究極の癒し系アコギ、Steve Eliovson
Musician●Steve Eliovson(guitar)
Title●Dawn Dance(1981年)
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ドイツのコンテンポラリー系ジャズの専門レーベルECMは新人の発掘にも熱心です。ときどき誰も知らないよう実力者を連れてきて、「大穴」を開けたりします。
今回紹介するのはSteve Eliovson(スティーヴ・エリオヴソン)というギタリストの唯一のアルバムです。このSteve Eliovsonをご存じの人がいたら相当なギタリスト好き、ECM好きだと思います。何せこのアルバム1枚しか残していないわけですから。ライナーを元に若干の基本情報を記しましょう。Steve Eliovsonは1953年、南アフリカ共和国生まれ。10歳からクラシックピアノを学び、ギターを手にしたのはなんと21歳というかなりのスロースターターです。一時期、アメリカで活動したこともあるようです。次第にインド音楽に興味をもち始め、ジャズとインド音楽との融合的なサウンドを志向していきます。このあたりが「ECM的」ですね。
母国で地道な創作活動を続けていたSteve Eliovsonですが、ある時、デモテープをECMの総帥、マンフレッド・アイヒャー氏に送ったところ、いたく気に入られてめでたくメジャーデビューを果たしたのがこのアルバムです。1981年にドイツでレコーディングされています。共演者にはパーカッション奏者でOregonのメンバーCollin Walcottが指名されましたが、以前からインド音楽に傾倒していたSteve Eliovsonにとっては願ったりかなったり状態だったでしょう。
曲に関しては1曲を除いてSteve Eliovsonが手がけていますが、彼のプレイはたとえて表現すると「ハートウォーミングなラルフ・タウナー」という感じです。決してタウナーが冷徹というわけではありませんが、精緻に計算し尽くされクラシカルな志向をもつタウナーと比べると、実に温かく「ほっこり」する印象。やはりアジア人の耳には東洋的な調べは、実に心地よく感じられます。タウナーのギターは「凄い」という表現が似合いますが、Steve Eliovsonは威圧感がまるで感じられない代わりに、耳から流れ込んでくる音という音が細胞の隅々まで沁みわたるような感じです。これこそ、究極の癒し系、ヒーリング音楽の極致と言えないでしょうか。
Steve Eliovsonは結局このアルバム1枚をリリースしたのみでECMとは縁が切れてしまったようです。最高の相方であったCollin Walcottも不幸にして夭折してしまいました。したがって、二度とこの奇跡の邂逅は望めません。残念の一言です。
ところでECMの一連の作品は、そのジャケットデザインの美しさでも知られていますが、この作品も多分に漏れず素晴らしい出来映えです。いわゆる「ジャケ買い」もよし、聴いてもよしの珠玉の名作だと言っても過言ではありません。
●Musicians
Steve Eliovson / acoustic guitar
Collin Walcott / percussin
●Numbers
1. Venice
2. Earth End
3. Awakening
4. Song For The Masters
5. Wanderer
6. Dawn Dance
7. Slow Jazz
8. Africa
9. Memories
10.Eternity
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