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2010年5月

2010年5月31日 (月)

ECMのジャケット写真集第2弾を入手

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Title●Windfall Light The Visual Language of ECM(2009年)
■Amazonより購入

1960年代にドイツで生まれたコンテンポラリー系ジャズの旗手「ECM」。ジャズの既成の枠にとらわれないサウンド作りを志向し、独自の位置づけを担ってきました。キース・ジャレット、ヤン・ガルバレク、パット・メセニー、ジョン・アバークロンビー、ラルフ・タウナーなど多くのスターを生み出しています。一方で、時折まったく無名のミュージシャンを発掘し世に送り出すなど、優れたプロデュース力をもったレーベルです。ちなみにECMはEdition of Comtemporary Musicの略称です。

またECMの諸作品はジャケットデザインの美しさでも知られています。1996年に「Sleeves of Desire」というジャケットデザイン集が発売されましたが、残念ながら絶版状態。復刻の動きもあったようですが、どうやらそれはかなわなかったようです。その代わりというわけではありませんが、待望の第2弾が昨年発売されました。英語版とドイツ語版の2バージョンです。版元はドイツの出版社でなんと448ページという豪華な本です。

私が入手したのはドイツ語版です。英語でもよかったのですが、ドイツ語版のほうが若干お買い得だったことと(未曾有のユーロ安の恩恵でしょうか)、最終的には写真集的に写真を愛でることが購入の動機なので、言語云々はあまり問題ではなかったのです。ちなみにドイツ語タイトルは「Der Winds,das Licht」です。

さて実際に見てみると、第1弾と同様にメイキングシーンが数多く掲載されていて、ECMファンや音楽ファンはもちろん、書籍デザインや広告などのクリエイターにとってもけっこう興味深い内容になっています。第2弾ということで、おもに1990年代後半以降のジャケットが中心ですが、後半部分は1970年代初期の作品もふんだんに掲載されているので、オールドファン(?)も納得の編集方針です。

モノクロの写真が多く、ビジュアル世代にとっては物足りなく感じられるかもしれませんが、この機会にモノトーンの味わいに触れていただければ。色のない写真を眺めて想像力を働かせながらそこに色味を見い出す。これぞ、モノクロ写真鑑賞法の極意です。

いわゆるメーキング写真。ふーん、こんな感じで作っているのですね
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モノクロとカラーを並べたこころにくい編集です
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キース・ジャレットの作品も当然掲載されています
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ヤン・ガルバレクはますます渋みが増していますね
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圧巻は巻末の全タイトルが掲載された完全版カタログ。いまは懐かしい70年代の諸作品も
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第1弾(手前)と一緒に記念撮影。わが家の家宝としたい2冊です
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以前、苦言を呈したAmazonの大げさすぎる梱包ですが、今回は比較的リーズナブルでした。世界を代表する物販会社なんですから、梱包もエコを心がけましょうよ
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この「空きスペース」なら小人プロレスラーも暴れないでしょうね
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2010年5月30日 (日)

オランダ人脈のハイパー&テクニカルフュージョン「One Spirit」

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Musicians●One Spirit(Frans Vollink,Sebastiaan Cornelissen)
Titel●One Spirit(2005年)
■Abstract Logixより購入

オランダ出身のベース奏者Frans Vollinkとドラム奏者Sebastiaan Cornelissenが中心になって結成したフュージョンユニット「One Spirit」による1stです。2005年リリース。この2人に加えてGTIの優等生でAllan Holdsworthの若手フォロワー、Richard Hallebeekが参加しています。

さりげなくそれぞれ1曲ずつですが、ギターのSusan Winert姉さんと大御所Randy Breckerが参加し作品に彩りが加わっています。

サウンドとしてはメンバーを見ても一目瞭然、期待を裏切らないハイパー&テクニカルフュージョンの典型です。特にギター好きにとってはRichard Hallebeekのギターが何といっても魅力的で、Holdsworthy最右翼のスーパープレイにはだた驚くばかりです。そんな意味ではギターに興味がない人には、逆にあまりお勧めすることはできません。

●Musicians
Frans Vollink / fretless bass,keyboard
Sebastiaan Cornelissen / drums
Richard Hallebeek / guitar,G10 synth Controller
Susan Winert / guitar,guitar-synth on Wrong Format
Rob Van Bavel / piano
Martin Verdonk / percussion
Lalle Larsson / keyboard
Randy Brecker / trumpet on What's In Store
Ada Rovatti / tenor sax
Martin Gort / percussion
Gerard Presencer / Flugelhorn on Wise Man From The East

●Numbers
1.  Me And Freddie
2.  Straight
3.  Official Noisemaker
4.  Bramcote Road
5.  Face To Face
6.  What's In Store
7.  Wrong Format
8.  One Spirit
9.  Dirty Gilly
10. Wise Man From The East
11. Suse's Song
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2010年5月29日 (土)

ハード系フュージョンの傑作「Cave Men」

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Musicians●Antti Kotikoski (guitar)、JK Kleutgens (bass)、Vinnie Colaiuta(drums)、Steve Tavaglione (sax)
Title●Cave Men(2003年)
■メーカーサイトより購入(J2k)

かつてレガートレコードからRichard Hallebeekとの双頭バンドによるギターアルバム「Generator」(1995年)をリリースしたAntti Kotikoski(アンティ・コティコスキ)が中心となった(?)ユニットです。「Generator」はMike Verneyのプロデュースでしたね。今回の参加メンバーも凄いですよ。ドイツ出身でデイヴ・ウェックルやピーター・アースキンとの共演歴がある超絶ベース奏者JK Kleutgens(通称JK←女子高生か!)、最近はJベックのバックを務めるVinnie Colaiuta、Aホールズワースとの共演で有名なサックス奏者Steve Tavaglioneというジャズフュージョン界では最強ともいえるメンバーです。

Antti Kotikoskiは残している音源が少ないうえに、ほとんどが廃盤扱いという不幸を地で行くギタリストですが、わかっている範囲ではフィンランド出身でハリウッドはMI(Musicians Institute)のGIT(Guitar Institute of Technology )で学び、スコット・ヘンダーソンから教えを受けたというテクニカル系ギタリスト。確かにスコヘンの影響がありありという感じ。スコヘンの影響下にあるということは、Allan Holdsworthは大師匠ということですね。アームを多用したウネウネ、ウネウネが持ち味です。ちなみにMIの理事長って日本人なんですね。知りませんでした。

このアルバムが2003年に突如としてリリースされた経緯は不明ですが、ベースのJKが所属するJ2kレコードからリリースされたことからJKからの口利きがあったのではと推測します。ところが残念なことにJ2Kは現在倒産状態にあるようで、JKはもちろんAnttiも失業状態ということになります。

しかし、音のほうはメンバーを考えても間違えようがない素晴らしさです。1曲目「5 For Eddie」はミドルテンポの乗りのいい曲ですが、うごめくベースという感じのJKとカリウタとのリズム隊に乗って、Anttiの超絶ソロが気持ちよく飛翔します。Steve Tavaglioneのサックスとのユニゾンはかなりの迫力です。彼のギターソロはスコヘン似というよりも、大師匠のHoldsworthに近い感じがします。かつての「Generator」時代の同僚、Hallebeekと再度共演となると、見分けがつかないのでは?

私が購入した時は別テイクが入った4曲入りのCDがおまけでついてきました。おまけは何歳になってもうれしいです。

●Musicians
Antti Kotikoski / guitar
JK Kleutgens / bass
Vinnie Colaiuta / drums
Steve Tavaglione / sax

●Numbers
1.  5 For Eddie
2.  Make No Mistake
3.  Country      
4.  Time Sensitive   
5.  Antti Goes To War
6.  Sanctuary
7.  Cave Men
8.  Sitar
9.  Off The Record
10. The Word's Out
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2010年5月28日 (金)

テクニカル系ギター好きは必携Machacek「Improvision」

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Musician●Alex Machacek(guitar)
Title●Improvision(2007年)
■Amazonより購入

Allan Holdsworthフォロワーの筆頭、オーストリア出身のAlex Machacek(アレックス・マクヘイサック)による2007年の作品です。Abstract Logixからリリース。マクヘイサック名義では2006年リリースの「SIC」以来で3作目にあたるはずです。

いつもながら参加メンバーが豪華なのは、レーベルとしても一押しミュージシャンであることを示しています。ベースにMatthew Garrison(Jコルトレーンとの共演で有名なジミー・ギャリソンの息子)、ドラムにJeff Sipe (いまは亡きギターモンスターShawn Laneと共演)というトリオ構成です。前作では奥さんと称する女性ボーカルがいたり、Terry Bozzioも参加したりとにぎやかでしたが、今回はシンプルな構成。

うっかりすると「インプロヴィゼイション」と間違いやすいタイトルのように、ここで聴かれるのは腕達者な3者による壮絶なインプロの応酬です。マクヘイサックは相変わらずのHoldswortyぶりを存分に発揮していますが、前作「SIC」では引きこもり系の内省的なプレイが目立ったのに対して、今回は少し外向的になって(?)かなり弾き倒しています。まぁ、出てくるは出てくるはの「変態&超絶ソロの嵐」です。このアルバムを入手後、某巨大販売サイトで「2006年にリリースされたアルバムでは間違いなく最高傑作!」と手放しで大絶賛した記憶がありますが、4年たったいまでもその思いは変わりません。

その意味ではデビュー作「Featuring Ourselves」に戻った感がします。それにしてもGarrisonとSipeという最高に強力なリズム隊をバックに、ギターが安心して暴れること、暴れること。1曲目「There's a New Sheriff In Town」などはまるでテクニカル系メタルのような疾走感に、マクヘイサックの変態ソロが絡んできてこの手の音楽好きにとっては、軽くめまいがするほどの素晴らしさです。SipeもShawn Lane亡き後、いい相方が見つかったとホッとしたとともにすっかり回春したかのような暴れようです。

このアルバムでマクヘイサックに興味を持った方は、Terry BozzioとのライブDVD「Out Trio」で動く姿を見ることができます。ご参考まで。Holdswothyの最右翼ですから、この手のテクニカル系ギターファンに強力に推薦いたします!

●Musicians
Alex Machacek / guitars
Jeff Sipe / drems
Matthew Garrison / bass

●Numbers
1. There's a New Sheriff In Town
2. Along Came a Spider
3. Shona
4. Gem 1
5. Gem 2
6. To Whom It May Concern
7. Yoga For Cats Part 1
8. Yoga For Cats Part 2
9. Very Sad
10.Matt's Riff
11.Put Me Back To Sleep
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2010年5月27日 (木)

GARSED & HELMERICH / MOE'S TOWN(2007年)

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Musician●Garsed & Helmerich
Titel●Moe's Town(2007年)
■Amazonより購入

1990年代は「Garsed & Helmerich」名義でハイパーフュージョンサウンドを聴かせてくれた名コンビが、「Uncle Moe's Space Ranch」として復活しました。前作が2002年リリースでしたから何と7年ぶりの新譜ということになります。Tone Centerレーベルからリリース。参加メンバーは前作に引き続き、Brett Garsed(g)、TJ.Helmerich (g)、Gary Willis(b)、Dennis Chambers(d)、Scott Kinsey(key)という現代のジャズ・フュージョン界での最強メンバーです。Garsedのオージー人脈からVirgil Danati(d)が1曲のみ参加しています。

基本的には前作の延長線上にはありますが、前作ではやや存在感に乏しかったScott Kinseyの役割分担が増えたような気がします。しかも、なぜかScott Kinseyはピコピコサウンド、つまりテクノポップ的なSEをやたらと多用しています。1曲目「Valentimes Day」からピコピコと始まるので何だか嫌な感じがするのですが、ほどなくGarsedの流麗なソロが鳴り始めるのでホッと一安心。実はテクノがあまり好きではないのです。Garsedが一通り鳴き終わると、Helmerichの両手タップの独壇場です。相変わらず変態フレーズのオンパレード。このコンビのアルバムはこれでなくてはいけませんね。ソロの順番ですがGarsedが先鞭をつけ、Helmerichが仕上げるというスタイルは不変のようです。

