1973年の日本にこんな凄いプログレが存在!Mandrake
Musician●Mandrake
Title●Unreleased Materials Vol.1(1973年、1978年)
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P-MODELのリーダーである平沢進が結成した前身バンド「MANDRAKE」時代に残した未発表音源を集めたアルバムです。個人的にはこの「MANDRAKE」をリアルタイムで知らないためにどうしても後追いの悔しさは隠せないのですが、当時の日本プログレ界では「美狂乱」「新月」と並ぶビッグネームだったとか。しかし、バンドそのものが公式音源を残さないまま消滅してしまったので、その意味では最初にして最後のオフィシャルリリースと言えるかもしれません。1973年と1978年のスタジオテイクと1978年のライブ音源で構成されています。
音質や音のバランスはあくまでも非公式な録音だったりライブ音源だったりするわけで、正直に言ってあまり良いとは言えません。ですから、綺麗な音を期待する人は手を出さないほうが賢明と言えます。それでも、このアルバムにぎっしりと詰まった溢れんばかりのポテンシャルと完成度の高さには正直、ド肝を抜かれてしまいました。オープニングの「飾り窓の出来事」はアルバム中いちばんのキラーチューンとも言える曲で、あくまでもソリッドな平沢のギターと不安感を極限にまで煽りたてるボーカル、メロトロンを自由自在に操る田中靖美、そして阿久津透によるのたうち回るような複雑なベースライン。どれをとっても一級品です。しかも、これが1970年の中盤での音であることに、さらに驚かされます。確かにプレイや楽曲にはKing CrimsonやYESからの強い影響を感じますが、先達の優れた資産を受け継ぎつつ日本的な叙情性を適度にブレンドすることで、完全なオリジナルを確立させています。しかも、この時期は「美狂乱」はデビュー前なのです。
ラストの「錯乱の扉」は何と1973年のライブ音源です。73年というとCrimson的には「Red」以前の時期です。プログレの発祥地から遠く離れた極東の地で、これほどの高いクオリティとポテンシャルをもつバンドが存在したこと自体が奇跡です。もしこの音源がリアルタイムでリリースさせたら、プログレの勢力図も大きくとは言わないまでもかなり変化したのではないでしょうか。そんな貴重な音源を発掘してくれたベル・アンティークの英断にはひたすら感謝です。
冷静に考えてみると、当時の日本のプログレは四人囃子が孤塁を守っていたという状況です。彼らが商業ベースに乗るか乗らないかのグレーゾーンを狙っていたのに対して、MANDRAKEのようなテクニカルで先鋭的なバンドは、地下に潜るしか方法がなかったのかもしれません。しかし、あと5年世に出るタイミングが遅れていたと仮定したら、間違いなく日本を代表するプログレバンドになっていたことでしょう。
●Numbers
1. 飾り窓の出来事
2. 週末の果実
3. 犯された宮殿
4. 錯乱の扉
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