ホールズワース、ジャズスタンダートに挑戦
Musician●Allan Holdsworth(guitar)
Title●None Too Soon(1996年)
■ディスクユニオンで購入
テクニカル系ギタリストの雄、Allan Holdsworth(アラン・ホールズワース)が1996年に発表したアルバムです。通算9枚目の作品になります。メンバーはかつての僚友、Gordon Beck(piano)、Gary Willis(bass)、Kirk Covington(drums)という構成で、ホールズワース自身は前作「Hard Hat Area」(1993年)に引き続いてギターとシンタックスの併用で臨んでいます。Kirk Covingtonはおそらく初共演ですね。
このアルバムの目玉は何といっても「ジャズスタンダードにホールズワースが挑戦」ということだと思いますが、ジャズスタンダードカバー集を制作するということではなく、懐かしのオールドナンバーの姿を借りて、結局はホールズワース節が響きわたる、と解釈したほうが正しいと思います。ファンにとっては予定調和の結果ですが。
ホールズワース自身のキャリアをひもとくと、彼自身もジャズとまったく無縁だったわけではありません。これはニュークリアスや70年代後半のJohn StevensやGordon Beckらとの共演歴からも理解できます。しかし、John StevensやGordon Beckにしてもメインストリームから遠く離れた辺境に属するミュージシャンです。単なる知名度というよりも、彼らの志向する音楽はことごとく「ニッチ」であるということです。
そういえばFrank Gambaleと組んだ「MVP」でジャズスタンダードにトライしていますが、あれは企画優先の作品ですから参考外と考えたほうがよさそうです。ただ、バックのメンバーにはよりジャズに近い人間がほしいということで、今回のGordeon Beckの起用なのだと思います。
ここで取り上げられているのは、コルトレーン、ジャンゴ・ラインハルト、ジョー・ヘンダーソン、ビル・エヴァンス、そして何故かレノン=マッカートニーの代表曲が並びます。Norwegian Wood、「ノルウェーの森」ですね。そういえばギタリストたちの「ビートルズカバー集」がかつてありましたが、そこでは「ミッシェル」を弾いていました。やはり同じ英国人としてリスペクトしているのでしょうね。
この作品は賛否両論あるようですが、結局は、テーマをジャズスタンダードに置き換えただけで、聴こえてくるのは、あくまでもホールズワース節にしかすぎません。これを良しとするかは意見が分かれるところだと思いますが、偏愛的ファンにとっては、ホールズワースがどんな曲を演奏しようが、そこにホールズワースが存在することに意味があるのです。ここまでくれば一種の宗教に近く、気まぐれなタイミングでリリースされるアルバムは、神からのご託宣であり、神と信者の交流、交信なのでしょう。
しかし、相も変わらずジャケットデザインのセンスは最悪ですね。「Then!」では居酒屋でのオフショット写真が載ってましたが、今回はなぜか生ビールの写真が。妙におどけた表情の御大の姿も見られます。たぶん、周囲の想像とは別に、本人としては何も考えていないのではないでしょうか。
●Musicians
Allan Holdsworth / guitar,synthaxe
Gordon Beck / piano
Gary Willis / bass
Kirk Covington / drums
●Numbers
1. Countdown
2. Nuages
3. How Deep Is The Ocean
4. Isotope
5. None Too Soon Part I
6. Interlude
7. None Too Soon Part II
8. Norwegian Wood
9. Very Early
10. San Marcos
11. Inner Urge
« 貴重なホールズワースの1990年ライブ | トップページ | NY新感覚派ギタリストBen Monderの登場! »
「アラン・ホールズワース関連」カテゴリの記事
- 【追悼】Allan Holdsworth亡くなる(2017.04.18)
- Allan Holdsworth / A.H.Studio Track 1980(1980年)(2016.08.27)
- Allan Holdsworth / Tales From The Vault Part Ⅱ(2016年)(2016.08.07)
- Soma / Soma(1986年)(2016.02.21)
- GONG / GAZEUSE!(1977年)(2015.10.03)
この記事へのコメントは終了しました。
« 貴重なホールズワースの1990年ライブ | トップページ | NY新感覚派ギタリストBen Monderの登場! »
コメント