それにしても、やたら複雑な曲構成、変拍子の多用、そして隙間を縫うように入り込んでくるGarsedの流麗なレガートとHelmerichの変態タップ。前作にも増して音の圧力は確実に上がっています。凄腕集団ながら決してテクニックのみに走ることなく、それでいて水面下ではものすごいことになっているという奥深さは変わりません。ですから「弾きまくり状態」を期待する人にとっては一見するとやや物足りなく感じるかもしれませんが、そこら辺が「匠のワザ」なのです。

特に唯一無比の変態サウンドを生み出すHelmerichのタッピングは、ハーモニックスなどを駆使するなどさらに磨きがかかった感がします。この人、本来はスタジオエンジニアでScott Hendersonの作品に関わっている技術者なんですけど。何でもできる才能には本当に感心します。

しかしTone Centerのアルバムはことごとくジャケットデザインが悪趣味ですね。

●Musicians
Brett Garsed / guitar
TJ Helmerich / guitar
Dennis Chambers / drums
Gary Willis / bass
Scott Kinsey / keyboard

●Numbers
1. Valentimes Day
2. Moe Town
3. Ella's Hotel
4. Audio Rhumba
5. Dads Speakers
6. Inspired Weak
7. Snout!
8. Path to Aesthesis
9. Nitro squirrel (multiple moe)
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2010年5月26日 (水)

何とも悲しげなブルースギターが泣かせるJBウルマーの意欲作

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Musician●James Blood Ulmer(guitar)
Title●Harmolodic Guitar with Strings(1993年)
■ディスクユニオンで購入

オーネット・コールマンが提唱する「ハーモロディック理論」の後継者、James Blood Ulmer(ジェームス・ブラッド・ウルマー)が1993年に発表した意欲作です。ウルマーというと80年代初頭に発表した「Black Rock」 などでのファンキーでゴリゴリと押しまくるサウンドの印象が強いのですが、実はブルースギターの名手でもあります。この作品では、4人の弦楽器奏者を従えてブルースとの融合を図った意欲的なアプローチを試みています。ウルマーはあえて持ち味であるゴリゴリ感を押さえて、クリアーかつ繊細なブルースギターを披露。弦楽器が生み出す叙情感と、ブルース独特の哀愁感とが奇妙にマッチして何とも形容しがたい悲しみをたたえた世界を現出させています。

この4人の弦楽奏者とウルマーがどんな経緯で結びついたかはよくわかりません。「クアルテット・インディゴ」と称するユニットは不勉強で知りませんでしたが、どうやらアメリカではNYタイムス紙が絶賛するほどのユニットだそうです。また、4人ともジャズに精通していて、コルトレーン「Naima」をカバーしたアルバムも出しているとか。ですから、クラシック畑の人が迷い込んできたという、違和感はまるで感じられません。

6つのパートに分かれた組曲形式をとる作品ですが、聴くたびに異なった印象を受けるという私にとって不思議な作品です。異質とも思えるストリングスとの共演も、実は深遠な部分で見事に融合され、そして静かな慟哭の世界へと昇華されていることが何となく理解できます。生意気を言えば、かなり聴く者を選ぶ作品であることは確かですが、人生の節目、節目で何度も反芻しながら聴いてみたいそんな作品です。中間聴けるゴスペル調のウルマーのボーカルも、陽気なようでいて実はとてつもなく悲しげです。やはり黒人の血がそのようにさせるのでしょうか。

ただし「Black Rock」あたりのコテコテ油ギッシュサウンドを期待する人にはお勧めすることはできません。

●Musicians
James Blood Ulmer / guitar,vocal
Quartette Indigo
Gayle Dixon / 1st violin
John Blake / 2nd violin
Ron Lawrence / viola
Akua Dixon / cello

●Numbers
1.  Opening
2.  Arena: Church
3.  Arena: Seven Gates
4.  Arena: Arena
5.  Arena: Lights Out
6.  Arena: Church II
7.  Arena: Arena II
8.  Page One: In the Name of...
9.  Page One: Page One
10. Page One: Blood and John
11. Page One: Page One II
12. Page One: Grand Finale
13. Maya
14. Black Sheep: Prologue
15. Black Sheep: By-Pass
16. Black Sheep: Caretaker
17. Black Sheep: Lost One
18. Black Sheep: Black Sheep
19. Black Sheep: Epilogue
20. Theme From Captain Black
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2010年5月25日 (火)

ポリドール移籍第2弾でホールズワースが回春?「Hard Hat Area」

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Musician●Allan Holdsworth(guitar)
Title●Hard Hat Area(1993年)
■ディスクユニオンで購入

変態&テクニカル系ギタリストの大御所、Allan Holdsworth(アラン・ホールズワース)の1993年の作品です。ポリドールに移籍後の第1弾「Wardenclyffe Tower」(1992年)では変態ギターの極みとも言えるバリトンギターを導入しましたが、オールドファン(?)からは「どうしてよ」と酷評(?)を浴びるという結果になってしまいました。

作品と作品とのインターバルが異常に長いホールズワースとして珍しく間髪入れずに発表されたこの作品では、やや原点回帰の兆しがうかがえます。前作で不評だったバリトンギターを一切使わず、また賛否両論に分かれるシンタックスが使われているのは全7曲中、2曲のみ。本来の「ギター弾き」としてのホールズワースが帰ってきました。その意味では「Sand」の反動からギター中心に切り替えた「Secrets」に近い作風になっています。

ホールズワースの「復活」を確信したのが、1曲目「Prelude」。かつての輝きを取り戻したかのような超絶技巧で聴く者のド肝を抜きます。ぞっとするほどの美しさ&変態性は神ワザにまで昇華されています。ギターアルバムはかくあるべし、と溜飲を下げたファンも多かったのではないでしょうか。

参加メンバーをみると、レギュラー扱いだったChad WackermanとJimmy Johnsonがはずれ、Skui Sverrisson(スクリ・セバリソン)というベース奏者がスタメンに抜擢されています。一種のショック療法が好結果を生んだようです。

「Wardenclyffe Tower」でも触れましたが、80年代後半から90年代初頭にかけてホールズワースはほかのミュージシャンのアルバムに盛んに客演しています。この積極的な行動は外向的な性格になったこともありますが、ファンにとって永遠の謎と言えるのが、「ゲスト参加ではあんなに素晴らしいプレイができるのに自身のリーダー作は不発なのか」ということです。これはプロデュースの問題もありますが、残念ながら「作曲能力の欠如」によるところが一番大きな要因ではないかと思います。

一からすべてを作り上げる職人気質も素敵だと思いますが、いったん方向性を見失うと悲惨な結果をもたらします。それよりも、ゲスト参加のようにある程度環境が整った段階から参加して、ギター1本で勝負をかけるほうが遙かに結果が良いようです。

●Musicians
Allan Holdsworth / guitars,synthaxe
Steve Hunt / keyboards
Skui Sverrisson / bass
Gary Husband / drums

●Numbers
1. Prelude
2. Ruhkukah
3. Low Levels,High Stakes
4. Hard Hat Area
5. Tullio
6. House of Mirrors
7. Postlude
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2010年5月24日 (月)

Alex Machacekの奥さんのソロアルバム「Indian Girl」

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Musician●Sumitra Nanjundan(vocal)
Title●Indian Girl(2004年)
■Guitar 9より購入

オーストリア出身のテクニカル系ギタリストであり、Allan Holdsworthフォロワーの急先鋒Alex Machacek(アレックス・マクヘイサク)がインド人女性と結婚していたとは知りませんでいた。Sumitra Nanjundanというシンガーがその人です。Alexのプロデュースのもと制作されたのがこのアルバムです。

いわば「夫唱婦随」の作品、昔でいえば田辺靖雄と九重佑三子、ヒデ&ロザンナ、チェリッシュということでしょうか。ポール&リンダマッカートニーも忘れてはいけません。夫婦2組で結成したABBAもそうですね。テクニカル系ギタリストでいえば豪州出身の変態ギタリストBrett Garsedがカントリー歌手の奥さんのアルバムに参加しています。おっと忘れていました、ジョン&アリス・コルトレーンもいました。

で、なにが言いたいかというと、こうした「夫唱婦随系」は往々にして気恥ずかしい結果になってしまう危険性があるということです。旦那や奥さんのファンであっても、その配偶者まで好きになることはそんなにないと思うのです。この「夫唱婦随系」の典型的な失敗例だと個人的に思うのは、ジョン・レノンと小野洋子の取り合わせで、かつてプラスティック・オノ・バンドとして数枚のアルバムを残しています。もちろん、素晴らしい楽曲を残しはしましたが、実際は「はずれ」のほうが成功例よりも遙かに多かったと思います。ファンは正直です。プラスティック・オノ・バンドはセールス的に致命的な不振に終わりましたが、バンドの呪縛から解放されてリリースした「イマジン」が爆発的なヒットになったのは、「そうなんだよ、レノンはこれなんだよ」というファンの正直な気持ちの表れだった思います。セルフプロデュースと言うと聞こえはいいのですが、自分たちを客観的に把握しないととんでもないことになるのです。

でも、表立って2人に向かって「あんたらつまらない」と言えなかったのは、やはりミュージシャンとしての「格」であり、バックについている大手資本への配慮もあると思います。小野洋子も某財閥のお嬢ですしね。これは関係ないか。

さて、このアルバムは「成功」しているかというと、かなり微妙なラインだと思います。Machacekのギターは相変わらず素晴らしいのですが、割り込んでくる奥さんのボーカルは可もなし不可もなしという感じで、特別に何かというものは感じられません。昔だったら奥さんがインド人というだけでそれなりに注目を浴びたかもしれません。でも、これだけ国際結婚が当たり前になっている状況では、アドバンテージとはなり得ないでしょう。どうせなら、コテコテのインド音楽とプログレとを融合するとか、大胆な冒険がほしかったところです。

●Musicians
Sumitra Nanjundan / vocal
Alex Machacek / guitar
Mario Lackner / drums
Tibor Kovesdi / bass

●Numbers
1. Indian Girl
2. If My Clothes Were Torn
3. Destiny 2001
4. I Know It's Late
5. 20 Years
6. I'm Afraid Of The Dark
7. At The End
8. My Love's Like A Red Rose
9. Can You Emagine?
10.Orange & Gold
11.No Words
12.One Life
13.Empty Fields
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2010年5月23日 (日)

バリトンGを導入した意欲作「Wardenclyffe Tower」

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Musician●Allan Holdsworth(guitar)
Title●Wardenclyffe Tower(1992年)
■ディスクユニオンで購入

テクニカル系&変態系ギタリスト、Allan Holdsworth(アラン・ホールズワース)が1992年にリリースした作品です。1989年「Secret」以来ですから3年ぶりの新譜ですね。この作品からポリドールに移籍して、新境地を開いたか? と大いに期待をもって購入したことを覚えています。

心機一転して取り組んだこの作品では、29のフレットを持ち、通常のギターよりも3度低い最低音が出せるという「バリトンギター」を新規導入しています。このバリトンギターによるプレイは最後の1曲のみ「Oneiric Moor」ですが、残念ながら個人的にはピンときませんでした。あえて酷評すると空回りの感がします。同時期のライブ音源を聴くとやはりバリトンギターを多用していましたが、それ以降はまったく使用していないことから、単に御大ならではの気まぐれだったのかもしれません。

また、「Sand」以来好んで使っているシンタックスも4曲ほどで使用。だいぶこなれてきたようには思いますが、それでも「生のギター」の表現力には遠く及ばないように思えます。個人的な思いとして、ギター弦の音をわざわざシンセに置き換える意味がどうしても理解できないのです。確かにギターシンセは音の空間的な広がりをもたらしますが、せっかくの熱い思いが、シンセを経由することで半減してしまうような気がして仕方がないのですが。

最後の3曲は日本盤のみのボーナストラックになっていて、「Tokyo Dream」「The Unmerry Go Round Part4」「The Unmerry Go Round Part5」の新バージョンを聴くことができます。それでもシンタックスを多用した「Tokyo Dream」を聴くと、やはりオリジナルバージョンのほうが数段印象的だったな、と思わざるを得ません。

