Mr.Siriusの抱腹絶倒ライブ
Musician●Mr.Sirius
Title●Incredible Tour(1990年)
■メーカーサイト(Made In Japanレーベル)より購入
関西が生んだシンフォ系プログレバンドの雄「Mr.Sirius」(ミスター・シリウス)による唯一のライブ音源です。Mr.Siriusはスタジオ盤3枚とこのライブ盤の計4枚のアルバムを残していますが、現在は恒久的な解散状態。作品も廃盤状態にありましたが、2006年に紙ジャケット仕様で再発売されました。
バンドリーダーの宮武和広さんはミュージシャンとしては活動停止中ですが、大阪で和傘の通信販売を展開しています。「心斎橋みや竹」という屋号で運営されている宮武さんのお店ですが、和傘というある意味ニッチな商品にもかかわらず驚異的な売り上げをあげているそうで、新聞・テレビ・雑誌などのマスコミで多く取り上げられています。講演に呼ばれることも多いとか。いわば通販業界のひとつのビジネスモデルですね。
何といっても7曲目「Siberian Khatru 90」が圧巻です。曲タイトルで明らかなようにYESの名曲「Siberian Khatru」の完全なパクリです。宮武氏による抱腹絶倒のMCが何と10分近くも続いたあと、「海外のミュージシャンが来日したときにやる定番の曲」という紹介から、何と「春の海」が流れます。これはYESが来日するたびに、イアン・アンダーソンが「赤トンボ」「チューリップ」などを披露することことに対するパロディなのでしょう。「もしもリック・ウエイクマンがフルートを吹けたなら」という大胆不敵な発想でプレイされるこの曲は、本家YESの演奏力に負けず劣らず素晴らしい出来映えになっています。そして、メロトロンが高らかに鳴り響きエンディングを迎えようかというタイミングで、いきなりゲスト参加の難波弘之と大谷レイブン(元MARINO)が乱入してきて、状況は一変。レイブンのディストーションが効きまくた長いソロが終わったと思ったら、曲はなぜだかDeep Purple「Space Truckin'」のいエンディングテーマに。ここで「おちょくり」が終わると思いきや、今度はELP「Hoedown」へ、そして「Siberian」に戻ったら今度はYES「Roundabout」へ。今度はGenesisに行ったと思ったら、「Siberian」に戻って最後はYES「Heart Of Sunrise」で締めるという嘘みたいな展開を何事もなかったかのように、プレイしています。
凄まじい演奏力、関西人らしいおちょくり精神、抱腹絶倒の宮武氏のMC…。生真面目に音楽を愛する人にとっては、もしかしたら「くだらない」と言われそうですが、そもそも「音を楽しむ」のが音楽。気難しいという先入観をもたれがちなプログレですが、こんな面白いバンドがあることも記憶の隅にとどめていただければ幸いです。
タイトルの「Incredible」とは「信じられない」という意味ですが、まさに文字通りに信じられないほどの超絶技巧の限りが尽くされているライブ音源です。「自主海賊盤」と銘打っているため、あえてチープな造作になっています。
余談ですが、宮武氏のMCはいまは亡き桂枝雀師匠の語り口を参考にしているとか。日経新聞で取材を受けたときは「叙情と笑いの世界」として紹介されたとか。緩急がついた語り口はミュージシャンの域を越えています。思わず爆笑してしまったフレーズを一つだけ紹介しますと、
「酒代にあてたメロトロン have been 質流れ」
●Musicians
宮武和広 / keyboard,flute,guitars,Rick"Fake"man
大木理紗(永井博子) / vocal
藤岡千尋 / drums,percussion
村岡秀彦 / bass
釜木茂一 / guitar
宮武美代子 / backing vocal on Madrigal
難波弘之 / organ on Siberian Khatru 90
大谷レイブン / guitar on Siberian Khatru 90
●Numbers
1. Opening~Requiem(original version)
2. Advance Billing
3. Madrigal(from All the fallen people)
4. Time in the Image ※未発表曲
5. Babooshka~Love incomplete
6. Kokan de Jealousy(perfect version)
7. Siberian Khatru 90
8. Barren Dream~Grand Finale
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