北欧が生んだ激辛料理「Scorch Trio」1st
Musician●Scorch Trio
Title●Scorch Trio(2002年)
■ディスクユニオンで購入
フィンランド出身のフリー系ギタリストRaoul Bjokenheim(ラウル・ビューケンヘイム)が結成したギター、ドラム、ベーストリオによるインストアルバムです。リズム隊はフリージャズユニット「Atomic」出身のIngebrigt Haker Flaten(bass)とPaal Nilssen-Love(drums)というやはり北欧人脈です。のっけからドラムとベースがのた打ち回り、ディストーションが極限にまで効いたBjokenheimのギターが最初から最後まで吼えまくるという何とも恐ろしい作品。あえていえばフリー&アヴァンギャルド系ジャズなのですが、そうした範疇に押し込めて考えるのは至難の技です。そうです。つまりは「Scorch Trio」というジャンルの音楽なのです。
Bjokenheimのプレイは聴き方によっては、Marc Ducretあたりに通じるものがありますが、Marc Ducretがある程度はジャズを意識しているのに対して、Bjokenheimは完全フリーでしかも北欧に古くから伝承される土着フォークロアを意識しているという特異なスタイルをとっています。しかも、激烈な攻撃性を秘めているという実に「やっかいなタイプ」なのです。かといって同じ変態系のヘンリー・カイザーのような茶目っ気は一切なく、あくまでも真摯な態度で聴く者を攻撃してきます。どこから飛んでくるのかまるで予測不可能な変態フレーズの連続に、聴いているうちに確実に脳幹が麻痺してきます。
たとえば真夏の盛りにうっかりと「青唐辛子入りの30倍カレー」を口にしてしまったような破壊力。それでいて、けっして聴く者を飽きさせることのない超絶技巧の博覧会。形容としては、自分でも意味不明ですが、この作品に臨むにあたってはそれだけの覚悟と精神力が必要です。というわけでとても一般的な音楽とは言えませんが、同じフリー系でも変態ギター系が好きな人に方にはお勧めしたい「怪作」です。
●Musisians
Raoul Bjokenheim / guitar,viola,gamba
Ingebrigt Haker Flaten / bass,electronics
Paal Nilssen-Love / drums,percussion
●Numbers
1. Oikosulko
2. Sade
3. Salaa
4. Taajus
5. xxx
6. Vittula
7. Paahtaa
« JOHN McLAUGHLIN / HEART OF THINGS LIVE(1998年) | トップページ | ECMの名手大集合!Townerの「Solstice」 »
「フリージャズギター」カテゴリの記事
- David Fiuczynski / Flam! Blam! Pan-Asian Micro-Jam!(2016年)(2016.04.24)
- Marc Ducret / Le Sens De La Marche(2007年)(2016.03.27)
- KRAKATAU / ALIVE(1989年)(2015.11.28)
- SCORCH TRIO WITH MARS WILLIAMS / MADE IN NORWAY(2011年)(2015.10.11)
- RAOUL BJORKENHEIM / ECSTASY(2014年)(2015.05.16)
コメント
« JOHN McLAUGHLIN / HEART OF THINGS LIVE(1998年) | トップページ | ECMの名手大集合!Townerの「Solstice」 »
Bjokenheim&Scorch Trio はチェックしています(^ ^)y
HOTに演奏するBjokenheimは、確かにDucretっぽいと思うこともありますし、コルトレーンのカバー「Interstellar Space Revisited」(99年)をリリースしているギタリストNels Clineに通じる印象も受けます。
なにはさておき Scorch Trio のMyベスト盤は「Luggumt」(04年)ですねぇ~
オープニングからして冴えてます。
特筆すべきはクリーン~クランチという抑えたトーンでBjokenheimが演奏する、抑制&コントロールが効いた3曲目のBrennj Fynnjです。
ここでのトリオのインタープレイは、あたかも譜面がある曲のごとくに緊密です。目からウロコ的ギタートリオによるフリーの名演奏だと感じます。
今後も要注目のギタリスト&ユニットですね。
ではでは~
投稿: betta taro | 2010年11月27日 (土) 08時53分
あまりにもLuggumtが素晴らしいので、しつこく加筆させていただきますm(_ _)m
フリーのジャギ作品だと、怒涛の様な轟音に(リスナーが)身をさらし、自身を滅してゆき、無我の境地に至ってしまう?という系統の作品が多い中…
「Luggumt」のBrennj Fynnjは、ミズミズしさまで感じさせる繊細さと、フリージャズの真骨頂である自由に飛翔する様とを兼ね備えた、まことに稀有な作品だと思います。
ビョーケンハイム&スコーチ・トリオは、数あるギター系フリーユニットのなかでも頭ひとつ抜きん出た存在の様な気がします。
ではでは~
投稿: betta taro | 2010年11月28日 (日) 06時04分
コメントありがとうございます。
「Luggumt」私も大好物です。毎日聴くのはさすがに辛いですが、たまに聴いて爆音にさらされております。
ご存じと思いますが、12月に彼らの新譜が出ます。すでにiTunesでは配信が始まっていますが、リアルCD派の私は辛抱強く待っている次第です♪
ところでこのトリオのライブCDが限定発売されたのですが、すぐに売り切れてしまったようです。ずっと探していますが、入手は難しいようです。悔しいな~。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2010年11月28日 (日) 13時01分