そんなわけで聴く人の耳は正直なもので、このアルバムは「Road Games」 「Metal Fatigue」ほど売れなかったそうです。意欲は買えるけど、オーディエンスが求めるものと微妙にミスマッチを起こしていたのでしょう。しかし、同時期のゲスト参加、たとえばChad Wackermanのリーダー作では実に素晴らしいプレイを聴かせています。ゲスト参加では素晴らしいけれど、肝心のソロ作品では…と指摘され始めたのもこの頃からではないでしょうか。これは思うに御大の作曲能力の欠如によるものだと思うのですが。

さて、このアルバムでは会話というか「呟き」が随所に使われています。呟き、いまでいうTwitterですね。その言葉の内容というよりも、SE的な使われ方だと思うのですが、極めつけは1曲目「5 to 10」のエンディングで「I Hate Jazz!」(私はジャズが嫌いだ)という声です。これがホールズワース本人によるものかはわかりませんが、ちょっとしたアイロニーというか洒落なのだと思います。もとよりジャズとロック、ジャズとプログレの境界線を彷徨してきたギタリストだけに、いまさら好きも嫌いもないと思うのですが、あえて「ジャズは嫌い」と呟くことで、受け手の反応を楽しんでいるのではないでしょうか。ちょっとした愉快犯のようなものです。案の定、日本盤のライナーを書いた成田某氏がもっともらしいことを書いていますが、まさに御大の術中にはまってしまっています。たぶん、御大はシメシメとほくそ笑んでいることでしょう。

●Musicians
Allan Holdsworth / guitar,synthaxe
Jimmy Johnson / bass
Chad Wackerman / drums
Steve Hunt / keyboards
Gary Husband / drums
Vinnie Colaiuta / drums on Against the Clock
Naomi Star / vocals on Against the Clock

Gordon Beck / keyboards on Tokyo Dream,The Unmerry Go Round Part4

●Numbers   
1. 5 to 10
2. Sphere of Innocence
3. Wardenclyffe Tower
4. Dodgy Boat
5. Zarabeth
6. Against the Clock
7. Questions
8. Oneiric Moor

(Bonus Track)
9. Tokyo Dream
10.The Unmerry Go Round Part4
11.The Unmerry Go Round Part5
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2010年5月22日 (土)

チャド・ワッカーマンの2nd「The View」

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Musician●Chad Wackerman(drums)
Title●The View(1993年)
■ディスクユニオンで購入

元フランク・ザッパバンド出身で、テクニカル系ギタリストAllan Holdsworthの作品でも知られる豪州出身の凄腕ドラム奏者、Chad Wackermanのソロ第2弾です。1993年リリース。前作は「職場の上司」Allan Holdsworth(アラン・ホールズワース)の全面的支援で制作されましたが、今回はHoldsworthに加えてアメリカ出身の凄腕セッションギタリストCarl Verheyen(カール・ヴァーヘイエン)も参加しています。ほかメンバーはAllan Holdsworth、Jim Cox(key,snth)、Jimmy Johnsonという前回メンバーに加えてWalt Fowlerというトランペット奏者が入っています。この人はザッパバンドからの人脈ではと想像します。

前作「Forty Reasons」ではチャドのソロ作品でありながら、唯我独尊型上司であるホールズワース一色に染まったという感じでしたが、今回は13曲中6曲に参加しています。Carl Verheyenは6曲ですから、パワーバランスの点ではかなり「ホールズワース臭」が抑えられています。それでも「職場の上司」が放つ臭いはやっぱり強烈で、可哀想なことにCarl Verheyenの陰が薄くなってしまっています。Stuffなどで活躍してきた凄腕ギタリストですら、という感じです。

曲のほうは前作の踏襲という感じで、特筆するべき点はありませんが、HoldsworthとVerheyenとのプレイを聴き比べてみると面白いと思います。

●Musicians
Chad Wackerman / drums
Alln Holdsworth / guitar
Carl Verheyen / guitar
Jim Cox / organ,piano
Jimmy Johnson / bass
Walt Fowler / trumpet

●Numbers
1. Close To Home
2. Across The Bridge
3. Black Cofee
4. Empty Suitcase
5. Introduction
6. Starry Nights
7. All Sevens
8. On The Edge
9. Just A Moment
10.The View
11.Bash
12.Flares
13.Days Away
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2010年5月21日 (金)

Mr.Siriusの抱腹絶倒ライブ

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Musician●Mr.Sirius
Title●Incredible Tour(1990年)
■メーカーサイト(Made In Japanレーベル)より購入

関西が生んだシンフォ系プログレバンドの雄「Mr.Sirius」(ミスター・シリウス)による唯一のライブ音源です。Mr.Siriusはスタジオ盤3枚とこのライブ盤の計4枚のアルバムを残していますが、現在は恒久的な解散状態。作品も廃盤状態にありましたが、2006年に紙ジャケット仕様で再発売されました。

バンドリーダーの宮武和広さんはミュージシャンとしては活動停止中ですが、大阪で和傘の通信販売を展開しています。「心斎橋みや竹」という屋号で運営されている宮武さんのお店ですが、和傘というある意味ニッチな商品にもかかわらず驚異的な売り上げをあげているそうで、新聞・テレビ・雑誌などのマスコミで多く取り上げられています。講演に呼ばれることも多いとか。いわば通販業界のひとつのビジネスモデルですね。

何といっても7曲目「Siberian Khatru 90」が圧巻です。曲タイトルで明らかなようにYESの名曲「Siberian Khatru」の完全なパクリです。宮武氏による抱腹絶倒のMCが何と10分近くも続いたあと、「海外のミュージシャンが来日したときにやる定番の曲」という紹介から、何と「春の海」が流れます。これはYESが来日するたびに、イアン・アンダーソンが「赤トンボ」「チューリップ」などを披露することことに対するパロディなのでしょう。「もしもリック・ウエイクマンがフルートを吹けたなら」という大胆不敵な発想でプレイされるこの曲は、本家YESの演奏力に負けず劣らず素晴らしい出来映えになっています。そして、メロトロンが高らかに鳴り響きエンディングを迎えようかというタイミングで、いきなりゲスト参加の難波弘之と大谷レイブン(元MARINO)が乱入してきて、状況は一変。レイブンのディストーションが効きまくた長いソロが終わったと思ったら、曲はなぜだかDeep Purple「Space Truckin'」のいエンディングテーマに。ここで「おちょくり」が終わると思いきや、今度はELP「Hoedown」へ、そして「Siberian」に戻ったら今度はYES「Roundabout」へ。今度はGenesisに行ったと思ったら、「Siberian」に戻って最後はYES「Heart Of Sunrise」で締めるという嘘みたいな展開を何事もなかったかのように、プレイしています。

凄まじい演奏力、関西人らしいおちょくり精神、抱腹絶倒の宮武氏のMC…。生真面目に音楽を愛する人にとっては、もしかしたら「くだらない」と言われそうですが、そもそも「音を楽しむ」のが音楽。気難しいという先入観をもたれがちなプログレですが、こんな面白いバンドがあることも記憶の隅にとどめていただければ幸いです。

タイトルの「Incredible」とは「信じられない」という意味ですが、まさに文字通りに信じられないほどの超絶技巧の限りが尽くされているライブ音源です。「自主海賊盤」と銘打っているため、あえてチープな造作になっています。

余談ですが、宮武氏のMCはいまは亡き桂枝雀師匠の語り口を参考にしているとか。日経新聞で取材を受けたときは「叙情と笑いの世界」として紹介されたとか。緩急がついた語り口はミュージシャンの域を越えています。思わず爆笑してしまったフレーズを一つだけ紹介しますと、

「酒代にあてたメロトロン have been 質流れ」

●Musicians
宮武和広 / keyboard,flute,guitars,Rick"Fake"man
大木理紗(永井博子) / vocal
藤岡千尋 / drums,percussion
村岡秀彦 / bass
釜木茂一 / guitar
宮武美代子 / backing vocal on Madrigal

難波弘之 / organ on Siberian Khatru 90
大谷レイブン / guitar on Siberian Khatru 90

●Numbers
1. Opening~Requiem(original version)
2. Advance Billing
3. Madrigal(from All the fallen people)
4. Time in the Image ※未発表曲
5. Babooshka~Love incomplete
6. Kokan de Jealousy(perfect version)
7. Siberian Khatru 90
8. Barren Dream~Grand Finale
Dscf1396

2010年5月20日 (木)

GONG / GAZEUSE!(1976年)

Dscf1641






Musician●Gong
Title●Gazeuse!(1976年)
■ディスクユニオンで購入

フランスのプログレバンド「Gong」による1976年の作品です。このGongというバンドは日本ではあまり知名度が高くないと思われますが、2台のヴィブラフォンをベースに大変リズミカルなサウンドを作り出すユニークな存在です。この作品の前作「Shamal」を最後にギターのスティーブ・ヒレッジが脱退してしまい、代わりにヴァージンレコードのツテからイギリス出身のAllan Holdsworthが参加しています。ホールズワースは同年にCTIレコードから「Velvet Darkness」 をリリースしていますが、その契約関係のためなのか所属はCTIのままになっています。

さて、いつも以上に躍動するGongサウンドに乗って、ホールズワースのギターソロが自由自在に暴れまくるのが、この作品の最大の聴きどころです。1曲目「Expresso」はかなりベタなフレーズの繰り返しがしばし続いた後、ホールズワースの怪しげなウネウネフレーズが入ってきます。つかみはOKですね。このアルバムを録音する前、ホールズワースはアメリカに渡ってTony Williamsとの2作と自身初のソロ「Velvet Darkness」をレコーディングしていますが、これほどまでにウネウネしていませんでした。やはり、ホームである欧州の雰囲気がウネウネに走らせたのでしょう。

2曲目「Night Illusion」はややズッコケ気味の危ういリズム感が不思議な魅力を醸し出す曲。ここでもホールズワースのアームがウネリにウネっています。ホールズワース作曲です。

何といってもこのアルバムでの最大の聴きどころは、5曲目「Shadow Of」でしょう。同一旋律、同一テーマで「Velvet Darkness」というアルバムタイトルと同じ曲がありましたが、前回はリハーサルに十分な時間が確保できず中途半端な出来映えになっていました。そこで曲名を変更してリベンジというわけですが、リズム隊が作り出す粘っこいポリリズムとホールズワースのウネウネとが見事にかみ合って素晴らしい曲に仕上がっています。これほどのウネウネは前後してアメリカ時代、UKやブラフォード時代でも聴かれなかったので、「過去最大級のウネウネ」といっても過言ではないと思います。興味ある人は「Velvet Darkness」 とこの「Shadow Of」とを聴き比べてみるのも一興かと思います。

ラストの「Mirelle」はもの凄い勢いで展開するリズム隊とホールズワースの速弾きとの「電撃のG1レース」のような曲。ヴィブラフォンやらマリンバの連打とギターとが渾然一体となってめくるめくスピード感を出しています。そして最後はピアノでクールダウンするという何とも心憎い演出です。

というわけでホールズワースファンはもちろん、良質なジャズロック作品として多くの方に聴いていただきたい傑作です。

●Members
Mireille Bauer / vibraphone,marimba,glock,toms
Mino Cinelou / congas,african bell-gong,cuica,triangle,maracas,talking drums,temple blocks

Allan Holdsworth / guitars,violin,steel guitar
Didier Malherbe / sax
Benoit Moerlen / vibra
Pierre Moerlen / drums,vibra,marimba,glock
Francis Moze / fretless bass,gong,piano

●Numbers
1. Expresso
2. Night Illusion
3. Percolations Pt 1
4. Percolations Pt 2
5. Shadow Of
6. Esnuria
7. Mirelle
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2010年5月19日 (水)

名コンビ「Garsed & Helmerich」がパワーアップしたUncle Moe's

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Musicians●Garsed & Helmerich(guitar)
Title●Uncle Moe's Space Ranch(2001年)
■Amazonより購入

