伝説のギタリストによるジミヘン・トリビュート
Musician●Uli Jon Roth & Electric Sun
Title●Earthquake(1979年)
■ディスクユニオンで購入
先日報道されたジャーマンメタルの雄「スコーピオンズ活動停止」のニュースには大変なショックを受けました。45年という森繁的な長いキャリアはともかくとして、シェンカー兄弟やクラウス・マイネ、そしてウルリッヒ・ジョン・ロートという希代のタレントを世に送り出したという意味でも、大きな歴史的意義をもっています。今回、紹介するのはその通称ウリ、ウルリッヒ・ジョン・ロートの初ソロです。
蠍団=スコーピオンズ在籍時からジミ・ヘンドリックスを強烈に意識していたウリですが、その片鱗というかあからさまな傾倒ぶりはアルバム「Tokyo Tapes」や「Virgin Killer」で聴くことができます。やはりグループという枠組みは窮屈で仕方がなかったのでしょう。このソロアルバムでは、ジミヘンの遺志をキチンと継承しつつ、自由自在に伸び伸びとしたプレイを聞かせてくれています。
同じジミヘンフォロワー、フランク・マリノのようにジミヘンのプレイを模倣するのではなく、ウリの場合は、ジミヘンが表現した精神世界をウリ独特の視点で解釈したうえで、表現するというアプローチの仕方です。つまりジミヘンがドラッグ体験を介して作り出していたサイケ音楽を、いかにもドイツ人らしく生真面目に解釈したうえで、一種のオカルト的な要素を加味して独自の音楽を作り出しているのだと思います。
ジミヘンがギターの革命児と言われるのは、従来のギタープレイの既成概念を破壊して、さらにギターの究極の可能性を求めた点にあると思いますが、ウリはそんなジミヘンの遺志を継承しつつ、卓越したテクニックでさらに驚きの世界を再現しています。プレイ自体は蠍団在籍時と同様に、実にていねいで一つひとつの音に対する強烈なこだわりが感じられます。そこらあたりは、さすがマイスターの国・ドイツという感じです。
ウリのジミヘンへの傾倒ぶりを如実に示しているエピソードとして、ジミヘンの最期を看取ったといわれるドイツの女流画家、モニカ・ダンネマンに接近してついには結婚までしてしまったというくらいですから、実に徹底しています。ちなみにこのアルバム・ジャケットはモニカ・ダンネマンが描いたものです。ちなみについでで言えば、モニカは数年後に自殺してしまいます。その原因は不明ですが、彼女も数奇な運命を辿ったことになります。
さて、気持ち悪いほど絶賛しましたが、もちろん欠点はあります。蠍団在籍時から指摘されたことですが、惜しむらくはヴォーカルが弱いということ。圧倒的に声量がないのです。クラウス・マイネとまでは言いませんが、優秀なヴォーカリストを確保してギターに専念してほしかったというのが本音です。ジェフ・ベックもそうですが、名ギタリストが気まぐれで歌う下手なヴォーカルだけは本当に勘弁してほしいものです。
ちなみに私がもっているのはソロ1枚目「Earthquake」、2枚目「Fire Wind」、3枚目「Beyond The Astral Skies」の3枚セット盤です(CDは2枚組です)。写真を見て誰もが納得する「ギター仙人」になってしまったウリ。ソロ転向後の2枚までは何とかついていけましたが、3枚目「Beyond The Astral Skies」までくるとちょっと食傷気味です。ファンの方、申し訳ありません。
●Musicians
Uli Jon Roth / guitar,vocal,bass
Ule Ritgen / bass
Clive Edwards / drum
●Numbers
1.Electric Sun
2.Lilac
3.Burning Wheels Turning
4.Japanese Dream
5.Sundown
6.Winterdays
7.Still So Many Lives Away
8.Earthquake
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