元祖変態歌手!? ミッシェル・ポルナレフ
Musician●Michel Polnareff
Title●Polnareve(1973年)
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最近では話題に上りませんが、1960年代から70年代にかけて一世を風靡した音楽ジャンルとして「フレンチポップス」というのがありました。シルヴィ・バルタン、フランス・ギャルあたりが日本でもよく知られていますが、そのフレンチ・ポップス界での異端児がMichel Polnareff(ミッシェル・ポルナレフ)ではないでしょうか。
1966年に「ノンノン人形」でデビューした彼ですが、独特な髪型とサングラス姿という特異な外見でも注目されました。初期の曲「シェリーに口づけ」は日本でも発売されヒットしましたが、10年ほど前にあるテレビドラマの主題歌に採用されて、ドラマの話題性と相まってこれが何と大ヒット。思わぬ「ポルナレフ再ブーム」を引き起こしたので、ご記憶にある人も多いかと思います。しかし、ポルナレフ関連のアルバムは当時あまりCD化されていない状況で、あったとしても輸入盤くらいでした。誰も予測できなかったポルナレフブームに乗じて、過去のヒットナンバーを集めたベスト盤が国内発売されたほどです。
リアルタイムでポルナレフフォロワーだったわけですが、今回ご紹介する「Polnareve」(1973年)は4作目のアルバムで最も彼が充実していた頃のものです。このアルバムからは「La Vie ,La Vie M'A Quitte」(邦題「悲しみのロマンス」)、「I Love You Because」(「愛の伝説」)、「Tibili」(「僕はロックンローラー」)の3曲がシングルカットされ、日本でもヒットしましました。当時、ラジオ音楽番組では「電話リクエスト」(略称「電リク」)という聴取者参加型の番組スタイルが全盛で、若者たちの心をムンズとキャッチしていました。隠れポルナレフファンの私もランキングを上げるためにラジオ曲に何度も電話攻勢をかけていたのです。リクエスト数によってその週のランキングが決まるシステムなので、贔屓のミュージシャンを応援したいというファン心理を巧みに利用した番組ですね。
さて、冒頭タイトルで「元祖変態歌手」と書きましたが、プロナレフが特異な存在とされるのは、まずフランス人にもかかわらず当時御法度とされた英語を歌詞に積極的に取り入れたことがまず上げられます。英語歌詞ばかりか、いまでも放送禁止の「F××K!!」を連発した前科も。いまでこそフランス語も英語も、音楽の世界では言語の垣根はほとんどありませんが、60年代のフレンチポップス界は保守的な状況で、そんななかにいきなり放送禁止用語を振りかざして登場したわけですから、かなりの衝撃です。
また、変態歌手たるゆえんは度重なる奇行があげられます。パリオリンピア劇場のライブ告知ポスターに、下半身丸出しの姿で登場して物議を醸すどころか危うく出入り禁止になったエピソードはあまりにも有名です。また、若い頃は痩身ぶりがコンプレックスだった彼は、空手に大変興味を示したあげく有段者にまで上りつめます。そして空手で鍛え上げた肉体美を誇示するために、意味なく上半身裸になってジャケットを飾るようになります。またPVでは多くの柔道家とともになぜか海岸で稽古に励む姿で登場します。まるで三島由紀夫の世界ですね。そんな極度のナルシストぶりから、なぜか「オカマ歌手」と呼ばれることも多く、ポルナレフファンもオカマ呼ばわりされることを恐れるあまり、深く地下に潜行していたわけです。
そんなわけで「フレンチポップスの異端児」と呼ばれるポルナレフですが、曲作りも当時としては実に斬新でした。何といっても抜群の作曲能力と歌唱力。また、デビュー作ではフォークロック的な感じでスタートしたと思いきや、2ndからは伝統の甘ったるいフレンチポップスに加えて、ロック、ジャズ、民族音楽などを導入し、常に意欲的な作品を送り出しています。1944年生まれということで今年66歳になる彼は、ジェフ・ベックやエリック・クラプトン、田村正和などと同世代。いまは何をしているのでしょう。
●Musician
Michel Polnareff
●Numbers
1. La Fille Qui Reve De Moi(ファンクラブの皆様へ)
2. Le Prince En Otage(囚われのプリンス)
3. Rosy(ロージーからの手紙)
4. La Vie ,La Vie M'A Quitte(悲しみのロマンス)
5. La Fille Qui Reve De Moi(ファンクラブの皆様へ・インスト)
6. Le Grand Chapiteau(サーカスへの誘い)
7. Il Est Gros(素敵な欲望)
8. I Love You Because(愛の伝説)
9. Polnareve(ポルナレフ革命)
10.Tibili(僕はロックンローラー)
11.L'homme Qui Pleurait Des Larmes De Verre(ガラスの涙)
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