90年代に「Garsed & Helmerich」として3枚の作品をリリースした彼らが、再出発の形で結成したのが「Uncle Moe's Space Ranch」Brett GarsedとTJ Helmerichという超絶ギタリスト2人とGary Willisという強力トリオに加えて、今回はドラムにDennis Chambers、鍵盤楽器にScott Kinseyが入りさらにパワーアップしています。

基本的には彼らの「Quid Pro Quo」 (1992年)や「Exempt」(1994年)と同じ路線の奇天烈系&ハイテクフュージョンサウンドですが、前2作はボーカル入りで途中ややダレ気味の感がしましたが、今回はボーカルなしのガチンコインスト勝負。かたや指2本とピックを使う変則奏法のGarsedとかたや両手タップの怪人Helmerichという2大変態ギタリストが作り出すマカ不思議なサウンドは、ギターマニアにとって魅力がたんまりでしたが、リズム隊が強化されキーボードが加わったことで「最強の変態ユニット」の完成です。

1曲目「Colliding Chimps」はのっけからフルスロットルで全力疾走という感じ。Garsedのテレキャスの軽い音とやけに重々しいHelmerichのウネウネタップとの対比が何とも不気味です。Kinseyも負けじと暴れまくっています。

6曲目「Minx」、7曲目「I Want a Pine Cone」はおもにGarsedがリードする展開です。やたらと息の長いGarsedのソロが筆舌に尽くしがたいほど美しい!受ける形のHelmerichのソロは徹底して不気味です。

ラスト「Thousand Days」は一転して明るい感じの曲。Garsedの軽い感じのソロでこのまま終焉を迎えると思わせておいて、Helmerichのソロが展開し始めると一転して不気味な感じに。やはり一筋縄では収まりません。曲が終わったと思ったら、なんだか後ろのほうで小声が聞こえています。単に会話を録音しただけなのだと思いますが、この2人がよくやる「おちょくり」なのでしょう。

どなたかが彼らを称して「平成のフランク・ザッパ」と表現していましたが、ザッパのような演劇的な要素を見られないものの、奇天烈なギターと安易な予想を許さない曲展開は確かにザッパ的ですね。

●Musicians
Brett Garsed / guitar
TJ Helmerich / guitar
Dennis Chambers / drums
Gary Willis / bass
Scott Kinsey / keyboard

●Numbers
1. Colliding Chimps
2. tjhelmerich@earthlink.net
3. Swarming Goblets
4. SighBorg
5. He's Havin' All That's His to Be Had
6. Minx
7. I Want a Pine Cone
8. Thousand Days
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2010年5月18日 (火)

「しばたはつみ」つながりで朱里エイコさんのベスト集

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Musician●朱里エイコ
Title●朱里エイコ全曲集(1994年)
■JR横浜駅コンコース内

今回はいつもと違った趣向でお届けします。

「しばたはつみ」 さん死去の報には少々驚きましたが、そこで思い出したのが「朱里エイコ」さんです。2004年に亡くなった朱里エイコさん(享年56歳)も「しばた」さんと同タイプの歌手だったように思います。この2人は同時代に活躍した天地真理さん、麻丘めぐみさん、アグネス・チャン、南沙織さんなどのアイドル歌手とは一味もふた味の違った「大人のオネエサン系歌手」というカテゴライズですね。整形手術を終えて別人となって「復帰」した「人形の家」弘田三枝子さんも、このカテゴリーに入ると思います。もしかしたら宇多田ヒカルのお母さん、藤圭子も同じグループに入るかもしれません。

今回、ご紹介する朱里エイコさんは、1948(昭和23)年生まれでちょうど団塊の世代。お母さまは振付師の朱里みさをさんでお父さまはオペラ歌手だったそうですが、DVのために両親は離婚し、お父さまはエイコさんが5歳の時に交通事故のために亡くなっているそうです。何やらいきなり波乱万丈のにおいが立ち込めます。ちなみにお母さまが設立した「朱里ジャズダンススクール」はいまでも存在しています。

子どもの頃から抜群の歌唱力が注目されていたエイコさんは、1964(昭和39)年に日本人の海外渡航が自由化されるにともなって、何と16歳で単身渡米します。かの地でオーディションに合格した彼女は、アメリカのショービジネス界でデビューします。おもにラスベガスのクラブを本拠地にして活躍しますが、当時のクラブ歌手は客の嗜好に合わせてヒットチャートのベスト40はすべてレパートリーとして歌いこなせないといけなかったそうです。これは、大変なことだと思います。この時期、サラ・ヴォーンと同じステージに立ったこともあるそうです。

やがていったん帰国して彼女はワンマンショーを開いたりしますが、客は不入りだったために、再度渡米。ラスベガスのコンサートで大成功をおさめて凱旋帰国を果たします。そして1972年に大ヒット曲「北国行きへ」で一躍スターダムを駆け上ります。

1977年に来日したポール・アンカに直接アタックして彼から絶賛を受け曲をプレゼントされます。その中の1曲が「ジョーのダイヤモンド」です。

しかし、アメリカでは注目を集めていたものの、国内ではこれといったヒット曲に恵まれなかった彼女は、次第に鬱を患うようになり、何度か失踪騒ぎを起こします。また、愛人との痴情のもつれから確か名古屋で刃傷沙汰を起こしてワイドショーで話題になったこともあります。

やがてスキャンダラスなイメージばかりが先行するようになり、精神と肝臓を病んでしまい、長期の入院生活を送ることになってしまいます。それでも歌にかける情熱は冷めることはなく、1987年頃から活動を再開します。ちょうどその時期からテレビ番組「あの人はいま」的な番組が始まり、何度かテレビ番組にも出演していました。しかし、肝臓が悪いこともあって薬の副作用の影響からか、ブクブクに太ってしまい驚いた記憶があります。

このように波乱万丈の人生を送った彼女ですが、晩年はなんと生活保護を受けていたとか。最後に歌ったのが確か北千住のスナックで、月数万のギャラを生活の糧にしていたといいますから、まさに栄枯盛衰を地でいくような人でした。ちなみに全盛期は見事なスタイルでも知られ「100万ドルの脚線美」といわれた美脚には、保険金がかけられました。いまでこそ、身体の一部に保険金をかける芸能人は珍しくありませんが、おそらく彼女がその走りではないでしょうか。しかし晩年になって太った自分をネタに「100万ドルの足が10円になっちゃった」と自虐的に言っていたと聞きます。

個人的にはやはり「北国行きへ」が強烈な思い出として残っています。抜群の歌唱力とキャッチーな楽曲は、これまでの日本の歌謡界には存在しなかったように思えます。どうも「北国行きで」のあのメロディーが耳について離れず、駅のコンコース内でのCD屋で発見して即購入してしまいました。椎名林檎がカバーしたという「白い小鳩」も収録されています。

●Numbers
1.  愛は旅びと
2.  Everytime愛
3.  北国行きで
4.  白い小鳩
5.  心の痛み
6.  恋の衝撃
7.  ジェット最終便
8.  めぐり逢い
9.  AH SO
10. 別れの朝
11. ジョーのダイヤモンド
12. サムライ・ニッポン
13. オクラホマ・モーニング
14. ジュビレーション(歓喜)
15. シーズ・ア・レディー
16. 君は我が運命
17. デライラ
18. レット・ミー・トライ・アゲイン
19. 明日に架ける橋
20. マイ・ウェイ
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2010年5月17日 (月)

ロニー・ジェイムス・ディオ死去

ELF、Rainbow、Black Sabbathなど70年代から90年代にかけて活躍した稀代のボーカリスト、Ronnie James Dio(ロニー・ジェイムス・ディオ)が5月16日胃がんのために亡くなりました。享年67歳。

個人的にはやはり元Deep PurpleのRichie Blackmoreと組んだRainbowですね。
来日時の札幌公演で熱狂した観客がステージに押しかけ、ファンが圧死した事件が記憶にあります。

ご冥福をお祈りします。

スウェーデン発 リリカルなジャズギターEwan Svensson

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Musician●Ewan Svensson(guitar)
Title●Streams(1996年)
■ディスクユニオンで購入

スウェーデン出身のジャズギタリストEwan Svensson(イーヴァン・スヴェンソン)はおもにヨーロッパを中心に活動しているためか、日本での知名度はいま一つのようですが、母国スウェーデンではウルフ・ワケニウスと並んで有名なコンテンポラリー系ジャズの代表選手です。国王から貢献があった音楽教育者として表彰を受けているとか。御年60歳という年齢から豊富なキャリアを積み上げているようで、地元のジャズ専門レーベル「Dragon Records」から数枚のリーダー作をリリースしています。

このアルバムをキャッチしたのはまったくの偶然で、いつも足を運ぶCD屋の「今月のおすすめコーナー」を眺めていたらジャケットの美しさに目を奪われたからにすぎません。補足するとスウェーデン出身ギタリスト、一切の手抜きが許されないトリオ構成、ポップコピーの「リリシズム」の言葉に魅力を感じたからです。やはり店頭ディスプレーは大切な要素ですね。

さて、実際の聴いてみるとこれが「大正解」。Ewan SvenssonはJim Hallから始まるコンテンポラリー系ギタリストの系譜を踏んでいるようで、John AbercrombieやPat Methenyあたりから適度な影響を受けています。何といってもハートウォーミングなフレーズとアタックが柔らかいトーンは抜群の安定感を感じさせます。ECMからスカウトされても不思議ではありません。

ところでベース奏者は「森泰人」という日本人で、Ewan Svenssonのアルバムの何作かに参加しています。とても優しいベースラインを弾かれます。森さんは現在もスウェーデン在住のようで、その活動内容は彼のブログ「スウェーデンの森・森のグレンタ」で伺い知ることができます。

●Musicians
Ewan Svensson / guitar
Yasuhito Mori / bass
Magnus Gran / drums

●Numbers
1. Place Ⅳ
2. Arcachon
3. SApring is Here
4. Quietly
5. Hostglimtar
6. Just Like Before
7. Weird Blues
8. Pancake Rock
9. Carlo's Dream
10.Autumn in New York
11.Waitz for Ann
12.Short Talk
13.Late Evening
Dscf2001

2010年5月16日 (日)

清廉かつ流麗なJan Garbarekの「Photo With」

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Musician●Jan Garbarek(sax)
Title●Photo With(1978年)
■ディスクユニオンで購入

「北欧のコルトレーン」の異名をもつサックス奏者Jan Garbarek(ヤン・ガルバレク)による1978年録音の作品です。前作「Places」(1977年)は個人名義でのリリースでしたが、本作は「Jan Garbarek Group」としてリリースしています。そのためでしょうか、前作は個人技が目立つ印象でしたが、ここではバンドアンサンブルを強くイメージしているように感じさせます。メンバーはBill Connors(guitar)、John Taylor(piano)が継続参加で、前作では不在だったベース奏者にドイツ人Eberhard Weberが加わり、ドラムがJack Dejohnetteからノルウェー人のJon Christensenにチェンジしています。

Garbarekといえばキース・ジャレットが70年代中盤に結成した「ヨーロピアン・カルテット」への加入から一躍有名になりましたが、いい意味でも悪い意味でもジャレットからの呪縛から解放されたかのごとく、実に伸びやかなプレイを聴かせてくれています。

1曲目「Blue Sky」はアルバムジャケットのように青く澄み切った空を思わせる実に心地よい曲。ガルバレクのテナーも実に伸びやかで爽快です。中盤からコナーズの少し歪んだギターソロが加わりさらに盛り上げます。

2曲目「White Cloud」は前曲の”青い空”を受けて今度は”白い雲”。こちらも北欧の澄んだ空気を感じさせる佳作です。

3曲目「Windows」は実に優しいガルバレクのサックスじゃら始まる大変美しい曲。少しだけカントリー音楽的な要素がブレンドされ、心が妙に落ち着いてきます。

4曲目「Red Roof」は若干フリー的な要素が混ざった曲で、ガルバレクによるエキゾチックなフレーズを聴いていると桃源郷へと誘い込まれるような浮遊感を感じます。コナーズのギターも宙を舞っているかのようで実に心地よい曲ですね。

