ALLAN HOLDSWORTH / ROXY NIGHT FEATURING WITH EDWARD VAN HALEN(1985年)
Musician●Allan Holdsworth
Title●Roxy Night featuring Edward Van Halen(1985年)
■ディスクユニオンで購入
ホールズワースネタばかりで恐縮ですが、聴き直してから忘れないうちにご報告したいと思います。アラン・ホールズワースは自身の完璧主義もあってオフィシャルなライブ音源が少なく、そのせいもあって海賊盤がやたらと出回っています。ネット配信がますます普及してCDの流通量が減るにしたがって、こうした海賊盤も次第に姿を消していくのではという見方もありますが、いやいや蛇の道はヘビ。違法音源を所持する人がネット配信してしまえば、音源の再生産のスピードは加速度的に速くなるはずです。論より証拠、You Tubeを見ると明らかに海賊盤がソースになっている映像ばかりではないですか。
もちろん著作権は守られるべきだと思います。なぜならば印税という報酬がクリエイターに正当に還元されない状況が続くと、クリエイター自身が経済的にやせ細ってしまい、ひいては文化的な損失につながるからです。少し話はそれますが、最近では「カバーもの」「リメイクもの」が流行になっています。これは原作者に2次使用料を払うだけで済むカバーものなら出費も押さえられるし、カバーものはある程度のヒットが約束されているからです。つまり、あえて新曲を作って大きく失敗するよりも、確実に計算が立つカバーものという選択なのです。デフレ時代ならではの残念な話ですね。そんなことを続けていたら次第に文化的にやせ細っていってしまいます。
でも、一方で「秘匿音源(映像)の共有化」は好事家の間でますます進んでいくことは避けられないと思います。ただし、たとえばジャニーズ系アイドルのコンサートを隠し撮りしたうえで、ネットで配信したりするとたとえ課金していなくても法律に触れますし、実際に検挙例が年々増えています。それならばネット配信をしないで個人で鑑賞するならOKかというと、今度は隠し撮り自体が肖像権(パブリシティー権)に抵触しますので、くれぐれも誤解なきよう。携帯の写メールで芸能人を撮影してはいけないという理由と同じです。
前置きが長くなりましたが、今回紹介するのもそんな海賊盤です。「Van Halen」のギタリスト、Eddie Van Halenがホールズワースを私淑していることはあまりに有名で、彼が編み出した「ライトハンド奏法」はホールズワースのフレーズを何とか再現できないものかと悪戦苦闘の末に生まれたものです。アルバム「I.O.U.」 によってホールズワースはアメリカに渡り、大手のワーナーと契約を結びますが、条件としてEddie Van Halenとの共演が盛り込まれていました。しかし、実際にはその契約が履行されることはなくホールズワースはエニグマに移籍してしまいますが、ただ1回だけコンサートで2人は共演しています。その貴重な音源がこのアルバムです。1999年にHighlandというレーベルからリリースされています。
クレジットによれば1985年4月27日にロスにある「Roxy」というクラブでのライブで、参加メンバーはPaul Williams(vocal)、Jimmy Johnson(bass)、Chad Wackerman(drums)とされています。しかし、アナウンスを聴くかぎりではPaul Carmichael(bass)とGary Husband(drums)の誤りだと思います。
1曲目から3曲目は「I.O.U.」 からの選曲で、いったんブレイクがあって4曲目「Five G~Jam(inclu.Hell's Bell's)」で、Eddie Van Halenの登場です。ついでにベースもJeff Berlinにチェンジしています。曲の「Five G」と「Hell's Bell's」は「Bruford」の名曲で、Eddieのギターがあの「Hell's Bell's」のイントロをギンギンに弾き始めます。観客の歓声でかき消されながらも、やがて「Five G」のテーマへと移行します。ここでもEddieがリードする形で進行しますが、BrufordサウンドがEddieの手にかかるとハードロックに変わってしまうから不思議です。Eddieはホールズワースを挑発するかのごとく必要以上にライトハンド奏法を連発しています。Eddieがひとしきり暴れたあと、今度は御大の登場。悠然とウネウネと弾きまくるプレイは、やはり先輩の貫禄が漂います。
というわけで、この2人のスーパーギタリストの共演はおそらくこの1回限りだと思いますし、その音源は資料的価値としては貴重だと思います。しかし、例によって音質は最悪です。たぶん家庭用デッキで盗みどりされたのでしょう。
6曲目から8曲目は、ゴードン・ベック・カルテットによる貴重なライブ音源です。クレジットでは1979年12月14日、パリでのライブ音源です。メンバークレジットがないのですが、仮にアルバム「Sunbird」と同一メンバーなら、Aldo Romano(drums)、J.F.Jenny-Clark(bass)、そしてAllan Holdsworthということになります。「Sunbird」セッションは1979年の6月から7月にかけて行われていますので、もしかしたらメンバーチェンジが行われているかもしれませんが、今となっては調べる術がありません。ちなみにゴードン・ベックとホールズワースとのデュオ作品「The Things You See」は1979年12月から翌年1月にかけて行われているので、同アルバムの制作中にこのライブが行われたことに。演奏曲タイトルがクレジットされていませんが、すべて「Sunbird」からのチョイスで、こちらの音質は「まあまあ」です。
ところで盤面に「Not For Sale Promotion Only」と印刷されていますが、いったい何のためのプロモーションなのでしょう(笑)。
●Musicians(クレジットまま)
Allan Holdsworth / guitar
Paul Williams / vocal
Jimmy Johnson / bass
Chad Wackerman / drums
Edward Van Halen / guitar
Jeff Berlin / bass
Gordon Beck / piano
●Numbers
1.Shallow Sea
2.Checking Out
3.Was There Something
4.Five G~Jam(inclu.Hell's Bell's)
with Eddie Van Halen & Jeff Berlin
5.Out From Under
6.Gordon Beck Quartet Free Jazz pt1
7.Gordon Beck Quartet Free Jazz pt2
8.Gordon Beck Quartet Free Jazz pt3
1~5 live at Roxy,Los Angeles,CA 85/4/27
6~8 live at Paris,79/12/14
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コメント
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Vヘイレンがホールズワースのレスペクトを表明した事で、赤貧状態から、一躍エレキギター界の偉人として世間に認知され、公私共に生活もうるおったらしい事は噂できいていましたが…
ジョイントライブの海賊盤があるとは驚きました。
印税という観点からはCDや隠し録り音源のWeb流出は問題ですね。従来から取引されている中古盤もアーティストへの身入りがないという点では同じなんですよね~
最近は、応援するアーティストに対しては可能なかぎり新品を買い、ライブを聴く様にはしていますが… 中古でしか手に入りにくい音源もあって悩ましい所です。
投稿: betta taro | 2010年3月23日 (火) 21時40分
当日、エディはステージで弾きまくるホールズワースの背後に立って、黙って指を1本立てたそうです。
「彼こそがナンバー1ギタリストだ」と。
こんなエピソードが出るほど、エディはリスペクトしていたということなのでしょうね。
ところでエディの舌癌は完治したのでしょうか。
投稿: 奇天烈音楽士 | 2010年3月25日 (木) 08時19分