イスラム色に包まれるThierry David
Musician●Thierry David(synthesizer,paino)
Title●Khora(1994年)
■Gemm.comより購入
おそらくフランス出身と思われるシンセサイザー奏者Thierry David(ティエリ・デイヴィッド)による作品です。実は録音された年月日がクレジットされていないのですが、フランス語で書かれたスリーブを解読するとThierry Davidが1993年7月にトルコ共和国イスタンブールに旅行したときに得た音楽的な刺激をもとに書かれた作品ということになっています(たぶん)。メンバーはSteve Shehan(drums)、Nguyen Le(guitar,electric E Bow)、Philippe Nadaud(sax)というメンツです。勉強不足で申し訳ありませんが、ギターのNguyen Le以外は存じ上げず、というかThierry Davidという人もネットで調べても正体不明なんです。すみません。
さて「Khora」というドンズバなタイトル通り、もろにイスラム音楽に影響された内容で、のっけからもの寂しげなコーランの調べでスタートします。ゲスト参加のNguyen Le(グエン・レ)はフランス生まれのベトナム系ミュージシャンですが、彼が操る「lectric E Bow」という楽器が何とも怪しげでかつ繊細なソロを奏でています。オリエンタルな雰囲気と一言で片づけてしまうことには抵抗感を感じますが、とにかく素敵な作品です。目を閉じてじっくり耳を傾けるとイスタンブールの風景が目前に広がります(もちろん行ったことはありませんが)。
個人的なことを申し上げますと、私が小中学生の頃に海外のラジオ局放送を傍受するという趣味が男子の間で大流行しました。彼らはBCL、つまりBroadcasting Listner(放送傍受者)と呼ばれていました。何を隠そう、私もしっかりブームに乗ってしまい、夜ごと短波ラジオにかじりついていましたが、夜に傍受するのは、夜間だと短波の伝播力がアップするためで、より遠方の外国の放送が聴けるためです。決して宵っぱりなわけではありません。
そんな傍受活動に従事するなか、特にイスラム圏諸国の放送を傍受するのが好きでした。信仰心に厚いイスラム諸国の放送では、番組の前後に「コーラン」が流れます。そうです、コーランに始まりコーランに終わるのです。もちろん子どもですからイスラム教の何たるかはまったく知識がありませんでしたが、どことなく寂しげで心に沁み入るコーランの調べには心打たれるものがありました。
余談ですが、そんなBCL野郎を対象にしたラジオ番組というものが当時あって、まだ売り出し中のタモリがパーソナリティを務めていました。タモリが海外放送を好んで聴いていたことは有名で、「四カ国語マージャン」をはじめとした出鱈目外国語ネタのほとんどは、海外放送からヒントを得ているはずです。つい先日、タモリ自身が「コーラン好き」であることを告白していましたが、イスラム圏の放送がきっかけだったと言ってました。お笑いビッグネームと少しでも感性的に共通項があることに少しうれしく思います。
脱線ばかりで申し訳ありません。
●Musicians
Thierry David / synthesizer
Nguyen Le / guitar,electric E Bow
Philippe Nadaud / sax
Steve Shehan / drums
●Numbers
1. Kami Ramallat
2. Dinjir-An(Khora 1)
3. Ibrim Ba'al
4. Wakan-Atom
5. Dinjir-Enki(Khora 2)
6. Kiririsha
7. Kudai-Enlik
8. Inanna Ishtar
9. Dinjir-Enlill(Khora 3)
10.Gaia-Tswana
11.Karusa Kaibe
12.Shugendo El Shamash
13.Dingir-Ea(Khora 4)
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