5曲目「Wires」もややフリーな感じの曲です。ガルバレクがイニシアティヴを握りながらも、各パートが織りなすフレーズの応酬は、静寂な音作りの中にあって水面下では強烈なジャズ魂を感じ取ってしまいます。

6曲目「The Picture」はテイラーが作り出すアルペジオ的なフレーズのリフレインが大変印象的で美しい曲。この透明感が尋常でなく美しいサウンドは、70年代後半のECM作品に共通するものですね。コナーズのギターも恐ろしいほど美しいフレーズを聴かせてくれています。

前作「Places」が沈んだ感じのかなり内省的なイメージだったのに対し、この作品はもてる表現力を目一杯外界に向けて開放したかのような潔さと明るさを感じさせます。BGM代わりに流して聴くのもよし、各パートの底知れぬ表現力に息を潜めてじっくりと耳を傾けるのもよし。その人の状況によってさまざまな表情を見せてくれる万華鏡のような作品です。

●Mucisians
Jan Garbarek / sax
Bill Connors / guitars
John Taylor / piano,organ
Eberhard Weber / bass
Jon Christensen / drums

●Numbers
1. Blue Sky
2. White Cloud
3. Windows
4. Red Roof
5. Wires
6. The Picture
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2010年5月15日 (土)

Bコナーズの瑞々しい作品「Of Mist And Melting」

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Musician●Bill Connors(guitar)
Title●Of Mist And Melting(1977年)
■ディスクユニオンで購入

Return To Forever(RTF)の初代ギタリストBill Connors(ビル・コナーズ)はRTF脱退後に今度はドイツに本拠地を置くECMへと移籍します。1974年に発売された「Theme To The Guardian」はRTFとは一転してアコースティックな世界を志向し始めます。

1977年に録音されたこの作品は、Connors名義としては2枚目になります。前作がアコギ1本で臨んだのに対して、今回はカルテットのバンド構成。メンバーがすごい!サックス奏者に「北欧のコルトレーン」の異名をとるJan Garbarek、ベースに重鎮Gary Peacock、ドラムにマイルズ楽団出身のJack DeJohnetteという最高のメンバーで、このなかに入ってしまうとConnorsが一番知名度が低いかもしれませんね。

楽曲はというと、期待通りの「典型的なECMサウンド」で、理知的でリリカルなConnorsのギターとGarbarekによる魂が込められた情熱のブロウとの攻防を聴くことができます。この2人の熱い会話を支えるリズム隊も素晴らしい!Connorsのギターは内省的でありながら情熱的、シンプルながらカラフルな彩りを放っています。

さてこのアルバムのもう1人の主役であるGarbarekをして「北欧のコルトレーン」と称しましたが、同時代に活躍したイタリア出身のGato Barbieriがラテンフレイバーな雰囲気で野太くマッチョなプレイが特徴なのに対して、Garbarekは繊細で理知的。また北欧に古くから伝承されるフォークレアな要素も多分に醸し出しています。ラテン系とアングロサクソン系の民族的な違いなのでしょうか。それともカトリック(旧教)とプロテスタント(新教)の宗教上の違いなのでしょうか。ちなみにConnorsはアメリカ西海岸出身ですから、それぞれの出自と生み出す音との相関性を考えながら耳を傾けて面白いかもしれませんね。「異種格闘技」的なコラボが得意なECMですから、そのあたりは計算済みなのかもしれません。

Connorsは前出「Theme To The Guardian」、この「Of Mist And Melting」、そして再びアコギ1本で臨んだ「Swimming With A Hole In My Body」の3枚のリーダー作を残しています。また、Jan GarbarekやJulian Priesterのリーダー作にもゲスト参加し、実に瑞々しいプレイを披露しています。そしてやがてECMから抜けてアメリカに帰ってしまいますが、突如、1984年に「大変身」して私たちを驚かせます。詳しくは以前の記事にまとめましたが、音を聴くかぎりとても同一人物によるプレイとは思えない変貌ぶりです。軸が定まっていないのか、変幻自在というべくか、単に飽きっぽいのか。本当に人騒がせなギタリストです。でも、そんな面が魅力だったりするわけです。

●Musicians
Bill Connors / guitar
Jan Garbarek / sax
Gary Peacock / bass
Jack DeJohnette / drums

●Numbers
1. Melting
2. Not Forgetting
3. Face in The Water
4. Aubade
5. Cafe Vue
6. Unending

下2枚はアナログ盤デザインです。まるで違います
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2010年5月14日 (金)

Mark Varney Project第1弾!

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Musicians●MVP(Allan Holdsworth & Frank Gambale)
Title●Truth in Shredding(1991年)
■ディスクユニオンで購入

いまはなきテクニカル系ギタリストの登竜門的レーベル「レガート」の総帥、Mark Varneyが恥ずかしげもなく自分の名前を冠したプロジェクトの第1弾です。どうしてこのようなプロジェクトが誕生したのかは当時はあまり興味がなかったのですが、どうやらMark Varneyが自身のレーベルで唯一の所属ミュージシャンだったFrank Gambaleを他のレーベルへの移籍を何とか食い止めようと考えついた窮余の策だったそうです。つまり大物ギタリストAllan Holdsworthとの共演を餌に、何とかFrank Gambaleの歓心を得ようと画策したわけです。実際にはFrank GambaleはJVCへ移籍してしまったので、策に溺れた結果になってしまいました。

ところで有名な話ですが、2大ギタリストの夢の共演と謳いながらHoldsworthとGambaleは顔を合わせていません。まずGambaleとバックミュージシャンによるトラックが完成し、後日Holdsworthがオーバーダブでレコーディングしています。まぁ、こんなカラクリはいまでは当たり前の話ですね。

というわけで、そもそもが「不純な動機」から生まれた企画ですし、しかもこのアルバムのために書き起こされたオリジナル曲はたった1曲のみで、あとはブレッカー・ブラザーズ、チック・コリア、ウェイン・ショーター、マイルス・デイヴィスの人気曲をカバーしたという安易といえば安易な作品。それでも当代きってのテクニシャンが揃えば素晴らしい作品になることは当たり前の話です。

1曲目「Rocks」はブレッカー・ブラザースの代表的な曲です。まずGambaleが先導役を引き受け、Holdsworthがウネウネフレーズで受けるというパターン。対照的な奏法の2人ですが、その違いを聴き比べてみると面白いと思います。

2曲目「Humpty Dumpty」はチック・コリアによる70年代の曲。4ビートのリズムに乗ってGambaleのスウィープピッキングが炸裂します。Holdsworthは得意のシンタックスを使用しています。

3曲目「The Fall」はWRのウェイン・ショーターの曲ですが、Mデイヴィスの「ネフェルティ」に収録されています。Gambaleはアコギ、Holdsworthはシンタックスを使用。

4曲目「Not Ethiopia」は今は亡きマイケル・ブレッカーの曲。2大ギタリストはこれでもか!という塩梅で弾きに弾きまくっています。

5曲目「New Boots」は唯一のオリジナル曲。Gambaleにしては珍しくシャッフル調の4ビートの曲です。はじめのギターシンセはGambaleで交代してHoldaworthがシンタックスを操っています。

6曲目「Ana Maria」は再びウェイン・ショーターの曲で自身のソロアルバムに収録されています。2人の個性的なプレイの対比が面白い感じに仕上がっています。

7曲目「Bathsheba」はやはりマイケル・ブレッカーの曲で、Holdsworthはギターに持ち変えてウネウネと怪しげなフレーズを連発。最後はGambaleのイケイケドンドン的で賑やかなソロで大団円を迎えます。

というわけで、安易といえば最後まで安易な作品ですが、それでも強烈なギターアルバムに仕上がっていることは確かです。また、過去の名曲や知らなかった佳作が、新たな形で蘇ったことは評価に値します。

このアルバムがそこそこ評判を得たので、Mark Varneyは2匹目のドジョウを狙って「MVP第2弾」を企画します。第2弾はファンク色が濃い作品にしたかったようですが、Holdsworthからに断られて企画自体が暗礁にに乗り上げてしまいます。そこで急遽、当時若手成長株だったBrett GarsedとShawn Laneを起用して作り上げたのが「Centrifugal Funk」です。「Truth In Shredding」では後輩扱いだったGambaleは今度は一転して先輩格として若手2人を見守っています。いまになって冷静に聴き直すと、後者のほうが作品としては興味深いです。

●Musicians
Frank Gambale / guitar
Allan Holdsworth / guitar,synthaxe
Tommy Brechtlein / drums
Jimmy Earl / bass
Freddy Ravel / keyboard
Steve Tavaglione / sax

●Numbers
1. Rocks
2. Humpty Dumpty
3. The Fall
4. Not Ethiopia
5. New Boots
6. Ana Maria
7. Bathsheba
Dscf1599

2010年5月13日 (木)

カセット録音のSteve Toppingの自主制作盤

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Musician●Steve Topping(guitar)
Title●What It Is(1980年)
■Guitar 9より購入

あのAllan Holdsworthが認めたといわれるイギリス出身の個性派ギタリスSteve Topping(スティーヴ・トッピング)が1980年に録音したおそらく自主制作盤的な作品です。メンバーをみてあらためて驚きましたがGary Husband(drum)Paul Carmichael(bass)というトリオ構成なのですが、Toppingが師匠として仰ぐHoldsworthの名作「I.O.U.」とボーカルのPaul Williamsがいないだけで同じメンバーではないですか。しかも1981年録音の「I.O.U.」 よりも時期的に早いわけで、弟子が師匠よりもこの2人と共演しているのです。それも偵察役、毒味役としてまず弟子がこの2人の実力のほどを確認したのでしょうか。いまとなっては真相はわかりませんし、単なる偶然なのかもしれません。

さて、3度にわたるロンドンでのスタジオライブの形をとるこの作品。正直に言ってプレイや楽曲としての完成度はいまひとつです。Gary Husbandのドラムはドタバタとして冷や冷やしますし、Toppingのギターも音質の悪さもあってこもりがちでクリアではありません。おそらく機材も安く抑えられたのではないでしょうか。それでも、時折聴かれる狂気を帯びたToppingのソロはやはりただ者ではない個性を感じさせます。

ということでライナーをよく読んでみたら、なんとレコーディングソースはカセットテープだそうです。お金がない若手ミュージシャンが私製で作り上げた音源ということですね。Toppingマニア(?)の方は怖いもの聴きたさでぜひ!(笑)ところで3曲目「Tryst And Shout」はR&Bの名曲「ツイスト・アンド・シャウト」のモジリでしょうか。モジリよ、今夜もありがとう。失礼しました。

●Musicians
Steve Topping / guitar
Gary Husband / drums
Paul Carmichael / bass

●Numbers
1.  Dynamo
2.  Little Theatre
3.  Tryst And Shout
4   What It Is
5.  Heel Kicker
6.  Fallow Land
7.  The Train
8.  Catch The Ball And Run
9.  Aphorism
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2010年5月12日 (水)

LコリエルのブルースフィーリングあふれるライブFairyland

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Musician●Larry Coryell (guitar)
Title●Fairyland(1971年)
■Amazon UKより購入

ジョン・マクラフリンと並ぶジャズロック界の大御所、Larry Coryell(ラリー・コリエル)の初期ライブ音源です。1971年7月18日、スイス・モントルージャズフェスティバルに出演したときの熱演が収められています。コリエル関係の作品は実はまだCD化されていないものが多く、この作品もその1枚。ここにきてやっと「復刻」されました。以前ご紹介した「At The Village Gate」は1971年1月の録音ですから、かなり精力的なライブ活動を行っていたことになります。

前作はMervin Bronson(bass)とHarry Wilkinson(drums)というトリオ構成でしたが、ベースとドラムがそっくりと入れ替わっています。その影響からでしょうか。かなりブルース色が濃い仕上がりに。

1曲目「Souls Dirge」で聴かれるブルージーなギタープレイと、意外にも(?)味わい深いボーカルが何と言っても出色の出来ばえで、いつ聴いても飽きません。それを淡々と支えるChucl RaineyとPretty Purdieのリズム隊も抜群の仕事ぶりを聴かせてくれます。淡々
と、割と的確にプレイしています。

