Jeff Beckのオフィシャルブート盤第1弾
Musician●Jeff Beck(guitar)
Title●Jeff Beck Live at B.B.King Blues Club & Grill(2003年)
■ディスクユニオンで購入
65歳を超えてもいまなおロックギターの頂点を極める孤高のギタリスト、Jeff Beck。つい最近「Emotion & Commotion」という待望のスタジオ盤をリリースしましたが、それまではライブ盤がリリースされるだけでファンをヤキモキとさせてきました。このアルバムはそのヤキモキの第1弾ともいえるライブ音源です。ご存知のようにJeff Beckはオフィシャルなライブ音源が極端に少なく、このアルバムは何と「Live Wired」(1975年)以来、28年ぶりの音源になります。
さて、このライブ音源が特異な存在といえるのは「一切のオーバーダビングなどのスタジオでの加工が行われていない」ことに尽きます。ご存知のように、世間で流通しているライブ盤は生の素材がそのままリリースされるケースは希で、多くはいくつもの音源から選りすぐり、時には後から音源を追加した「お化粧後」の姿で我々の前に姿を現します。有名な例で言えばKing Crimsonの「USA」は、本来その場にいなかった鍵盤楽器奏者Devid Crossがスタジオでプレイした音源を追加したうえでリリースされましたが、それが御大Robert Frippの逆鱗に触れてしまい、長らく廃盤状態に追い込まれるという「悲劇」まで引き起こしています。
いわばライブ音源の常識を覆すような「生Beck」を堪能できるライブ盤ですが、録音そのものは2003年9月10日、NYにあるLive at B.B.King Blues Club & Grillで行われました。もちろんB.B.Kingと一緒というわけではありません。メンバーはUKで一躍有名になったTerry Bozzio(dr)、Tony Hymas(key)というトリオ構成。これ以上望めないという豪華な中身なのですが、なぜかファンの間では評価が極端に分かれているようです。というのも、このライブ音源は当初はオフィシャルHPでのみ販売され店頭発売は一切なかったので、いわば「ファン限定」の扱いでした。それなのに、のちになって「正規盤」としてリリースされたわけで、いわばファン心理を逆撫でするような販売戦略には確かに違和感を感じます。
この「オフィシャルブート先行発売」→「正規盤リリース」作戦は、2006年の「Official Bootleg USA」でも展開され、さすがの私も「またかよ、いい加減にせんかい」の印象を受けました。さすがにこれでは旗色が悪いと判断したかどうかはわかりませんが、2007年リリースの「ロニー・スコッツ・クラブ」では、「オフィシャルライブCD」→「ボーナストラック付きDVD」作戦に転じました。どちらにしても、ファンは2度買いを強いられるわけで、阿漕といえば阿漕な商売です。もちろんJeff Beck本人が考え出した商法ではないと思いますが、ファン心理をあまり弄ぶようなことはしないでほしいと思います。
こうした大いに問題ありの商法は別としても、ライブ自体は素晴らしいの一言です。やはりTerry Bozzioの加入はとてつもない大きなパワーを作品に吹き込んでいます。重低温のように五臓六腑を刺激するリズム隊の破壊力は、80年代から世間を浸食した軟弱なフュージョンブームをあざ笑うような気概を感じさせます。先に触れたように一切のスタジオワークを施していない生々しいライブ。ところどころで生じるミストーンもそのまま収録されています。逆に、そんなところまで含めて「ギターの現人神」の生の声、ご託宣に触れることができる希有な作品だと思います。
言わずもがなですが、14曲目「A Day In The Life」はご存知ビートルズのアルバム「サージェント・ペパーズ~」のラスト曲です。Beckがこの曲を好んで演奏し始めたのは、この頃からではないでしょうか。
●Musicians
Jeff Beck / guitar
Tony Hymas / keyboard
Terry Bozzio / drums
●Numbers
1. Roy's Toy
2. Psycho Sam
3. Big Block
4. Freeway Jam
5. Brush With The Blues
6. Scatterbrain
7. Goodbye Pork Pie Hat
8. Nadia
9. Savoy
10. Angel(Footsteps)
11. Seasons
12. Where Were You
13. You Never Know
14. A Day In The Life
15. People Get Ready
16. My Thing
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