知られざる名ギタリスト、Billy Rogers唯一の作品
Musician●Billy Rogers(guitar)
Title●The Guitar Artistry Of Billy Rogers(1992年)
■ディスクユニオンで購入
元ジャズクルセイダースのギタリスト、Billy Rogers(ビリー・ロジャース)が1992年に残した唯一のソロアルバムです。正確に言うとBilly Rogersが薬物中毒が原因で亡くなった後、生前に親交があったDave StrykerがRogersが残していた音源を集めて編集してできあがったのがこのアルバムです。アルバムスリーブには、Pat Metheny、John Scofield、Joe Sample、Jack McDuff、Lonnie Smithなどの錚々たるジャズメンたちが賛辞の言葉が寄せられていますが、彼がいかに「Musician's Musician的な存在」であったかがわかります。
Billy Rogersが生前に「正式に」残した音源であるジャズクルセイダース時代の音源は「Images」の1枚のみです。こちらはラリー・カールトンの後釜ギタリストとして加入した経緯もあってかなり控えめなプレイでした。結局、解雇同然の扱いでRogersは1枚のみに参加しただけでグループを去ることになります。その恨みつらみではありませんが、この作品ではこれでもかとばかりに弾きに弾きまくっています。目にも止まらぬ超絶技巧の連続、ちょっとした隙間を見つけるとガンガン入り込んでくる饒舌さは、ギター好きにとっては至福の連続に違いありません。かといってテクニック至上に陥ることなく、きっちりと歌いあげる魂のプレイの連続は確かにプロをも納得させる実力を全身で感じさせてくれます。
Rogersは基本的にはハードバップ系のプレイヤーですが、速いパッセージはもちろん、唯一の歌入りであるラスト「Good Morning Heartache」では、涙があふれ出てくるくらいの美しいバラードも聴かせてくれます。まさに万能にして、天才ギタリストです。
かえすがえすもその夭折が惜しまれますが、知られざる天才ギタリストに巡り会えることができたことだけでも、我々は感謝しないといけないのかもしれません。
●Musicians
Billy Rogers / guitar
Jay Anderson / bass
Jeff Hirshfield / drums
Dave Stryker / rhythm guitar
Linda Cunningham Giambalve / vocal on Good Morning Heartache
●Numbers
1. Billy's Bop
2. My Funny Valentine
3. Tell Me A Bedtime Story
4. How Insensitive
5. Egocentric Ions
6. I've Grown Accustomed To Her Face
7. ESP
8. Body And Soul
9. Fee Fi Fo Fum
10. Good Morning Heartache
« 豪州出身のコンテンポラリー系ギタリスト、James Mullerの3rd | トップページ | とてもソロ作品とは思えないTownerの「Blue Sun」 »
「ジャズギター」カテゴリの記事
- David Gilmore / Transitions(2017年)(2017.04.08)
- Kurt Rosenwinkel / Caipi(2017年)(2017.04.02)
- Wolfgang Muthspiel,Mick Goodrick / Live At The Jazz Standard(2010年)(2016.08.06)
- John Abercrombie / Within A Song(2012年)(2016.07.03)
- Albert Vila / The Unquiet Sky(2014年)(2016.06.25)
コメント
« 豪州出身のコンテンポラリー系ギタリスト、James Mullerの3rd | トップページ | とてもソロ作品とは思えないTownerの「Blue Sun」 »
この盤は大変貴重な音源だと思います。
かなり昔、たまたまディスクユニオンあたりでジャケット買いし、アタリの盤だったので嬉しかった事を思い出しました。
この方のギターの超絶奏法?は、ビレリ・ラグレンやトニー・パローンあたりで聴くことのできる、ロマ系のテクニックの様な気がします。
私的には、比較的新し目のスタンダードナンバー「ESP」をとりあげている点が美味しいと思います。
本人逝去後に、惚れ込んだデイブ・ストライカー(ジャズギターのメインストリームにいる大御所)が、作品化したという美談?も泣かせます。
夭逝が惜しまれるとの奇天烈音楽士さまのコメントに深く賛同します。
ではではm(_ _)m
投稿: betta taro | 2010年9月29日 (水) 20時50分
コメントありがとうございます。
このアルバムは友人から勧められて購入しました。
凄いですよね。テクニカルかつ歌うギターはなかなかいそうでいませんよね。
存命だったらどんなギタリストになったのだろうと思います。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2010年10月 3日 (日) 16時15分