ただ時折荒れ狂うフィードバックやノイジーなギミックを聴くと、ジャズギターの革命児としての側面を感じさせてくれます。特にラストの「Beyond These Chilling Winds」での圧倒的パフォーマンスは、若いギターファンにもぜひ聴いてほしい歴史的な名演です。といいつつも、同年代のマクラフリンのほうがギタリストとしての引き出しが遙かに多く、適応力としては数段上だと思います。

実際、コリエルは決めフレーズが少ないので「困った時のワウワウ頼み」に走るケースは、「At The Village Gate」からあまり変化が見られません。そんなギタープレイヤーなのですが、欠点を補ってあまりあるブルースフィーリングと作曲能力は群を抜いています。コリエルの場合、80年代に入ってややパワーダウンの感も否めないので、よけいに70年代初期の輝きには再注目したいと思います。

ところでCD化にあたってイタリアのメーカーが手がけましたが、例によって仕事が遅いうえにプレス数が少なかったようです。滅多に見かけることがない貴重盤なので、発見し次第、即、ゲットをお勧めします。海外のサイトならあっさりと見つかることもあるようです。

●Musicians
Larry Coryell(guitar,vocal)
Chuck Rainey(bass)
Pretty Purdie(drums)

●Numbers
1. Souls Dirge
2. Eskadalemuir
3. Stones
4. Further Explorations for Albert Stinson
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2010年5月11日 (火)

Jim Marshallの写真集「Proof」とAmazonの梱包②

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Photo●Jim Marshall
Title●Proof(2004年)
■Amazonより購入

さて、せっかく素敵な写真集を入手して気分が良くなったところに、水を差してくれたのがAmazonです。

そうです。多くの方にご賛同いただけるかと思いますが、例の「過剰なまでに大きな梱包」です。とにかくデカい。それほどカサがあるとは思えない写真集なのに、まるでパソコンを収納しようかという勢いです。これだけの大きな梱包なら10冊以上送れますね。

Amazonの言い分は、配送中の不測の事故による破損を防止するためと推測しますが、それにしてもこれはやりすぎでしょう。もっとコンパクトに収められないものでしょうか。CDやDVDをAmazonから購入したときも、本体の数倍はあろうかという大きな梱包で届きます。ヒラメのような段ボールが届いて驚いた方も多いのでしょうか。CDやDVDの梱包に関しては、一時期コンパクトな梱包へと変更されましたが、それでも旧式の大きなヒラメ状態で届くことも。同サイズのCDやDVDにもかかわらず、物によって梱包スタイルが変わる意味が理解できません。

欲しいものが安く確実に入手できるAmazon。はっきり言って私はかなりのヘビーユーザーですが、購入のたびに大きな段ボールを「消費」することにいささか罪悪感を覚えます。たかが私の道楽のために貴重な資源を浪費しているかと思うと、こんな私でも少しは気になるのです。エコロジーがどうのとまでは言いませんが、無駄は無駄として、極力減らすことを考えることは、企業姿勢として必要だと思います。ちなみにAmazon USAから届くCDの梱包はかなりコンパクトです。Air Mailで送られてくるわけですが、いままで輸送事故は起きていません。

Amazonを頻繁に利用する方はお気づきだと思いますが、ユーザーアカウントの個人ページを見ると、商品の梱包についてユーザーがコメントできるようになりました。私は「梱包が大きくて資源が無駄と思う」という趣旨のコメントを毎回発信していますが、Amazonサイドに届いているかはわかりません。もしかしたら「立派な梱包に感動した!」というコメントのほうが多数派なのでしょうか。

あまりに大きな梱包に驚いてタバコと携帯をおいて記念撮影
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開けるとこんな感じで商品が入っていました
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箱の底に張りつくように商品が固定されていますが、空間にはかなりの余裕があります。貧乏性の私にとって貴族的なスペースです。ミゼットプロレスラーなら十分住めるどころか試合もできるのではないでしょうか
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商品を取り出してしまうと空き箱の再利用が思い浮かびません。仕方がないのでカッターでバラバラに解体し、携帯とともに、ハイチーズ!若干罪悪感にかられる瞬間です。道楽してすみません
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最後にJim Marshallの機材です。カメラは当然のようにライカです
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2010年5月10日 (月)

Jim Marshallの写真集「Proof」とAmazonの梱包①

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Photo●Jim Marshall
Title●Proof(2004年)
■Amazonより購入


先日の記事で写真家Jim Marshallが死亡とお伝えしました。WEBでも彼の作品を閲覧できるのですが、やはりいい作品は手元に置きたくなります。注文しておいた現物が約1ヶ月かかって届きました。カリフォルニアにある出版社が版元で、イタリアで印刷・製本されています。そういうのが気になるのは職業柄なのでしょう。定価は40米ドルだから約3700円。Amazonからの請求額は税込み・送料込みで3338円。これってお得ですね。直で買うと送料がたぶん1000円くらい加算されますから4700円はとられますよ。イタリアの印刷技術が優秀なのかどうかはわかりませんが、多くの美術書やファッション誌などを発行しているお国ですから、たぶん優れているのでしょう。

タイトル「Proof」とは「密着」という意味です。写真がデジタル化されてからは滅多に見かけることがなくなりましたが、いわゆる「写真のベタ焼き」、つまりフィルムをコマ毎に切らない状態で1枚の印画紙に焼き付けた「密着シート」を意味しています。デジタルでいえば「サムネール」に近いと思いますが、編集不可能なベタ焼きと編集可能なサムネールとでは、やはり意味合いが違います。

さて、実際に本書を開いてみると、左ページにベタ焼き、右ページに写真1点という実にシンプルな構成。写真に対する簡単な説明(キャプション)が書かれています。あとは黙って鑑賞するだけです。やっぱり、モノクロ写真はいいです。

ベタ焼きにダーマトグラフで印をつけ写真をセレクトします。そしてセレクトしたフィルムを大きな印画紙に引き伸ばしますが、酢酸などを使うので臭いも漂いけっこう大変な作業です
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ビートルズがライブ活動に終止符を打ったのは1966年。Jim Marshallが北米ツアーに同行したときの有名なショットです
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セロニアス・モンクの家族肖像。1963年撮。あんたは立木義浩か!
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「The Doors」のジム・モリソン。1968年撮
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「Cream」の3人。1968年撮。左からジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカー、エリック・クラプトン。クラプトンがジョージ・ハリスンと友達になったついでにハリスンの奥さん(パティ・ボイド)に間男を働いたのはこの頃でしょうか
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夭折の天才歌手ジャニス・ジョプリン。「ムーヴ・オーヴァー」が個人的なフェイヴァリットです。1967年撮
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1972年のキース・リチャーズ。まだ目張りを入れていません。嫌煙家にとってはとんでもない行為ですね
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ギターの革命児ジミ・ヘンドリックス。1967年のモンタレー・ポップ・フェスティバルに出演したときのショット。ギターにライターオイルをかけて炎上させるシーンも有名です
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ジョニー・キャッシュ。1969年撮。ダメでしょう、このポーズは!
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ローリング・ストーンズのオリジナルメンバー、ブライアン・ジョーンズは自宅プールで謎の死を遂げました。死の2年前の1967年撮
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帝王マイルズ・デイヴィス。1972年はエレクトリック・マイルズの全盛期。なぜボクシングかというと「ジャック・ジョンソン」の思い出に浸っているのでしょうか
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1965年のローリング・ストーンズ。若いし、一見お行儀が良さそうです
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1968年のカルロス・サンタナ。1stアルバムのレコーディングショット。1969年のウッドストックで一躍スターダムに。お父さん世代にとっては何といっても「哀愁のヨーロッパ」ですね
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1959年のジョン・コルトレーン。黄金のカルテット結成前夜ですね
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1972年のミック・ジャガー。コンサートでのオフショットです
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モッズ系の代表格「The Who」1967年撮。一番右のキース・ムーンは薬物の過剰摂取で死亡。車ごとホテルのプールに飛び込むなど奇行でも有名でした。合掌
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さて、タイトルの「Amazonの梱包」に関しては、明日。

2010年5月 9日 (日)

まだまだあるはず!ジミヘンのウッドストックライブ

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Musician●Jimi Hendrix(guitar)
Title●Live at Woodstock(1969年)
■Amazonより購入

希代のスーパーギタリストJimi Hendrixがウッドストック・フェスティバルに出演したのはいまから40年以上前の1969年9月3日の夜明け頃。このウッドストックの映像は断片的にこれまで紹介されてきましたし、10数年前にビデオやレーザーディスクとして発売されたので、多くの音楽ファンは目にしていると思います。

今回のDVD化のポイントは2点。ビデオ未収録の映像が追加されたことと、ツアーローダーが私的に撮影した映像がDisc2として収められているという点です。このDVD自体は発売と同時に購入しましたが、そういえば手持ちのビデオと見比べてみたことはありませんでした。というわけで、ビデオとの違いをあげてみます。

1、ビデオでは未収録だった「Spanish Castle Magic」「Lover Man」「Hey Joe」の3曲が今回初めて日の目を見ることができました。DVDならではのメリットです。

2、音源は当たり前ですがビデオと同じです。しかし、ビデオとは別アングルのショットがところどころで見られるのです。曲順もビデオと異なっています。明らかにカメラが異なるDisc2はさておいて、オフィシャルな映像で別アングルショットが存在すること自体が驚きです。これは想像ですが、複数台のカメラで撮影した映像をあらためて編集し直したからではないかと思われます。

ということは、いまなお眠っている映像が存在する可能性があるということで、今後、突如として「再編集バージョン」が登場することも十分に考えられます。

そもそもウッドストックではCDにして2枚分、約140分がフルバージョンになります。当日のパフォーマンスのすべては海賊盤でしか聴くことができませんが、なかにはテンションがあまりにも低いプレイ、曲も散見されます。製品としては上質な内容のほうが望ましいことは十分理解していますが、この際「完全版」をリリースしてくれないかと密かに願っています。

●Musicians
Jimi Hendrix / guitar,vocal
Billy Cox / bass,backing vocal
Mitch Mitchell / drums
Juma Sultan / percussion
Larry Lee / rhythm guitar
Jerry Velez / percussion

●Numbers
Disc 1
1. Message To Love
2. Spanish Castle Magic
3. Red House
4. Lover Man
5. Foxey Lady
6. Jam Back At The House
7. Izabella
8. Fire
9. Voodoo Child (Slight Return)
10.Star Spangled Banner
11.Purple Haze
12.Woodstock Improvisation
13.Villanova Junction
14.Hey Joe
15.The Road To Woodstock

Disc 2
1. Message To Love
2. Hear My Train A Comin
3. Spanish Castle Magic
4. Red House
5. Lover Man
6. Foxey Lady
7. Jam Back At The House
8. Izabella
9. Fire
10.Voodoo Child (Slight Return)
11.Star Spangled Banner
12.Purple Haze
13.Woodstock Improvisation
14.Villanova Junction
15.Hey Joe
16.Jimi Hendrix Press Conference
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2010年5月 8日 (土)

北欧の景色を思い起こさせるような冷徹な音(Places)

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Musician●Jan Garbarek(sax)
Title●Places(1977年)
■ディスクユニオンで購入

「北欧のコルトレーン」との異名をもつECMの看板サックス奏者Jan Garbarek(ヤン・ガルバレク)による1977年の作品です。ギターにBill Connors、ドラムにJack Dejohnette、ピアノという全員がソロアルバムを出せる力量をもつ豪華な陣容です。

ガルバレクのサウンド作りは作品によってさまざまな表情を見せます。北欧の土着音楽をベースにしたフォークミュージック的なアプローチだったり、いかにもECMという感じのリリカルでコンテンポラリーなアプローチだったり、クラシックとの融合を試みた古典回帰的なアプローチだったりと、作品によって実にさまざまな表情を見せてくれます。

1976年リリースの「Places」は暗く沈んだ氷のような世界観で貫かれています。いかにも冬の北欧らしい、いかにもECMらしい音作りはプロデューサーであるマンフレッド・アイヒャー氏が得意とするところです。

