北欧の景色を思い起こさせるような冷徹な音(Places)
Musician●Jan Garbarek(sax)
Title●Places(1977年)
■ディスクユニオンで購入
「北欧のコルトレーン」との異名をもつECMの看板サックス奏者Jan Garbarek(ヤン・ガルバレク)による1977年の作品です。ギターにBill Connors、ドラムにJack Dejohnette、ピアノという全員がソロアルバムを出せる力量をもつ豪華な陣容です。
ガルバレクのサウンド作りは作品によってさまざまな表情を見せます。北欧の土着音楽をベースにしたフォークミュージック的なアプローチだったり、いかにもECMという感じのリリカルでコンテンポラリーなアプローチだったり、クラシックとの融合を試みた古典回帰的なアプローチだったりと、作品によって実にさまざまな表情を見せてくれます。
1976年リリースの「Places」は暗く沈んだ氷のような世界観で貫かれています。いかにも冬の北欧らしい、いかにもECMらしい音作りはプロデューサーであるマンフレッド・アイヒャー氏が得意とするところです。
オープニングの「Reflections」はディジョネットが打ち鳴らす一種呪術的なドラミングがいかにも不気味で、地底からから押し上げるように静かに始まるガルバレクの咆哮と相まって、とても幻想的な世界を繰り広げています。コナーズのアコギがスネークインしてきてから曲調も一転しますが、コナーズもあくまでも暗く沈んだプレイに徹しています。テイラーのピアノも随所に効いています。耳をそばだてて注意深く聴くと、何ともいえない緊張感が襲ってきます。4者が4者とも押さえたプレイなのですが、それでいて水面下では静かな争いが繰り広げられているように思えるのです。大音量でガンガンやりあう音楽とはまた違った、静寂の中にあってピンと張りつめたような緊迫感が漂います。
いまから10年ほど前、ECMは「癒しの音楽」を前面に押し出して盛んにアピールしていました。ちょうど坂本龍一がCM曲で究極の癒しのプレイを聴かせて、ヒーリングミュージックが脚光を浴びた時期です。しかし、70年代のECMはけっこう冒険的で実験的な作品を多くリリースしていました。聴こえてくるサウンドはとても静かで穏やかなのですが、どれもが決して「予定調和」に陥らないドキドキ感を味わうことができる作品ばかりでした。まさにジャズ的アプローチですね。もちろん、イージーリスニング的にぼんやりと聴いてもかまわないです。
●Musicians
Jan Garbarek / sax
Bill Connors / guitars
Jack Dejohnette / drums
John Taylor / piano,organ
●Numbers
1. Reflections
2. Entering
3. Going Places
4. Passing
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コメント
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ライブがありましたよぉ。なかなかおもしろいメンバーかと。
Jul.10,1979, NDR Jazz Workshop, Kiel, Jan Garbarek, Bill Connors, John Taylor, Eberhard Weber, Jon Christensen
投稿: araiguma | 2010年5月13日 (木) 19時43分
araigumaさま
はじめまして。
コメントありがとうございます。
早速、拝聴しました。素晴らしいですね。私にとっては黄金のメンバーです。
何とかCD化してほしいところですけど、ECMでは無理でしょうね。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2010年5月13日 (木) 21時24分