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2010年8月25日 (水)

メジャー移籍第1弾!JBUのFree Lancing

Dscf2216






Musician●James Blood Ulmer(guitar)
Title●Free Lancing(1981年)
■ディスクユニオンで購入

フリージャズの帝王オーネット・コールマンが提唱する「ハーモロディック理論」の継承者、James Blood Ulmer(ジェームス・ブラッド・ウルマー)による初期ソロ作品です。1981年リリース。Ulmerが世に知られるようになったのは1981年リリースの「Are You Glad To Be In America?」あたりからだと思われますが、実はそれ以前のキャリアが大変長いようで、実は1960年代前半からプロ活動をスタートし、ジャズオルガン奏者の大御所、Jimmy Smithあたりともセッション活動をしていたとのこと。生年は1942年ですから、ビートルズと同世代なわけです。

その後、ジョー・ヘンダーソン、ケニー・ドーハム、ポール・ブレイなどと活動を共にしますが、やはり前述のコールマンとの邂逅がUlmerの音楽性に大きな影響を与えたことは言うまでもありません。コールマンが提唱する「ハーモロディック理論」の内容ですが、私の筆力では実に説明が難しいのですが、大変簡単に表現してしまうと、バンドの各メンバーが即興で生み出すサウンドに対して、お互いが既成のスケールにとらわれることなく、自由なハーモニーを得るべし、ということ。各楽器との緊張関係を保ちながら、音の瞬間、瞬間を鋭敏に感じ取り、セッションならではの即興演奏(インプロヴィゼーション)を繰り広げるというもの。と、書くと何だか大袈裟ですが、要はフリーミュージックを作り上げるうえで、あくまでも各メンバーの個性と演奏の自由性を尊重し、自らも自由になりなさいということなのでしょう。まさに、フリージャズの発想です。

前置きがやたらと長いのはいつものことですが、前出「Are You Glad To Be In America?」で注目を浴びるようになり、CBSとメジャー契約を交わし制作されたのがこの作品です。彼のキャリアから考えると完全フリーのジャズギターを想像しますが、ここで繰り広げられているのは、R&B、ファンク、フリージャズのごった煮的なサウンドです。R&B、ファンク色が強いのはもしかしたらCBSサイドの意向もあるかもしれませんね。ただ、表姿はメジャー音楽の衣をまといながらも、Ulmerのギターはあくまでもフリーかつ天衣無縫。異常に強いアタック音で聴く者の心を揺さぶりながら、バリバリと珍妙なフレーズを連発してくれます。彼のプレイを聴きながら先の「ハーモロディック理論」のなんたるかを探り出そうと試みるのですが、妙チクリンなギターに耳を奪われているうちに、そんなことはどうでもよくなってしまいます。それだけUlmerのギターはあまりに個性的で、強烈なインパクトを放っているのです。

加えてUlmerは優れたボーカリストでもあります。R&B色が強いといえば簡単ですが、若い頃は教会でゴスペルを歌っていたとかいなかったとか。味があるとかそんな生やさしいボーカルではなく、強力な破壊力をもつと同時に何となく哀愁が漂うのは、ゴスペル、黒人霊歌のニュアンスが随所に感じられるからなのでしょう。

独特のしゃがれ声に妙なギター。この作品で一躍注目を厚め、翌年1982年にリリースされた「Black Rock」で人気が決定的に(もちろん限られた人気ですが)。日本でもあちこちのメディアで彼の名前を見るようになったのは、ちょうどこの時期です。

●Musicians
James Blood Ulmer / guitar,vocals
Amin Ali / bass
G.Calvinn Weston / drums
Ronnie Drayton / second guitar
David Murray / tenor sax
Oliver Lake / alto sax
Olu Dara / trumpet

●Numbers
1.  Timeless
2.  Pleasure Control
3.  Night Lover
4.  Where Did All The Girls Come From ?
5.  High Time
6.  Hijack
7.  Free Lancing
8.  Stand Up To Yourself
9.  Rush Hour
10.Happy Time
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