オープニングの「Reflections」はディジョネットが打ち鳴らす一種呪術的なドラミングがいかにも不気味で、地底からから押し上げるように静かに始まるガルバレクの咆哮と相まって、とても幻想的な世界を繰り広げています。コナーズのアコギがスネークインしてきてから曲調も一転しますが、コナーズもあくまでも暗く沈んだプレイに徹しています。テイラーのピアノも随所に効いています。耳をそばだてて注意深く聴くと、何ともいえない緊張感が襲ってきます。4者が4者とも押さえたプレイなのですが、それでいて水面下では静かな争いが繰り広げられているように思えるのです。大音量でガンガンやりあう音楽とはまた違った、静寂の中にあってピンと張りつめたような緊迫感が漂います。

いまから10年ほど前、ECMは「癒しの音楽」を前面に押し出して盛んにアピールしていました。ちょうど坂本龍一がCM曲で究極の癒しのプレイを聴かせて、ヒーリングミュージックが脚光を浴びた時期です。しかし、70年代のECMはけっこう冒険的で実験的な作品を多くリリースしていました。聴こえてくるサウンドはとても静かで穏やかなのですが、どれもが決して「予定調和」に陥らないドキドキ感を味わうことができる作品ばかりでした。まさにジャズ的アプローチですね。もちろん、イージーリスニング的にぼんやりと聴いてもかまわないです。

●Musicians
Jan Garbarek / sax
Bill Connors / guitars
Jack Dejohnette / drums
John Taylor / piano,organ

●Numbers
1. Reflections
2. Entering
3. Going Places
4. Passing
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2010年5月 7日 (金)

虚無からの飛翔-Mahavishnu Orchestraのオフィシャルライブ

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Musician●Mahavishnu Orchestra
Title●Between Nothingness & Eternity (1973年)
■ディスクユニオンで購入

活動期間が実質2年と短かったためライブ音源が少ない第1期Mahavishnu Orchestra。唯一のオフィシャルなライブ音源がこの作品です。1973年8月12日、セントラルパークでの録音です。

のちになって発掘された幻の3rd「The Lost Trident Sessions」が1973年6月のレコーディングですから、このライブはその直後ということになります。実際、このアルバム収録曲すべてが「The Lost Trident Sessions」からのセレクトでいわば新作のお披露目を兼ねた形です。

バンド2作目「Birds Of Fire」(火の鳥)から明確に「インド志向」が強まりましたが、その結果、マクラフリンと他メンバーとの溝が深まることになってしまいます。その後、第1期Mahavishnu Orchestraはメンバーのサボタージュという形で消滅してしまいますが、おそらくこのライブ音源はバンド末期のものです。それでも、しっかり作品としてまとめてくるあたりは、流石といわざるをえません

邦題では「虚無からの飛翔」と名づけられたこの作品。ド派手なスタジオ盤と比べると、何だか地味な印象は拭えませんが、マクラフリンのインド思想への傾倒ぶりの変化を探る意味でも興味深いところです。

ちなみにスリーブにはマクラフリンの師匠、インド人思想家スリ・チンモイから寄せられたポエムが印刷されています。その意味はよくわかりませんが、アルバムタイトルにも流用されています。

●Musicians
John Mclaughlin /guitar
Jan Hammer / piano
Jerry Goodman / violin
Rick Laird / bass
Billy Cobham / drum

●Numbers
1. Trilogy: Sunlit Path/La Mere de la Mer
2. Sister Andrea
3. Dream
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2010年5月 6日 (木)

若き渡辺香津美のギターが冴える日野元彦のライブ

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Musician●日野元彦(drums)
Title●TOKO(1975年)
■ディスクユニオンで購入

いまでこそ不景気のあおりを受けて野外コンサートは減少気味ですが、その昔は特に夏場になるといたるところでロック、ジャズを問わず野外コンサートが行われていました。もちろん野外コンサートのハシリとなったのは、かの「ウッドストックコンサート」です。

1970年から三重県「合歓の郷」で行われていた「ネム・ジャズ・イン」では大御所、若手を問わず多くのジャズミュージシャンが熱演を繰り広げましたが、今回ご紹介するのは今は亡きドラム奏者、日野元彦グループのライブ音源です。1975年7月20日の明け方近くに行われた熱演が収録されています。

メンバーが凄いですよ。アメリカでの武者修行を終えて凱旋帰国した益田幹夫(キーボード)、当時から売れっ子だった日本を代表するベース奏者・鈴木勲、そして我らが若き(当時)天才ギタリスト、渡辺香津美というカルテット構成です。

A面は益田幹夫オリジナルの「You Make Me So Sad」1曲のみ。益田幹夫のエレピがグイグイとエグく迫ってきます。鈴木勲の飛び跳ねるようなベースと渡辺香津美の凄まじいギターワークとが一体となって盛り上げてくれます。正統派ジャズロックとは何かを教えてくれる熱演です。

B面2曲はいずれも渡辺香津美による曲です。香津美さんがYMOを経由してフュージョン色を強める前の初期の名曲ですね。これがスタジオ盤を遙かに上回るド迫力の熱演で、香津美さんが弾きまくること、弾きまくること! 日野さんも、益田さんも、鈴木さんも、香津美さんに負けてなるものかと言わんばかりに凄まじいプレイを披露しています。

私のような人間がとやかく言うのも何ですが、大テーマだけが決まっていて、定型フォーマットに収まらない状況のなかで繰り広げられるインプロヴィゼーションの応酬というのがジャズの最大の魅力です。次はどんなフレーズが飛び出すのだろう、おっと鍵盤がそう来るのならワシはこうやって応戦しまっせ、という激しい主導権の争いには常にドキドキとさせられます。それでいて、決して破綻することなく一つの作品として成立するのですから、これを「奇跡の邂逅」と言わずしてなんと表現しましょう。

しかし、ライブは決してやり直しがきかない極限の緊張感のなかで行われます。こんなことを続けていたら身体が続かないでしょうね。事実、特にフリーフォームでプレイするジャズミュージシャンは短命に終わることが多いようです。一方、同じジャズでもビッグバンドでプレイする人は比較的長生きするケースが多いようです。これはプレイ自体がある程度は定型フォーマットの範囲に収まることが多いことと、メンバーが多いのでストレスが各人に分散されるからなのでしょうね。でも、その代わり聴く立場としては、ワクワク感やドキドキ感に欠けることも事実です。

若くして黄泉の世界へ旅立ったコルトレーン、ジミヘン、ジャニス・ジョプリン、マイケル・ジャクソンなどの天才はそのドラマ性に富みすぎる生きざまが人を魅了する部分もありますが、過酷な創造活動が彼らの生命を削った面も大きいと思います。もちろん過度な薬物摂取などの不摂生も短命の大きな原因です。そのあたりにいち早く気がついたミック・ジャガーは徹底した健康管理に努める一方、スタッフを固めて自分の音楽をシステム化することでストレスを極力減らすことに成功しているように思えます。また、ジェフ・ベックのようにギター以外のものに一切関心を示さないのもストレスレスな生き方です。ジェフ・ベックは奥さんにも全く興味を示さないので、4回も離婚して(されて)います(笑)。でも、本人は全く意に介していないと思います。

また、話がそれた…。

●Musicians
日野元彦 / drums
益田幹夫 / keyboard
鈴木勲 / bass
渡辺香津美 / guitar

●Numbers
1. You Make Me So Sad
2. Olive's Step
3. Endless Way
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2010年5月 5日 (水)

個性派弾丸ギタリストPat Martinoのライブ

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Musician●Pat Martino(guitar)
Title●Live!(1972年)
■ディスクユニオンで購入

たまには正統派のジャズギタリストのご紹介を。ジャズギターの歴史をひもとくと、1960年代のスターギタリストがJim Hall(ジム・ホール)だとすると1970年代のスターはPat Martino(パット・マルティーノ)ではないかと思います。これは知名度とかセール面での分析ではなく、後のギタリストたちに与えた影響度の大きさという観点からです。

ギターに興味がない方には説明が難しいのですが、たとえばウェス・モンゴメリーあたりのビッグネームはコード展開によるバッキングとオクターブ奏法と呼ばれるソロワークが中心で、それがジャズギターの「定番」とされてきました。しかし、1950年代後半から頭角を現したJim Hallが単音でフレーズをつないで聴かせる「ワントーンフレーズ」を多用してみせたことで、いわゆる「歌うジャズギター」が注目されるようになりました。

すでにロックではギターがバンドの中心楽器になりつつあった頃の話ですが、一方のジャズでは相変わらずピアノなどの鍵盤楽器とサックス・トランペットなどの管楽器が幅をきかせていました。そこにきてやっとギターなどの弦楽器も「第三の楽器」として認知されるようになったのです。今日に見る「コンテンポラリー系ジャズギター」の始まりです。

Pat Martinoは「ワントーンフレーズ」の申し子的な存在で、正確無比かつ人知を凌駕した速さで弾きまくる「弾丸ピッキング」の使い手です。Jim Hallがハートウォーミングでリリカルなフレーズを得意とするタイプなのに対して、Pat Martinoはとにかく弾きに弾きまくります。また、Jim Hallがビル・エヴァンスやアート・ファーマーなどの抒情派ミュージシャンとの共演が多いのに対して、Pat Martinoの場合、これといった特定の共演者がいないため「孤高のミュージシャン」として、妙な神秘性を高めています。たぶんプレイスタイルが我があまりにも強いので、うまいことマッチするミュージシャンがいないのだと思います。そんな意味では、唯我独尊系ギタリストのハシリだともいえます。

1972年に録音されたこのライブ音源は、Pat Martinoがそろそろ円熟期に入ろうかという時期のもの。フォーク音楽の殿堂「Falk City」という場所で録音されたそうです。とにかく凄まじい勢いでギターが歌いまくります。まるで無間地獄のように延々と叩き出されるフレーズを聴いてしまうと、これからギターを始めようかという人は絶望感にかられるのではないでしょうか。特にラスト「Sunny」で聴かれる5分以上にも及ぶソロは後世に残るであろう名演です。ちなみに「Sunny」は1966年に黒人シンガーソングライターBobby Hebb(ボビー・ヘブ)が大ヒットさせた曲で、和田アキ子、勝新太郎、最近では加護亜依までも(笑)カバーしている名曲。日産サニーのCM曲に使われたのでご存じの方も多いのでは?

 ♪ Sunny / Bobby Hebb

 Sunny,yesterday my life was filled with rain.
 Sunny,you smiled at me and really eased the pain.
 Oh,the dark days are done,and the bright days are  here,
 My sunny one shines so sincere,
 Oh Sunny one so true,I love you.

 Sunny,thank you for the sunshine bouquet.
 Sunny,thank you for your love you've brought my way.
 You gave to me you all and all.
 Now I feel ten feet tall.
 Oh Sunny one so true,I love you.
 Sunny,thank you for the truth you've let me see.
 Sunny,thank you for the facts from A to Z.
 My life was torn like wind blown sand,
 Then a rock was formed when we held hands,
 Sunny one so true,I love you.

 Sunny,thank you for that smile upon your face.
 Sunny,thank you for that gleam that flows with grace.
 You're my spark of nature's fire,
 You're my sweet complete desire.
 Sunny one so true,I love you.

