「New Tony Williams Lifetime」誕生前夜の「Wildlife」
Musician●Tony Williams(drums)
Titel●Wildlife(1975年)
■購入先不明
1970年代にリリースされた多くのジャズロックアルバムは、メジャー、マイナーを問わす大変興味深い作品が多く、個人的には大好きなジャンルです。かつてMデイヴィスの楽団で一躍名を馳せた「地下鉄ドラマー」Tony Williamasは「第1期Lifetime」ではジョン・マクラフリンと組んでカオスの世界を追求し、メンバーを入れ替えて装いも新たに再出発した「第2期Lifetime」とも言える「New Lifetime」では、イギリスのジャズロックバンド「Soft Machine」で活躍していたギタリスト、Allan Holdsworthを招へいする形で新たなスタートを切りました。
この「New Lifetime」ではオフィシャルなアルバムとしては「Believe It」(1975年)と「Million Dollar Legs」(1976年)の2枚がリリースされていますが、実はグループ結成に先立ってセッションが行われています。そのメンバーを見てびっくり! ベースには何とJack Bruceが参加しているのです。スウェーデンのストックホルムで行われたため「ストックホルム・セッション」と言われる「幻の音源」ですが、あとはキーボードのオーバーダビングを施せば完成一歩手前という段階になって「お蔵入り」してしまいました。したがってオフィシャルなルートではなく、海賊盤でのみ聴くことができます。
このセッションがユニークなのは、女性ボーカル(Luara "Tequila" Logan)が大胆にフューチャーされている点です。この人、いままでよく知らなかったのですが、ラリー・ヤングの作品に参加していて、かなりソウルフルな歌声のシンガーです。
楽曲はというと「Believe It」の前夜という感じで、たとえば「Believe It」収録の「Fred」は「The Spirit」というタイトルでプレイされています。コンセプトとしてホールズワースの個性を全面に押し出すという考え方があったようで、とにもかくにもホールズワースは弾きまくり状態。「Believe It」もかなりの暴れようでしたが、このアルバムは優にその2倍は弾きまくっているのではないでしょうか。また、現在の感覚ですと、ソウル&ファンクとホールズワースとの組み合わせは、水と油の関係だと思いますが、意識的にロックタッチなプレイをすると、このLuara "Tequila" Loganとの相性は素晴らしいものに変わります。不思議ですね。
通称「Wildlife」と呼ばれるこの幻のアルバムですが、スタジオワークさえキチンと施せば、オフィシャル音源として十分に通用する完成度とポテンシャルをもっていると思います。「New Tony Williams Lifetime」誕生前夜という資料的な価値も十分高いはずです。
Recorded at Stockholm, Sweden, 1975 Studio Sessions
Unreleased Album "Wildlife"
●Musicians
Tony Williams / drums
Allan Holdsworth / guitars
Webster Lewis / keyboards
Jack Bruce / bass
Luara "Tequila" Logan / vocals
●Numbers
1.Scirocco
2.Hot And Sticky
3.Little Zorro
4.Happy Tears
5.The Spirit
右奥にジャック・ブルースが写っています
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コメント
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はじめまして。
Tweeterからたどり着きました。
楽曲と演奏パーソネルをきちんと表記されているところ、感心いたしました。面倒くさいので手抜きをしたくなるところです。
本題。Jack Bruceがなぜ登場したか。
Tony Williamsのオリジナル・ライフタイムのメンバーは、John McLaughlin がギター、Larry Youngがオルガンで、セカンドではジャック・ブルースが加入します。
Miles DavisからMcLaughlinに声がかかったとき、彼は渡米の金が無くて、友人のジャック・ブルースが金を出したって言う付き合いです。
トニー・ウィリアムズは、早熟の天才ですが、晩年、急激に落ち込んで早世してしまったのが残念です。
投稿: nk24mdwst | 2010年8月 2日 (月) 16時28分
コメントありがとうございます。返信が遅くなりもうしわけありません。
楽曲とパーソネルを書くのはあくまでも備忘録代わりでございます(笑)
マクラフリンがTony Williamsに誘われた時、お金がなかったというエピソードが有名ですね。In A Silent Wayなどのギャラは安かったのか、まだ振り込まれていなかったのか。いろいろと妄想がわきます。
今後ともTwitterともどもご贔屓にお願いいたします。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2010年8月 8日 (日) 09時59分