何とも悲しげなブルースギターが泣かせるJBウルマーの意欲作
Musician●James Blood Ulmer(guitar)
Title●Harmolodic Guitar with Strings(1993年)
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オーネット・コールマンが提唱する「ハーモロディック理論」の後継者、James Blood Ulmer(ジェームス・ブラッド・ウルマー)が1993年に発表した意欲作です。ウルマーというと80年代初頭に発表した「Black Rock」 などでのファンキーでゴリゴリと押しまくるサウンドの印象が強いのですが、実はブルースギターの名手でもあります。この作品では、4人の弦楽器奏者を従えてブルースとの融合を図った意欲的なアプローチを試みています。ウルマーはあえて持ち味であるゴリゴリ感を押さえて、クリアーかつ繊細なブルースギターを披露。弦楽器が生み出す叙情感と、ブルース独特の哀愁感とが奇妙にマッチして何とも形容しがたい悲しみをたたえた世界を現出させています。
この4人の弦楽奏者とウルマーがどんな経緯で結びついたかはよくわかりません。「クアルテット・インディゴ」と称するユニットは不勉強で知りませんでしたが、どうやらアメリカではNYタイムス紙が絶賛するほどのユニットだそうです。また、4人ともジャズに精通していて、コルトレーン「Naima」をカバーしたアルバムも出しているとか。ですから、クラシック畑の人が迷い込んできたという、違和感はまるで感じられません。
6つのパートに分かれた組曲形式をとる作品ですが、聴くたびに異なった印象を受けるという私にとって不思議な作品です。異質とも思えるストリングスとの共演も、実は深遠な部分で見事に融合され、そして静かな慟哭の世界へと昇華されていることが何となく理解できます。生意気を言えば、かなり聴く者を選ぶ作品であることは確かですが、人生の節目、節目で何度も反芻しながら聴いてみたいそんな作品です。中間聴けるゴスペル調のウルマーのボーカルも、陽気なようでいて実はとてつもなく悲しげです。やはり黒人の血がそのようにさせるのでしょうか。
ただし「Black Rock」あたりのコテコテ油ギッシュサウンドを期待する人にはお勧めすることはできません。
●Musicians
James Blood Ulmer / guitar,vocal
Quartette Indigo
Gayle Dixon / 1st violin
John Blake / 2nd violin
Ron Lawrence / viola
Akua Dixon / cello
●Numbers
1. Opening
2. Arena: Church
3. Arena: Seven Gates
4. Arena: Arena
5. Arena: Lights Out
6. Arena: Church II
7. Arena: Arena II
8. Page One: In the Name of...
9. Page One: Page One
10. Page One: Blood and John
11. Page One: Page One II
12. Page One: Grand Finale
13. Maya
14. Black Sheep: Prologue
15. Black Sheep: By-Pass
16. Black Sheep: Caretaker
17. Black Sheep: Lost One
18. Black Sheep: Black Sheep
19. Black Sheep: Epilogue
20. Theme From Captain Black
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