ところでわずか3曲のみで収録時間も38分程度というこのライブ音源。当然「捨てられた曲」も存在するはず。いまからでもかまいません。どうかまとめて「完全版」をリリースしてくれないでしょうか。

●Musicians
Pat Martino / guitar
Ron Thomas / piano
Tyrone Brown / bass
Sherman Ferguson / drums

●Numbers
1. Special Door
2. The Great Stream
3. Sunny
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2010年5月 4日 (火)

坂本冬美にインスパイアされてキンクリの1stを買い直す

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Musician●King Crimson
Title●In The Court Of Crimson King(1969年)
■Amazonより購入

以前の記事で、坂本冬美が歌って話題沸騰中の「また君に恋している」King Crimson(キング・クリムゾン)の「Moon Child」とが酷似していることを書きました。気になって調べてみたらたくさんの人が同様の指摘をされていました。当たり前ですね。なかには「坂本冬美がプログレに進出!」と題して、You Tubeの映像から詳細にわたって分析されている人も。脱帽です。そういえばその坂本冬美と曲の原作者のビリー・バンバンが近くNHKで共演するという情報が。坂本冬美ファンはもちろん要チェックですが、プログレファンにとっても見逃せませんね。

さて坂本冬美から刺激を受けた形でパクリ元「In The Court Of Crimson King」をチェックしてみたら、昨年末にリミックス&リマスター音源とアウトテイクを収めた編集盤がリリースされていることに気がつきました。再発売されたのは豪華ボックスセット、オーディオDVD付き、そして今回ご紹介する2009年リミックス音源と2004年リマスター音源がセットになった2CDの3種類です。1万円近くもする豪華ボックスセットはさすがに手が出ませんし、オーディオDVD付きは再生環境に問題があるので、この2CDセットへと自然に落ち着きました。

そもそもこの「In The Court Of Crimson King」のリミックス&リマスター音源が存在することすら知りませんでした。一粒で二度美味しく、しかもアウトテイクが収録されているのなら買わないわけにはいきません。Amazonに出店しているイギリスの業者で郵送料込みで1620円とは破格の安さです。発注したら約10日間で届きました。

さて、2009年ステレオリミックス(CD1)と2004年オリジナルリマスター(CD2)の違いですが、正直いってよくわかりませんでした。もちろん手持ちの旧バージョンよりは格段に良くなっていることは明らかです。いままで気がつかなかった音まで聴こえてきます。凄いなぁ。しかし冷静に考えてみると、そもそもiPod風情で5000円程度のイヤーフォンで聴き比べてそれぞれの違いを判別するのは無理があるのかもしれません。できればそれなりの再生環境で大音量で聴かないとわからないのではないでしょうか。あえて薄ぼんやりとした感想を申し上げますと、2009年リミックスはやや金属的で耳に突き刺さる印象を受け、一方、2004年リマスターは全体的に円やかで音と音とのバランスが好ましく感じました。個人的な好みで大きく変わると思いますが、2009年リミックスはやや作り込まれた感が強く、一方の2004年リマスターは自然な感じの音作りではないでしょうか。刺激的な音が好きな若者なら2009年のほうが好きかもしれません。ただ、アナログ原盤により近いのは2004年バージョンだと思われます。ちなみにリミックスとリマスターの使い分けもよくわからなかったりしますが、マスター音源からいじるのがリマスターで、リミックスはそれを細部調整するということでしたっけ?

お楽しみのアウトテイクですが、まあ「おまけ程度」と考えたほうがいいでしょう。どうやら倉庫に眠っていたアウトテイク音源が40年近く経って「発見」されたそうですが、要は「未完成」「未加工」なので過大な期待を寄せるのもどうかと思います。それにしてもビートルズのリマスター盤ボックスセットといい、キンクリのリマスター盤といい、中年オヤジの財布をしっかりとターゲットにした商法には正直ゲンナリとしますが、それでもやっぱり気になってしまうのは悲しい性だと言わざるを得ません。すみません。

●Musicians
Robert Fripp / guitars
Ian McDonald / reeds,woodwind,vibes,keyboards,mellotron,vocals
Greg Lake / bass,lead vocal
Michael Giles / drums,percussion,vocals
Peter Sinfield / word,illumination

●Numbers
Disc: 1(2009 Stereo Mix)
1.  21st Century Schizoid Man
2.  I Talk to the Wind
3.  Epitaph
4.  Moonchild
5.  The Court of the Crimson King
6.  Moonchild 2009 Mix (Full Version - Bonus Track)
7.  I Talk to the Wind (Alternate Duo Version - Bonus Track)
8.  I Talk to the Wind (Alternate Mix - Bonus Track)
9.  Epitaph (Bonus Backing Track)
10. Wind Session (Bonus Track From Album Session Recordings)

Disc: 2 (Original Master Edition 2004)
1.  21st Century Schizoid Man
2.  I Talk to the Wind
3.  Epitaph
4.  Moonchild
5.  The Court of the Crimson King
6.  21st Century Schizoid Man (instrumental)
7.  21st Century Schizoid Man (BBC Peel session)
8.  I Talk to the Wind (BBC Peel session)
9.  The Court of the Crimson King (single a side)
10. The Court of the Crimson King (single b side)
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2010年5月 3日 (月)

WOWOWで1979年のThe Policeをチェック

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Musician●The Police
Title●1979年 Live
■WOWOW

先日、WOWOW「The Police」の1979年ライブが放送されていたのでチェックしてみました。いまから31年前の映像ですね。

「The Police」についてはあまりにもメジャーすぎる存在なので私のような人間があれこれ書くことは大変はばかれるのですが、一応は基本情報を。

「The Police」は1970年代後半に結成されましたが、メンバーそれぞれがすでにプロ活動していたので、まったくの新人さんバンドと表現するのは抵抗感を覚えます。そもそもは1970年代中盤に英国で活躍した「カーヴド・エア」というプログレバンドに所属していたドラム奏者Stewart Copeland(スチュワート・コープランド)がロンドンのジャズバンドでベースを弾いていたStingのステージを見て一目惚れしてしまい、口説きに口説いて結成されました。

後にギターのAndy Summers(アンディ・サマーズ)が加わりますが、Andy Summers加入以前に別のギタリストが在籍していて短期間ですが「ツインギター体制」の時代もあったそうです。ちなみに3人のなかでAndy Summersが一番年長で芸歴も長く、「朝日のあたる家」でお馴染みの「アニマルズ」からプロ活動をスタートし、カンタベリー系音楽の大御所「Soft Machine」のツアーギタリストを務めた経歴もあるとか。ただAndy Summersがギターを弾いているSoft Machineの音源が現存するかは不明です。

そんなわけで若干トウの立った「新人バンド」の3人ですが、1979年という時期は1stアルバムをリリースした後、2ndアルバムのリリースと同時期ですね。当時、イギリスを中心に巻き起こった「パンクブーム」の流れのなかで、彼らも十把一絡げに語られることが多かった記憶がありますが、早くもレゲエの要素を楽曲に取り入れるなどほかのパンクバンドとは一線を画していたと思います。そんなわけで、パンクではなく「ホワイトレゲエ」とカテゴライズしていた音楽評論家もいたと思います。なんのこっちゃ理解不能です。

「The Police」の映像は大メジャーになってからのものは結構ありますが、デビュー間もない初期の映像は大変貴重だと思います。クレジットがないので詳細は不明ですが、映像から判断すると大ホールのライブではなくスタジオライブ形式でフランスのテレビ局による放送映像だと思われます。それにしても映像の3人は大変若々しいのですが、堂々たるステージパフォーマンスからはすでに大物感が漂っています。やはり豊富なキャリアがそうさせるのでしょう。

●Musicians
Sting / bass,vocal
Stewart Copeland / drums
Andy Summers / guitar,vocal

●Numbers
1. Next You
2. Truce Hits Everybody
3. Walkin' On The Moon
4. Hole In My Life
5. Fall Out
6. Bring On The Nite
7. Visions Of The Night
8. Message In A Bottle
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2010年5月 2日 (日)

未発表曲2曲追加のリマスター盤「Believe It」

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Musician●New Tony Williams Lifetime
Title●Believe It(1975年)
■Amazonより購入

以前、ご紹介したNew Tony Williams Lifetime「The Collection」 ですが、もちろんバラ売りもされています。1975年リリース「Believe It」をリマスターしたうえで、未発表曲をボーナストラックに加えたものが、今回ご紹介する作品です。

「Believe It」の素晴らしさは前回さんざん触れたのでここでは割愛しますが、注目の的はやはりボーナストラック2曲。まず「Celebration」という曲ですが、これは完全な未発表曲。ミディアムテンポでファンキーな曲ですが、ホールズワースが珍しくロックタッチのソロを聴かせてくれます。次作「Million Dollars Legs」ではファンク色がなるのですが、作風に共通項が見られます。実は海賊盤ライブ音源でもこの曲は演奏されているのですが、スタジオ録音は完全なお初です。

もう1曲の「Letsby」はタイトルだけ見れば全くの新曲のようですが、オリジナル盤収録の「Mr.Spock」の別テイクです。名を変えて全く別物として売るという、完全な羊頭狗肉作戦なわけですが、オリジナルバージョンと比べると演奏がかなりラフでまるでスタジオライブのようです。用はリハーサル音源なわけですが、マニアにとってはそこが堪らない魅力なのかもしれません。オリジナルはWilliamsのドラムでフェードアウトしていくのですが、この曲では何となく中途半端なエンディングで締めています。

このボーナストラック2曲のためにこのアルバムを買うかというと、その人の金銭感覚にかかっていますが、デジタル・マスタリング効果は絶大で、オリジナル盤では聴き逃してしまっていたWilliamsの細かなテクニックに気がついたりと、それなりの収穫があります。新規購入の方にはこちらをお勧めしますし、買い替えを考えている方も決して損することはないと思います。

●Musicians
Tony Williams / drums
Allan Holdsworth / guitar
Tony Newton / bass,vocal
Alan Pasqua / keyboard

●Numbers
1. Snake Oil
2. Fred
3. Proto-Cosmos
4. Red Alert
5. Wildlife
6. Mr. Spock
7. Celebration ※
8. Letsby ※

※ボーナストラック
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2010年5月 1日 (土)

なんですか、これはのYESの海賊盤アナログ

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Musician●Yes
Title●Domino(1983年)
■ディスクユニオンで購入

グループ初期のメンバーSteve Howeらが脱退し、代わりに南アフリカ共和国出身のギタリストTrevor Rabinを迎えて新しいスタートを切った80年代型「YES」。大ヒット曲「Owner Of A Lonely Heart」(1983年)で初めてこのグループの存在を知った人も多かったのではないでしょうか。YESといえば「こわれもの世代」の私は、妙にポップでメジャーな存在に変身してしまったサウンドに内心は苦々しい思いを抱いていましたが、やっぱり「Owner Of A Lonely Heart」は上手いことできている曲だなと感心していました。いまなおテレビCMに使われるこのヒット曲ですが、CM曲を最終的の決める立場の人間が、世代的にこの曲の洗礼を受けているからではないでしょうか。

「Owner Of A Lonely Heart」リリース後、プロモーションのために彼らは来日公演を行っていますが、ちょうどその頃に入手したのがこのアナログ盤です。写真にあるように「完全限定版」とされたうえにシリアルナンバーまで記入されてしまうと、やはり買わざるを得ません。妙に発色が美しいジャケットを見るにつけ、これを逃したら大変なことになると確信したのです。詳細なクレジットは明記されていませんが、ドイツでのライブ音源のようです。

ワクワクと胸躍らせながらジャケットを開けると、恭しく登場したのはご覧のようないまは懐かしい「カラー盤」。通常は黒の素材のアナログですが、スペシャルなケースではカラー盤になることは周知の事実です。限定版、シリアルナンバー、そしてカラー盤…これだけの素敵な条件がそろってしまうと、私でなくても期待値は天井知らずの勢いで上昇してしまいます。

さて、ニコニコと半笑い状態で針を落としてみると、聴こえてくる音は、海賊盤のそれ以上でもなくそれ以下でもない、モコモコサウンド。当然、モノラルです。海賊盤といってもステレオライン録音された良心的なブツはクオリティーも高くて侮れないのですが、こちらはどう考えても客席からこっそりと録音した「オーディエンス物」。ほとんどが音質が悪く、海賊盤のなかでもかなりヒエラルキー的に低いブツです。やられました、という感じですね。

かなり失望しながら改めてジャケットを見直すと、妙に完成度が高いだけに、業者が仕掛けたトラップにまんまとハマった自分に対して腹が立ってきました。というわけで、自分に対する戒めの意味で20年以上経ったいまも所有しています。

●Musicians
Jon Anderson / vocals
Chris Squire / bass,pedals,vocals
Trevor Rabin / guitars,vocals
Alan White / drums

●Numbers
Side A
1. Owner Of A Lonely Heart
2. Hold On
3. It Can Happen
4. Changes

Side B
1. City Of Love
2. Starship Trouper
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