「しばたはつみ」つながりで朱里エイコさんのベスト集
Musician●朱里エイコ
Title●朱里エイコ全曲集(1994年)
■JR横浜駅コンコース内
今回はいつもと違った趣向でお届けします。
「しばたはつみ」 さん死去の報には少々驚きましたが、そこで思い出したのが「朱里エイコ」さんです。2004年に亡くなった朱里エイコさん(享年56歳)も「しばた」さんと同タイプの歌手だったように思います。この2人は同時代に活躍した天地真理さん、麻丘めぐみさん、アグネス・チャン、南沙織さんなどのアイドル歌手とは一味もふた味の違った「大人のオネエサン系歌手」というカテゴライズですね。整形手術を終えて別人となって「復帰」した「人形の家」弘田三枝子さんも、このカテゴリーに入ると思います。もしかしたら宇多田ヒカルのお母さん、藤圭子も同じグループに入るかもしれません。
今回、ご紹介する朱里エイコさんは、1948(昭和23)年生まれでちょうど団塊の世代。お母さまは振付師の朱里みさをさんでお父さまはオペラ歌手だったそうですが、DVのために両親は離婚し、お父さまはエイコさんが5歳の時に交通事故のために亡くなっているそうです。何やらいきなり波乱万丈のにおいが立ち込めます。ちなみにお母さまが設立した「朱里ジャズダンススクール」はいまでも存在しています。
子どもの頃から抜群の歌唱力が注目されていたエイコさんは、1964(昭和39)年に日本人の海外渡航が自由化されるにともなって、何と16歳で単身渡米します。かの地でオーディションに合格した彼女は、アメリカのショービジネス界でデビューします。おもにラスベガスのクラブを本拠地にして活躍しますが、当時のクラブ歌手は客の嗜好に合わせてヒットチャートのベスト40はすべてレパートリーとして歌いこなせないといけなかったそうです。これは、大変なことだと思います。この時期、サラ・ヴォーンと同じステージに立ったこともあるそうです。
やがていったん帰国して彼女はワンマンショーを開いたりしますが、客は不入りだったために、再度渡米。ラスベガスのコンサートで大成功をおさめて凱旋帰国を果たします。そして1972年に大ヒット曲「北国行きへ」で一躍スターダムを駆け上ります。
1977年に来日したポール・アンカに直接アタックして彼から絶賛を受け曲をプレゼントされます。その中の1曲が「ジョーのダイヤモンド」です。
しかし、アメリカでは注目を集めていたものの、国内ではこれといったヒット曲に恵まれなかった彼女は、次第に鬱を患うようになり、何度か失踪騒ぎを起こします。また、愛人との痴情のもつれから確か名古屋で刃傷沙汰を起こしてワイドショーで話題になったこともあります。
やがてスキャンダラスなイメージばかりが先行するようになり、精神と肝臓を病んでしまい、長期の入院生活を送ることになってしまいます。それでも歌にかける情熱は冷めることはなく、1987年頃から活動を再開します。ちょうどその時期からテレビ番組「あの人はいま」的な番組が始まり、何度かテレビ番組にも出演していました。しかし、肝臓が悪いこともあって薬の副作用の影響からか、ブクブクに太ってしまい驚いた記憶があります。
このように波乱万丈の人生を送った彼女ですが、晩年はなんと生活保護を受けていたとか。最後に歌ったのが確か北千住のスナックで、月数万のギャラを生活の糧にしていたといいますから、まさに栄枯盛衰を地でいくような人でした。ちなみに全盛期は見事なスタイルでも知られ「100万ドルの脚線美」といわれた美脚には、保険金がかけられました。いまでこそ、身体の一部に保険金をかける芸能人は珍しくありませんが、おそらく彼女がその走りではないでしょうか。しかし晩年になって太った自分をネタに「100万ドルの足が10円になっちゃった」と自虐的に言っていたと聞きます。
個人的にはやはり「北国行きへ」が強烈な思い出として残っています。抜群の歌唱力とキャッチーな楽曲は、これまでの日本の歌謡界には存在しなかったように思えます。どうも「北国行きで」のあのメロディーが耳について離れず、駅のコンコース内でのCD屋で発見して即購入してしまいました。椎名林檎がカバーしたという「白い小鳩」も収録されています。
●Numbers
1. 愛は旅びと
2. Everytime愛
3. 北国行きで
4. 白い小鳩
5. 心の痛み
6. 恋の衝撃
7. ジェット最終便
8. めぐり逢い
9. AH SO
10. 別れの朝
11. ジョーのダイヤモンド
12. サムライ・ニッポン
13. オクラホマ・モーニング
14. ジュビレーション(歓喜)
15. シーズ・ア・レディー
16. 君は我が運命
17. デライラ
18. レット・ミー・トライ・アゲイン
19. 明日に架ける橋
20. マイ・ウェイ
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