Sonny Sharrock晩年の傑作「Seize The Rainbow」
Musician●Sonny Sharrock(guitar)
Title●Seize The Rainbow(1987年)
■ディスクユニオンで購入
かつてはマイルズ楽団の一員として活躍し、また自身のソロ作品「Black Woman」などで一躍有名になった「元祖ヘタウマ系ギタリスト」Sonny Sharrock(ソニー・シャーロック)による1987年録音作品です。Sharrockは1994年に亡くなってしまいますので、自身にとっては晩年の作品と言えるでしょう。
Sharrock自身、謎の多い人物で1970年代中盤までの活躍は確認されているものの、以降は「引退生活」に入っていたそうです。思えば1970年代中盤という時期はフリー&アヴァンギャルド系ジャズが衰退に向かうタイミングで、活躍したくてもその場が与えられなかったというほうが正確かもしれません。そんなSharrockを再び表舞台へと引っ張りだしたのが、フリー系ミュージシャンの重要人物であるBill Laswell(ビル・ラズウェル)。Laswellが率いる「Last Exit」にSharrockを三顧の礼をもって迎え入れることによって、再び本格的な演奏活動を再開します。Last Exitは1986年に来日し、そのライブ音源も残されていますが、NYの先鋭的ジャズシーンとSharrockの野太いギターが融合し、奇天烈なカオスの世界を聴かせてくれています。
Last Exitでの復活劇で完全に息を吹き返したSharrockは、まず1986年にギターソロ「Guitar」をリリース。その後、自身のバンド「Sonny Sharrock Band」を結成し、満を持してこのアルバムで「完全復活」の雄叫びを上げます。Last Exitをお聴きの方ならおわかりと思いますが、相変わらず野太く暴力的なギターソロは健在です。しかし、このアルバムではLast Exitほどフリーに走らず、楽曲そのものは意外とキャッチーで明快な曲調が中心なので、フリー系に馴染みがない方でも抵抗なく入っていけるのではないでしょうか。特にオープニング曲「Dig Dog」は思わず踊り出したくなるような軽快なロックナンバーで、Sharrockの新しい一面が感じられます。
とは言え、これはあくまでもブラフ的なオープニングでうっかり油断しているとSharrockの毒牙にかかってしまいます。暴力的にかきむしられるギター弦、巧いのか下手なのかよくわからないのたうち回るソロ、不規則なカッティング…まさにやりたい放題という感じです。ラスト曲「Sheraserhead's High-Top Sneakers」にはプロデューサー役を務めたBill Laswellも6弦ベースをもって参加しています。
●Musicians
Sonny Sharrock / guitar
Abe Speller / drums
Melvin Gibbs / bass
Pheeroan Aklaff / drums
Bill Laswell / bass
●Numbers
1. Dig Dog
2. My Song
3. Fourteen
4. J.D Schaa
5. Seize The Rainbow
6. The Past Adventures Of Zydeco Honeycup
7. Sheraserhead's High-Top Sneakers
« イタリアのテクニカル系ギタリストUmberto Fiorentinoによる妙なスタンダードカバー作 | トップページ | Greg HoweのスーパートリオExtraction »
「フリージャズギター」カテゴリの記事
- David Fiuczynski / Flam! Blam! Pan-Asian Micro-Jam!(2016年)(2016.04.24)
- Marc Ducret / Le Sens De La Marche(2007年)(2016.03.27)
- KRAKATAU / ALIVE(1989年)(2015.11.28)
- SCORCH TRIO WITH MARS WILLIAMS / MADE IN NORWAY(2011年)(2015.10.11)
- RAOUL BJORKENHEIM / ECSTASY(2014年)(2015.05.16)
この記事へのコメントは終了しました。
« イタリアのテクニカル系ギタリストUmberto Fiorentinoによる妙なスタンダードカバー作 | トップページ | Greg HoweのスーパートリオExtraction »
コメント