第2期RTFの大傑作「第七銀河の讃歌」
Musician●Return To Forever
Title●Hymn Of The Seventh Galaxy(1973年)
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ジャズフュージョン界の大御所Chick Coreaが手がけたスーパーグループ「Return To Forever」(RTF)といえばなんと言っても「かもめ」が有名でまさに一世を風靡しましたが、かもめの大成功に飽きたらず大幅なメンバーチェンジのうえに再出発したのが第2期RTF。いちばんの肝はグループとしては初めてギタリストを迎えたことで、それによってロック色が一挙に強まりました。それによってジャズファンに加えてロック好きをファンに取り込むことに成功しました。いわゆるクロスオーバー、フュージョンブームに火を付けた名盤なわけです。
そんなわけで一大モデルチェンジを果たしたRTFの記念すべき作品ですが、個人的に気になるのはギタリストの存在です。RTFとしての初代ギタリストに指名されたのはアメリカ・サクラメント出身の無名ギタリスト、Bill Connors(ビル・コナーズ)。ロックに触発されてギターを手にし後にジャズへ転向後、Joe Passに師事したConnorsですがジャズだけでなくロックテイストのプレイもこなせるという理由から、異例の抜擢を受けました。いわばシンデレラボーイです。雲の上のような存在のChick Coreaのご指名です。Connorsは懸命に期待に応えるべく熱演を繰り広げています。特にアルバムタイトル曲「Hymn Of The Seventh Galaxy」や名曲「Captain Senor Mouse」での華麗なプレイはジャズロック史上、永遠に語り継がれることでしょう。
しかし、ラテンの血をひくアメリカ人ギタリスト、アル・ディ・メオラの登場によって、Connorsはいとも簡単にその座を追われてしまいます。当時としては人類の限界を超えたと言われた超絶技巧と独自のミュート奏法、スパニッシュテイスト満載のソロ回しと、たくさんの武器を身につけたアル・ディ・メオラとの比較では分が悪すぎます。その後のRTFの躍進ぶりを検証すると、Chick Coreaの判断は正しかったと言わざるをえません。Chick Coreaの慧眼ぶりは、後に若きScott HendersonやFrank Gambaleを起用したことからも、確かでであることは明らかですね。
そんな経緯から失意のもと(?)グループを去ったBill Connorsは、単身ヨーロッパに渡り新興レーベルECMと契約を交わします。そこでレコーディングされたのが「Theme to the Gaurdian」(1974年)というアコースティックギター1本による内省的な作品。華やかなRTF時代とはまるで正反対の芸風です。よく言えば叙情的、悪く言えば暗く沈みきったギターを聴くと、勝手な想像ですが彼の心の淵をのぞき込むような思いです。その後のConnorsの「変節ぶり」は別記事で詳しくまとめましたが、そもそものきっかけはRTF脱退にあるのではと個人的には思います。
●Musicians
Chick Corea / electric-piano,acoustic-paino,harpsichord
Stan Clarke / bass
Bill Connors / guitars
Lenny White / drums
●Numbers
1. Hymn Of The Seventh Galaxy
2. After The Cosmic Rain
3. Captain Senor Mouse
4. Theme To The Mothership
5. Space Circus pt1,pt2
6. The Game Maker
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