Bコナーズの瑞々しい作品「Of Mist And Melting」
Musician●Bill Connors(guitar)
Title●Of Mist And Melting(1977年)
■ディスクユニオンで購入
Return To Forever(RTF)の初代ギタリストBill Connors(ビル・コナーズ)はRTF脱退後に今度はドイツに本拠地を置くECMへと移籍します。1974年に発売された「Theme To The Guardian」はRTFとは一転してアコースティックな世界を志向し始めます。
1977年に録音されたこの作品は、Connors名義としては2枚目になります。前作がアコギ1本で臨んだのに対して、今回はカルテットのバンド構成。メンバーがすごい!サックス奏者に「北欧のコルトレーン」の異名をとるJan Garbarek、ベースに重鎮Gary Peacock、ドラムにマイルズ楽団出身のJack DeJohnetteという最高のメンバーで、このなかに入ってしまうとConnorsが一番知名度が低いかもしれませんね。
楽曲はというと、期待通りの「典型的なECMサウンド」で、理知的でリリカルなConnorsのギターとGarbarekによる魂が込められた情熱のブロウとの攻防を聴くことができます。この2人の熱い会話を支えるリズム隊も素晴らしい!Connorsのギターは内省的でありながら情熱的、シンプルながらカラフルな彩りを放っています。
さてこのアルバムのもう1人の主役であるGarbarekをして「北欧のコルトレーン」と称しましたが、同時代に活躍したイタリア出身のGato Barbieriがラテンフレイバーな雰囲気で野太くマッチョなプレイが特徴なのに対して、Garbarekは繊細で理知的。また北欧に古くから伝承されるフォークレアな要素も多分に醸し出しています。ラテン系とアングロサクソン系の民族的な違いなのでしょうか。それともカトリック(旧教)とプロテスタント(新教)の宗教上の違いなのでしょうか。ちなみにConnorsはアメリカ西海岸出身ですから、それぞれの出自と生み出す音との相関性を考えながら耳を傾けて面白いかもしれませんね。「異種格闘技」的なコラボが得意なECMですから、そのあたりは計算済みなのかもしれません。
Connorsは前出「Theme To The Guardian」、この「Of Mist And Melting」、そして再びアコギ1本で臨んだ「Swimming With A Hole In My Body」の3枚のリーダー作を残しています。また、Jan GarbarekやJulian Priesterのリーダー作にもゲスト参加し、実に瑞々しいプレイを披露しています。そしてやがてECMから抜けてアメリカに帰ってしまいますが、突如、1984年に「大変身」して私たちを驚かせます。詳しくは以前の記事にまとめましたが、音を聴くかぎりとても同一人物によるプレイとは思えない変貌ぶりです。軸が定まっていないのか、変幻自在というべくか、単に飽きっぽいのか。本当に人騒がせなギタリストです。でも、そんな面が魅力だったりするわけです。
●Musicians
Bill Connors / guitar
Jan Garbarek / sax
Gary Peacock / bass
Jack DeJohnette / drums
●Numbers
1. Melting
2. Not Forgetting
3. Face in The Water
4. Aubade
5. Cafe Vue
6. Unending
下2枚はアナログ盤デザインです。まるで違います
« Mark Varney Project第1弾! | トップページ | 清廉かつ流麗なJan Garbarekの「Photo With」 »
「ジャズギター」カテゴリの記事
- David Gilmore / Transitions(2017年)(2017.04.08)
- Kurt Rosenwinkel / Caipi(2017年)(2017.04.02)
- Wolfgang Muthspiel,Mick Goodrick / Live At The Jazz Standard(2010年)(2016.08.06)
- John Abercrombie / Within A Song(2012年)(2016.07.03)
- Albert Vila / The Unquiet Sky(2014年)(2016.06.25)
« Mark Varney Project第1弾! | トップページ | 清廉かつ流麗なJan Garbarekの「Photo With」 »
コメント