好事家の説では1987年にスイスのHeavy MetalバンドCeltic Frostのアルバム「Into To The Panndimonium」がその始まりとされています。ですから、一派としての歴史はまだ新しいということになります。その後、イギリスのParadise Lostによってある程度定型化されながら、TIAMAT、Theatre Of Tragety、Anathemaあたりが代表バンドと言えるのではないでしょうか。なかでもTheatre Of Tragetyは女性ボーカルを迎えてフロントに置いたため「フィメール系ゴシックメタル」とも言われます。
「ゴシックメタル」のサウンド的な特徴というとこれまた諸説分かれるところですが、私なりの解釈では、
①、男のデス声と紅一点的な女性ボーカルとを組み合わせることで、美醜の対比を演出するのが典型パターン。
②、サウンドは元をたどればBlack Sabbathに通じるHeavyかつ陰鬱で退廃したサウンドが基調。また、プログレなどとの親和性を感じさせることも多い。
③、多くはヨーロッパ出身でしかもプロテスタント(新教)が中心の地域から生まれることが多い。具体的にはイギリス、北欧諸国、オランダ、ドイツが中心で、フランスやイタリアなどのラテン民族やカトリック国ではあまり見られない。
ということなのかと思っていました。女性ボーカルを「●嬢」と記載することがなぜか習わしとなっています。
今回紹介するのは北欧ノルウェー出身の「The 3rd and the Mortal」ですが、ゴシックメタルの重大特徴のひとつと言える「男デス声」が一切排除されている時点で極めて特異な存在であるとされています。作品全体を支配する何とも陰鬱でダークな世界は、確かに3本のエレキギターによる重苦しいリフによる部分が大きいのですが、トロンボーンなどの管楽器の大胆な導入、幾重にも多層処理されたキーボードによるブ厚い音の壁、そして女性ボーカル「Ann-Mari嬢」による何とも形容しがたい浮遊感あふれるボーカルなどによって、類型を一切許さない独自の世界観を構築しています。
ギターは時にKing CrimsonのRobert Fripp風でもあり、その意味ではプログレ的な要素も感じさせます。また、全体を覆い尽くす不思議な浮遊感は、ドイツのジャズレーベルECMが70年代中盤あたりで得意とした癒しの音空間をも思い起こさせます。言ってみればひとつのキーワードだけでは括ることができないほど、実に多面的なものを感じさせるこの「The 3rd and the Mortal」。すでに2枚目にして特異なキャラをすでに確立させています。
●Musicians
Rune Hoemsnes / drums,percussion
Bernt Rundberget / bass
Ann-Mari Edvardsen / vocal,keyboard
Trond Engum / guitars
Geir Nilssen / guitars,keyboards
FinnOlav Holte / guitars,keyboards,tapes
●Numbers
1. Magma
2. Commemoration
3. Crystal Orchids
4. Persistent And Fleeting
5. White Waters
6. Aurora Borealis
7. Dreamscapes
8. Aurora Australis
9. Azure
10. Veiled Exposure
11. Stairs
12. Eat The Distance
13. Vavonia part 3
14. Horizons
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