香港出身、米国育ちのJAZZギタリスト、Eugene Pao
Musician●Eugene Pao(guitar)
Title●This Window(1999年)
■Yahoo! オークションで購入
アジアトップクラスの実力派ギタリスト、Eugene Pao(ユージン・パオ)による2ndリーダーアルバムです。例によって日本での知名度はそれほど高いとは言えませんが、経歴や参加ミュージシャンの豪華さをみると大変な実力者であることがわかります。
ライナーを頼りに簡単なプロフィール紹介を。Paoは香港生まれでシアトル育ち。生年は1959年ですから、世代的にはポール・ボーレンベックやスタンリー・ジョーダン、フランク・ギャンバレなどと同じくらいですね。21歳にアメリカでプロデビューを果たしますが、その後香港に帰り、当地ではポップミュージックや映画音楽の仕事をしていたとか。また、大物ミュージシャンのバックを務めることも多く、サイモン&ガーファンクルやマイケル・ブレッカー、そして渡辺香津美との共演で来日も果たしています。
さりげなく豪華なキャリアですが、この作品を聴くかぎりは割と正当派のコンテンポラリー系ギタリストとみました。パット・メセニー、ジョン・アバークロンビー、ジョン・スコフィールドなどの諸先輩方からよき伝統を受け継ぎ、現代風にアレンジしたスタイルですね。たとえれば、ポール・ボーレンベックをワイルドに、でもウォルフガング・ムースピールほど変態にはならないという絶妙なライン。でも、ジュリアン・コリエルよりはジャズっぽいというイメージです。
また、参加ミュージシャンの豪華さにも目を見張られます。ドラムに重鎮・ジャク・デジョネット、ベースにマーク・ジョンソンというこれ以上望めないベテランを据えていることからもPaoに対する高い期待値を感じさせます。ピアノは若手実力派、ジョーイ・カルデラッツォ。今回ベースはマーク・ジョンソンですが、ソロデビュー作ではチック・コリアとの共演で知られるジョン・パティトゥッチが参加した模様です。
肝心のプレイぶりですが、先に触れたように典型的なコンテンポラリー系の系譜を汲むものですが、時にロックタッチの激しいソロを聴かせるあたりは、「この人、アピールの仕方がわかっているな」と感じさせます。同じアジア系のギタリストとしては先輩格のNguyen Le(グエン・レ)を思い浮かべますが、Nguyen Leが自らの音楽的な出自であるベトナム音楽にこだわっているのに対し、Paoさんは現時点ではあまり民族的な要素に興味がないようです。音楽的にもプレイ的にも完全にアメリカナイズされているようです。その後のPaoさんの活動内容に関しては不明ですが、アジア音楽との融合を図っても面白いのではないかと思います。
●Musicians
Eugene Pao / guitars
Jack DeJohnette / drums
Marc Johnson / bass
Joey Calderazzo / piano,fender rhodes
●Numbers
1. Off Side
2. Free Spirits
3. E Preciso Perdoar
4. Milestones
5. This Window
6. Beautiful LOvee
7. Are You Sure,You Are Sure
8. Round Trip
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コメント
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Eugene Paoは、①の盤から注目していました。
①もデジョネットが参加しており、故ブレッカーとJohn Patitucciとのオールスターカルテットで、しかも、ジャズの老舗レーベルsomethin'elseからのリリースという事もあって内容も期待通りに濃かったです。
ちなみに①の盤の前にOUTLET featuring EUGENE PAO (1990) というファースト盤(漁盤中)がありますので、今回の記事の盤(漁盤中)は、第3作目になるかと思います。
ちなみに、②は持っていますが自作曲が減り、スタンダードナンバーが増えています。芸風は変わりません。
③も持っていますが、これはイマイチでした(- -;
W先生のかわりに、Nguyen Leが参加していたら、もっと面白い作品なっていたのではと夢想しています。
YOU TUBEで検索すると地元香港ではロック系の演奏もしている様で、記事にある様にジャズ一辺倒の御仁ではない様です。
①By The Company You Keep / Eugene Pao (1994)
②Pao / Eugene Pao & Mads Vinding Trio (2002)
③Sam Guk Ji / ASGP - Asian Super Guitar Project (2006)
渡辺香津美/Eugene Pao/Jack Lee ほか
ポール・ボレンバック~アダム・ロジャース位の立ち位置のギタリストが好みなのですが、PAOはまさにその一人です。
日本人でも、そのレンジのギタリストを必死に?探しているのですが、秋山一将さん、滝野聡さん、東海林由孝さん、Gene Essさん位しか発見できず寂しい限りです。
PS Nguyen Leの音源はamazonのレビューアーの某ab様の評価をみてホトンドそろえた私でした(^ ^;
投稿: betta taro | 2010年10月 5日 (火) 21時07分
コメントありがとうございます。
何だか偉そうに書いてしまいましたが、実はEugene Pao初体験でした。
①は某巨大販売サイトでトンでもない値段がついていたので、まずはお試しの意味で購入しました。
仰るようにボーレンベック~ロジャースあたりのラインはいそうでいないですよね。
Nguyen Leの件、まことに痛み入ります(笑)。リーダー作は最近出ておりませんが、90年代にこっそり客演した作品など相変わらず漁盤しております♪
投稿: 奇天烈音楽士 | 2010年10月10日 (日) 13時46分
あけましておめでとうございます。
レスコメントたくさんありがとうございます。
↓Mikkel Ploug Group - Harmoniehof (2009)の音源を参考にアップロードしました。
http://xfs.jp/dVPtd
よろしければどうぞ。
解凍パスワードは私のメールアドレスの最初の3文字です。
今年のご活躍とご健勝を祈念しております。 良盤の紹介記事も大変楽しみにしております。
投稿: betta taro | 2012年1月 2日 (月) 07時06分
betta taroさま
コメントありがとうございます。
またしても亀レス、どうかご容赦願います。
音源ありがとうございます。
早速DLしてみます。
今年もどうか当欄をご贔屓にお願い申し上げます。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2012年1月 7日 (土) 11時34分
レスコメントいただき恐縮です。
UPしたデータ中に私の勘違いコメントがあるかとおもいますが、無視して頂ければ幸いですm(_ _)m
投稿: betta taro | 2012年1月11日 (水) 08時25分
betta taroさま
コメントありがとうございます。
あまり知られていないミュージシャンを記事にする場合、
事実関係の確認に苦労しますね。
おかげでWikiの英語版にご縁ができました。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2012年1月25日 (水) 22時48分