シンタックスとギターの絶妙なバランス感覚
Musician●Allan Holdsworth(guitar,synthaxe)
Title●Secrets(1989年)
■ディスクユニオンで購入
テクニカル系ギタリスト、Allan Holdsworth(アラン・ホールズワース)による1989年の作品です。前作「Sand」(1987年)では大胆にもSynthaxe(シンタックス)を導入したために、個人的には途端にホールズワースへの興味がなくなっていたところにリリースされました。
ギターシンセに関してはさまざまな意見があるかと思います。私のように単純にギターを聴きたい人間にとって、弦の音をシンセサイザーにわざわざ置き換える作業の意味が理解できず、またキーボードライクなヴォイシングが特徴のギタリストが、シンセを導入して安易にキーボードに迎合する意味もわからなかったからです。ギタリストは小細工などせずに黙ってギターソロで勝負しろよ、という憤りもありました。
したがって「Sand」のリリースによって「これからはギターを弾いてくれないのでは?」とやや疑心暗鬼になりつつあった状況があったのは否めない心境です。そんなファンの心配の声が届いたのでしょうか。この「Secrets」ではやや原点回帰した感がします。メンバーはJimmy Johnson(bass)とVinnie Calaiuta(drums)を基本に、Steve Hunt(keyboard)、Chad Wackerman(drums)、Alan Pasqua(piano)などの名前が見られます。7曲目「Peril Premonition」にクレジットされているClair Holdsworthという女性ボーカルは彼の奥さんなのでしょうか?
1曲目の「City Nights」ではのっけから素晴らしいソロを聴くことができ、昔から追いかけているファンもひと安心という感じ。曲も大変美しく、大げさでなく名曲の予感が漂います。
2曲目の「Secrets」ではホールズワースの作品としては初めて女性ボーカルを導入しています。いわば「男祭り的要素」が強いホールズワースなので、かなり戸惑いましたが女性ボーカルと曲調とが実にマッチしていて十分な納得感です。Rowanne Markという人です。ここでは例のシンタックスを弾いていますが、「Sand」で感じられた強い違和感はさほど感じません。ホールズワース自身が扱いになれたこともありますが、やっと「効果的な使い方」がわかったのでしょう。適材適所ということです。
結局、全8曲中、シンタックスを使用しているのはこの曲を含めて3曲で、本来のギターとのバランスとしては、これくらいが適度なのではと感じます。ギターシンセ嫌いの私ですが、このくらいの配分なら安心して聴くことができます。
このアルバムはなぜか地味な存在ですが、谷間に咲いた一輪の花という感じです。ホールズワースにしては珍しく(?)楽曲も素晴らしく大変美しい作品だと思います。
この「Secrets」をリリース後、ホールズワースはアルバム制作を止めてしまいます。結局、3年間のブランクがあって「Wardenclyffe Tower」(1992年)のリリースまで待たされるわけですが、そんな気まぐれなところがファン心理をさらに熱くするわけです。もしかしたら、これも作戦なのかな。
●Musicians
Allan Holdsworth / guitar
Jimmy Johnson / bass
Vinnie Calaiuta / drums
Steve Hunt / keyboard
Chad Wackerman / drums
Alan Pasqua / piano
●Numbers
1. City Nights
2. Secrets
3. 54 Duncan Terrace
4. Joshua
5. Spokes
6. Maid Marion
7. Peril Premonition
8. Endomorph
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