70年代型Miles Davisの幕開け「Black Beauty」
Musician●Miles Davis(trumpet)
Title●At Fillmore West(1970年)
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帝王Milesのことをあれこれ書くことは少しばかり勇気が必要です。私なんぞより遙かに多くの方々が聴き込んでいるわけですし、実際多くのレビュー記事が溢れているわけですら。では、何で帝王、何でこのアルバムなのかというと、高校生の時、友人宅に遊びに行ったときに「これがオススメ」と聴かされたのがこのアルバムだったからです。本格的なジャズ体験としては初めてで、しかもエレクトリックマイルズがスタートというのも幸運であり、不幸のはじまりだったかもしれません。いま思えば。
さて「Black Beauty」というサブタイトルがついたこのライブ盤ですが、1970年4月10日、サ
ンフランシスコにあるフィルモア・ウエストで収録されています。ご存知のとおり当地は「ロックの殿堂」と呼ばれているライブハウスで、ジャズ畑のミュージシャンが演奏すること自体が異例中の異例。ジャスではほかにチャールズ・ロイドが何回か舞台を踏んでいるくらいです。
この4月10日というタイミングは、3日前にアルバム「Jack Johnson」が吹き込まれた時期で、70年代型エレクトリックマイルズがいよいよ本格稼働を始めたことを示しています。また、少し時間を遡ると、1969年2月に「In A Silent Way」を、1969年8月に「Bitches Brew」、そして1970年4月に「Jack Johnson」と精力的に作品を作り出していた時期のライブということに。さらにいうと、1968年から参加した鍵盤楽器奏者Chick Coreaによる「1人キーボード時代」の貴重なライブでもあります。同年6月にもう1人の鍵盤楽器奏者、Keith Jarrettの参加によって「ツインキーボード時代」が到来するわけですが、Coreaは帝王の冷たい仕打ちに耐えかねてか(?)、Return To Foreverを結成するべく楽団を脱退します。また、サックス奏者Steve Grossmanも加入直後だったようですね。
さまざまな意味で過渡期にあるアルバムといえますが、演奏内容は実に強烈!この時期から使い始めたワウワウブローが聴く者の五臓六腑をかきむしり、Coreaのエレピが慌ててフォローするという「サドマゾ連携プレイ」がすでに完成型を迎えています。
●Musicians
Miles Davis / trumpet
Steve Grossman / soprano sax
Chick Corea / electric piano
Dave Holland / bass
Jack DeJohnette / drums
Aiato Moreira / percussion
●Numbers
1. Black Beauty Pt 1,2
2. Black Beauty Pt 3,4
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